MISCELLANEOUS WRITINGS
MISCELLANEOUS WRITINGS 今月の雑文


過去の雑文たち
06/12/24
・めりーくりすます。クリスマスとミステリといえば、仁木悦子の『聖い夜の中で』が新装版になって十数年ぶりに光文社文庫から再刊されています。表題作はクリスマスがテーマですが、他は一般ミステリの短編集。こういう思いがけないプレゼントは嬉しいですね。企画者に感謝。

・さて、それはそうと。ブログ全盛の昨今、本サイトは相変わらずHTML文書を手打ちでしこしこと打ち込んでいるわけです。サイト開設した時代はそれが普通でしたしねえ。なんでこんなことをいうかいうと、久々にいわゆる”リンクページ”を見直したから。各種検索エンジンやアンテナが発達した昨今、はっきりいってあまり存在する意味がなくなってきてます。検索エンジンの精度も上がって適当にキーワードを設定して検索すれば必要な情報が入手できる時代。(その代わり無駄な情報も相当数ひっかかるけれどね)。自サイトのリンクページでありながら、最近は自分でも余程でなければ使わないし。かつては更新情報なんて取れなかったのでリンクページをブックマーク代わりに上から順に巡回してったもんです(思い出)。また各サイトのリンクページでその交友関係やお友達関係が類推できたもんだよなあ、とか。「リンクさせてください」「いいですよ」あたりのやり取りがきっかけで新しい人と知り合ったり(思い出)。最近はこういうネット上の関係も微妙にSNSとかにとって代わられているようですしね。インターネットの世界も着々と変化しているよなあ、と改めて思うわけです。はい。(おっさんの繰り言でした)。


06/12/22
MYSCON8の開催宣言、出ました。日程・会場ともまだ発表できない……という公式コメントがある通り、今回のMYSCONは「がらっと変化」する予定です。これまでのMYSCONは、ある意味では基本路線が最初に出来ていて、企画は変われど基本はそのマイナーチェンジで進められてきたわけですが、今回は違う(はず)です。さて、どうなるのかはお楽しみ。もちろんこれまでのMYSCONを否定するものではなく、今まで参加頂いた方もまたより楽しく、初参加の人をより温かく迎えるという基本精神は健在。なので、ご注目の程をよろしくお願いします。

・ついでに同じく持ち込み企画を募集しています。別に必ずスタッフに巻き込むとかそういうものではなく「こんな企画があったら参加してみたい」「こんな企画を見てみたい」といった内容でOK。リクエストには出来る限り誠実に対応してゆきたいと思います。リクエストも公式ページからよろしく!


06/12/18
・既に各所で話題ですが、一応。

・昭和期の国産ハードボイルド小説の黎明期に活躍した作家・高城高の作品集が刊行されます。『X橋付近』によるデビューは旧『宝石』と旧い方ですが、実にその時十九歳。前作の刊行から実に四十年以上ぶり。『X橋付近 高城高ハードボイルド傑作選』。地方出版社なので直接購入するのが吉でしょう。こちらから。(小生も申し込みは済ませました)。


06/12/16
・忘年会だ接待だと忙しくしています12月。なんか宿酔い→飲み会突入→宿酔いの連続で更新も相変わらずのペース。なんで時間がかかって間が抜けてしまいました。「第四回 ハナシをノベル!」のレポート最後。

・我孫子武丸さん原作『貧乏花見』。……とまあ、貧乏長屋の面々が花見で大騒ぎしているところ、そのなかの一人まきのはんが湯飲み茶碗を取り落とし「ぐううっ」と苦悶の表情を浮かべて倒れてしまう。すわ、事件か。そこへ現れたのは長屋の引き籠もりでいきなり花見に現れた清六。(せいろっく・ほーむず、なんちて)。彼は現場保存の必要を説き「この中に犯人がいる!」と曰う。まきのはんは、ダイイングメッセージ「北」という字を残していた。

・そっから八天さんの熱演。関係者を改めて総ざらえしたかと思うと、個々の関係者に動機とアリバイを正し……といった感じで、更には高座を飛び出して掛けてあった幕を跳ね上げたかと思うと白板に関係者の座り方を記入してゆく。まさかここまでされるとは思わず唖然。ただ、白板を使うなら事前に関係者の名前と座り方、書いておいた方がウケたかも。「さて、犯人がわかった人はいらっしゃいますか?」と八天さんより会場に問いかけがあるも、観客も何一つ答えられず。いや実際、わかりまへん。そして探偵による回答が朗々と……。わかりますかいな。「わかる、わかるけどそんな状態で「北」とか書きますかあ?」という究極の脱力系ダイイングメッセージ(すばらしい)、更には平和で貧乏な筈の長屋暮らしの裏側に隠された真相……。ただ、全体に落語らしい動機と、最後の下げに至るまで、終盤は綺麗に落語として決まっていました。

