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雑誌「effects1-2月情報号」より抜粋     





佐藤敦紀/音楽からの発想

荻窪のデジタルエンジン研究所を訪れたのは今年1月末のことだった。「ガメラ3」('99)で空中戦のパートを担当した、
CGディレクターの佐藤敦紀氏を取材するためである。ひと通り質問が終わったのち、何気なくこれまでの経歴について尋ねてみた。
「イマジカの特撮部にいて、予告編ディレクターをしていたんですよ」。“予告編ディレクター”という職業の存在を知った最初の瞬間である。
それが本特集の発端となった。かねてから予告編にミュージック・クリップとの類似性を感じていた筆者は、思い切ってそれをぶつけてみた。
すると、意外にも肯定的な答えが返ってきた。しかも、かつてはクラシックピアノを学んでいた人だというのだから、追求せずにはいられない。
もはや次の冬が巡ってきた11月、今度は場所を世田谷区のモーターライズに移し(多彩な顔をもつ人なのだ)、
音楽の使い方や宣伝としての予告編について語ってもらった。音楽が決まると編集が決まる

 確かにMTVに近いところがあるんですよ。そもそも、映像メディアって絵と音楽が一体となったものでしょう。
映像と音楽のノリというか、映像と音楽を立体的に絡ませることが大切だからね。
立体的って意味がわかりづらいかもしれないけど、要は「どれだけ絵と音楽が噛み合うか」ということ。
 予告編をつくるときは、まず音楽の配分を設計することから始めるんです。
音楽が決まると編集が決まるから。「ゴジラ2000ーミレニアムー(東宝配給:公開中)の予告編を例にとると、
まず前半と後半とに大きく分かれるね。前半ではドラマ的な場面をつないでいって状況を理解させ、観客を引き込んだところで、
後半は派手なアクションシーンをふんだんに見せてやる。
音楽もこれに合わせて切り替わる。大枠が決まったら、さらに細かくフレーズを切り分けていく。
つまり、最初に音楽のレールを引いちゃうんですよ。目次をつくっていく感覚だね。
あとは、各パートの時間内に入るだけの要素を詰め込んでいくわけです。
ジグソーパズルを組み立てるようなものかもしれない。
当然、音楽の切り方には自分自身のリズムが反映されるし、どの場面を使うかにも趣味が出ます。

自分が見ておもしろそうでないとダメ

 理想的な予告なんてないですよ。作品ごとにやり方は千差万別だから。
今、「シックス・センス」('99)がヒットしてるけど、あれは宣伝控えめだったよね。予告編も雰囲気を伝えるだけで、あまり中身を見せなかった。じゃあ、何でもなるべく見せないようにするのがいいかというと、一方で「スター・ウォーズ|エピソード1」 ('99)のように、宣伝を大量投下して成功している作品もある。
 今の観客は賢くなっているから、内容を吟味しないと映画館に来てくれない。そのためには露出量を増やす必要があるんですよ。
他の商品と違って、映画は見てみないとわからないものだから。
「マトリックス」('99)の予告編が、見どころを出しすぎだなんて一部で言われたけど、果たしてあの特撮シーンを見せずに興収50億(12月1日現在で75億)を達成できたかってことだよね。結局はバランスなんだけど。
 予告編には広告としての側面も当然あるわけだから、「映画が好き」だけじゃダメなんです。売るための戦略を考える必要がある。
なまじ作品に惚れ込んじゃうと周りが見えなくなるから、かえってあまり好きじゃない作品の方がうまくいく場合もある。
自分が見ておもしろそうに見えなきゃダメ。もちろん、世間で何がおもしろがられるかを知る必要もあるけど、
まず自分がおもしろいと思えることです。本編と全然違う作品に見える予告編もよくあるけど、
それは「どれだけ観客の興奮度数を引っ張るか」を計算した結果であって、けっして「どれだけ騙すか」ではないんですよ。
 デジタルの普及で、フィルムではできなかったこともいろいろやっているし、そういう面からもCMやミュージック・クリップなどと混在しつつあるのが、今の予告編の状況です。もっとも、それは映像文化の流行りすたりみたいなことでもあるんだけどね。

佐藤敦紀(さとう・あつき)1961年生まれ。静岡県出身。放送局、ビデオ制作会社を経てイマジカ特撮部で予告編と出合う。93年独立。平成「ガメラ」シリーズをはじめ、特撮・アニメ界で縦横に活躍するCGディレクターでもある。

予告編の代表作は「呪怨」「劇場版エヴァンゲリオン」「ブレア・ウィッチ・プロジェクトなど
近作は「GOEMON」「ニセ札」「20世紀少年」
                              
              

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