・落語としてだけでなく、犯人当てのミステリとして考えた場合、やはり容疑者の人数が多く、落語という短い時間で説明するにはひとりひとりの個性がどうしても不足してしまうところが弱点か。人物説明と行動が長いため、推理の過程がどうしても間延びしてしまうのはこのままでは仕方のないところ。このあたりは、今後八天さんが持ちネタとしてくれる際にはブラッシュアップされてスッキリとしていくのではないでしょうか。そういう細かいことを抜きにしても前半のくすぐりラッシュ等々、聴き応えのある作品でした。

・さて次回「第5回 ハナシをノベル!」は1月26日金曜日 今回同様18時半開場・19時開演。 あの、牧野修さん原作による「ホラー落語」が公開されます。牧野さん特有の「厭あな感じ」の噺となる見込みで、更にそれをプロの噺家が手に掛けることでどのように化けるのか。少なくとも「笑いどころがまったくない」ということだけは確かみたいです。あと、この口直しにもう一作新作落語がかかるのですが、いろいろ候補が挙がった結果、どうやら浅暮三文さんの新作落語がかけられることになった模様。だけど、口直しっていったって、牧野さんの作品が後だと口直しにならへんやん。


06/12/12
・『時たまご』を終えて八天さんは一旦楽屋に引き込み、再び田中啓文さんと我孫子武丸さんが前へ。あまりに『時たまご』がほのぼの系の作品だったこともあり、我孫子さん曰く「何か似合わん噺やったなあ。こういうのも書けるんやあ」と妙に感心している。そんなこんな『時たまご』を振り返っていろいろとお話。続いて話題は本日のメイン作品でもある『貧乏花見殺人事件』へ。これまた我孫子さんによれば、そもそもミステリー落語など書きたくなかったのだが、当初の執筆陣を見渡すと「自分に割り振られた役割やし」と振られていないのに役割分担だと思ってミステリー作品にしたのだそう。(確かに他の執筆陣が田中啓文、北野雄作、田中哲弥、牧野修……)

・内容については「想像しておられる通り」ということで上方落語の『貧乏花見』がベース。ただトリックだとか犯人当てだとかそういう部分よりも、要は「くすぐりが書きたかっただけ」なんだそうだ。そこから何故か、田中さんが某アンソロジーを書いて編集者に見せたところ、一番書きたかったところが「ここは要りません」とあっさり削られて非常に傷付いた話になる。

・とまあ、盛り上がったところで再び八天さん登場。序盤は確かに『貧乏花見』そのまま。川向こうの貧乏長屋の人々が花見に行ったという話を聞きつけた武やんが、田中の御隠居のところに駆け込んできた。彼らは一斗樽に酒の代わりに茶を入れ、毛氈引いて卵焼きと名づけられたタクアンを囓りながら花見をしたのだという。貧乏なことでは負けていないこちらの長屋でも同じように花見に行くことになった。家にある食べ物を持ってこい、茶は俺が準備したるという塩梅で集まったのはこちらの貧乏長屋の面々。田中の御隠居が各人持ち寄ったものを検分する。まきのはんところからは、これだけで御飯がいくらでも食べられるという料亭の花見弁当……のチラシ。既に変色している。きたのはんはステーキ……魚屋で捨ててあった古いイカ。ステイカ。てつやはんが持ってきたのは何とキャビア……キャビアいうたらちょうの卵。だから蝶の卵って食べられるんかいな。ちゃうやんチョウザメの卵やん。たけやんが持ってきたのはトリュフ……本当のフ。トルーフ。麩ならまだ食べられないこともない。あさぐれはんが持ってきたのは鯛の尾頭付き。とまあ、それに薄い茶が入った一斗樽はあちらを真似て。卵焼きと称するタクアンに、かまぼこと称する大根。

・そして一行は花見に出掛け、車座になって座る。そこから飲めや歌えや大騒ぎになるのだが……。


06/12/10
・12月1日(金)に行われた「第四回 ハナシをノベル!」のレポート。

・前三回が土曜日開催に対し、今回が初の平日開催。ちょうど12月の最初ということもあってこの日からクリスマス風にライトアップされた市役所脇を通り抜けて中之島公会堂へ。開場18時半の前に会場入りしたので少々お手伝い。今回は「ミステリ落語」ということで何人かに声を掛けたことと、直前に『名探偵ナンコ』で田中啓文さんがPRしたこともあって見知った顔がちらほら。原作提供の作家さんたちに混じり、客席には有栖川有栖さんの姿が。結果的にはそれなりの人数が入った模様で平日開催は成功、ということみたいです。

・お囃子が鳴り、まずは軽めのトークショー。平服の月亭八天さんと田中啓文さんが舞台の前に出てトーク。「こちらが田中啓文さんです」「……」「黙っとらんで紹介してよっ」「いや、もう皆さん知ってはるかなと思って」といったやり取りから、新作を直前に覚えなければならない八天さんの恐怖(?)など。「やる気がしなかった」「風邪引いた」「繁盛亭出てた」と聴衆の不安を煽るのようなことを言いつつ、しっかり仕上げてましたよ。八天さんの着替えに伴い、今回のメインとなる『貧乏花見殺人事件』を執筆した我孫子武丸さんが登場。「仕事量」だとか、そんなところをマクラに先に田中啓文さんが書いた『時たまご』について紹介。なんというかお二方の掛け合いはゆるい漫才のようで、会場が徐々に暖まってくる。「どんな噺ですか」「笑えない噺です」「あかんやん」「でも最近は、デザートなんかでも甘くないのが流行ってるし」「関係ないやろ」「落語界のスイーツ」「それで実際はどんな噺」「いや、軽い作品ですわ」「存在の耐えられない軽さってやつか」「いや、笑うところがどこにもない」……とまあ、こんな感じでした。

・更には、田中啓文さんが五十枚の仕事に百枚の原稿を書いてしまう話から、それを縮めたり伸ばしたりする秘策だとか、「どこかで聞いているかもしれない有栖川有栖さん」に向けて、ミステリ落語書いてくれないかなー、だとか。とまあ、一生懸命「動」に話題を持ち込もうとする田中さんに対して、「静」のまま泰全と受け流す我孫子さんの様子が何ともおかしい。ということで、準備が整ってお二方が退場、着物に着替えた八天さんが登場して最初の一席『時たまご』開始。

・マクラは通販の話から続いて担ぎ売りのかけ声。「一声と三声はいわぬ担ぎ売り」という言葉があるそうで。「たーまごー、え、たまごっ」まあ、実際に大阪都島では軽トラで夜になってそんな物売りがいらっしゃる。それとは無関係にとあるところにある研究所。なかで所長が「研究がうまくいかない」とぼやいている。そんなところに遠くから物売りの声が聞こえてくる。「たーまごー、え、たまごっ」。この地域、辺鄙なところで研究所以外に何もないはずなのに……。まさかこの研究所に売りに来るのか? 「たーまごー、え、たまごっ」 あー、うるさいなー、近所迷惑なやっちゃ。あれ、研究所の前で止まったか。「たーまごー、え、たまごっ」「ピンポーン」あ、チャイムや。無視したろ。「ピンポンピンポンピンポンピンポン」「やかましいわっ!」「あ、いた。タマゴ要りませんか?」「いらん」「タダですから」「タダ? 怪しいなあ。いらん」「タダのたまごですけれど、タダのたまごじゃないんです」「いらんたらいらん」「じゃ戸の隙間から」

・入ってきたのは何と子供。こんな時分にいったいなぜ物売りに? そうして博士はこの子供から「時たまご」なるたまごを押しつけられて……。といったお話。書き物として既にエッセイとして発表されていた『時たまご』を、実際に噺にして高座にかけるために大幅リニューアルした本作。笑うところがないというのは謙遜で、いろいろなところにツボを配しており楽しめました。とはいえ(良い意味で)前座に相応しい軽めの一席だといえましょう。


06/12/09
・あくまで偶然なのだが東京宿泊の出張が入ったので↓の通りに、火曜日の夜、赤坂のですぺらに行って飲んできた。常連と自称するには烏沽がましいけれど、少なくとも自分にとって東京の夜にもっとも落ち着く店、そして愛する店であることは確かなのだ。個人名はここでは書かないけれど、何人かの方がわざわざ来てくれて久闊を叙することができた。忙しいなか顔を出してくれた元からの友人、ミステリを通じての知り合いながらなかなかゆっくりと話をする機会のなかった方、この店で知り合い仲良くなった友だち、その晩初めて話をした方などなど会えて嬉しい人ばかり。深夜に仕事の途中で闖入(?)されたお二方ももう少しゆっくりお話したかったなあ。

・皆さんが終電で帰られた後、店主の一考さんとゆっくりお話をする。まあ、結局のところは年明けに閉店することは間違いなく、これはもうどうやっても動かせそうにない。その敗因分析もいろいろあったけれど、赤坂という土地柄が店の指向と合うはずだったのに合わなかったということか。

・帰阪して改めて思うこと。やはり、店が開いているうちにもう一回行きたい。なんとかしてでも。


06/12/03
・年の瀬……厭な噂がちらほらと思っていたら、いろいろお世話になってきた赤坂のショットバー・ですぺら閉店の正式報が。ショック。(5日の晩に行きます)。

・「第31回名探偵ナンコ」の続き。

・さて、メインとなるのは神田伯鱗原作『素人探偵』。 浦松数夫は、同郷人で帝都新報の新聞記者にして探偵 (当時の探偵は現在とは意味が若干異なる)の作田作次郎のもとに寄宿し、玄関番をしていた。その作田が出張で不在のあいだに、作田とは親類同様の付き合いをしていた白沢五兵衛が殺害されたという連絡を受け取る。白沢五兵衛は、白沢商会という会社を創業し現在は莫大な富を持つ人物。作田の代理で浦松が現場を訪れたところ、警察庁所属の老探偵・堺が捜査をしている。五兵衛はピストルで頭を撃たれたらしく、机に座ったまま絶命。どうやら後ろ2mくらいのところから撃たれたようだ。部屋のなかからは、鍵だけが無くなっており、他に盗られたものは見あたらない。

・何を思ったか、浦松は突然「探偵をやりたい」と堺に弟子入りを願い入れ、さらには「面白い」と聞き届けられてしまう。だが「素人探偵」として堺とは別の角度で捜査を要請されるのだ。五兵衛には二人の同年の養女・春江と品子が居た。日露戦争で両親を喪った二人は、五兵衛の兄の娘、弟の娘と両親は違うが幼くして養子に迎えられたもの。五兵衛の意向では長女の春江に全財産が譲られることになっていたのだという。浦松の捜査によれば、五兵衛殺害の夜、謎の人物・清水豊が品子のもとを訪ねてきたといい、遺産目当てで品子が犯人ではないかとマスコミはあたかも事実かのように報道していた。ところが、無くなったとみられた部屋の鍵は、春江の寝室から発見された。

・その春江自身は家を出てお茶の先生のところに寝泊まりしている。品子が犯人だと報道する新聞に泣き崩れる彼女と話し、浦松は真犯人を見つけようと決意を新たにする。そこに新たな手がかり。白沢宅で働いていた下女のお三が、事件後に行方をくらましているのだという。わずかな手がかりから彼女の出身地である大磯に向かおうとする浦松は、新橋の駅で堺探偵と行き交う。大磯に向かった浦松は苦労の末、お三の母親を見つける。どうやらお三は野毛大神宮のそばで一軒家を借りて暮らしているらしい。改めて野毛に急行する浦松はお三の家を急襲する。明らかに顔色を変えたお三は、品子は犯人ではないと断定、だが彼女は「一日だけ待って欲しい、明日故郷から母が来るから」と彼に懇願する。浦松は待つことにするが、やはりというかしかしというか、そのお三は翌日、毒を飲んで自殺してしまった。「犯人は私の夫」という遺書が残されていたが、その「夫」が誰なのか決め手がない。品子に聞いてもお三に夫などいなかったという。その「夫」を探し、今度は春江宅を訪ねる浦松。その家から出てきた謎の人物・清水豊を発見、後を追おうとするが堺の弟子を名乗る人物からの警告を受け取った後、何者かに銃撃を受け左手に傷を負ってしまう……。

・とまあ、結構内容を書いたが、これで三分の二くらい。犯人はまず分かりますまい。(というか、原作は明治期の講談ゆえに本格の犯人当ての妙味はないといっても差し支えない)。ただ、これまでいわゆる講談らしい講談を結構聴いてきたなかでは、最後の数行で初めて犯人登場!じゃじゃーん! ということもなく、伏線は少ないまでも構成のうえ流れのなかで結末が納得できるレベルに収まっていると思う。削ぐべきところは削ぎ、シンプルに盛り上がるところで構成できればサスペンス色溢れる探偵講談として今後の南湖さんの持ちネタになり得る作品だと思う。(ちょいと長尺なのでこのあたりがどこまで絞れるかでしょうね)。

・さて、恒例のトークは芦辺拓さんの代わりに特別ゲスト・田中啓文さんが壇上へ。今回はどちらかというと南湖さんがナビゲート役をするようなかたちで田中さんに話を伺う。いつ頃から落語を聞いていたのかといった話から、『梅寿』シリーズの話。演芸を背景にした作品によくある違和感が『梅寿』にはほとんどなく、上方演芸の世界でもこのシリーズが話題になっているとか。田中さんは落語家になりたかったという時期もあるそうだが、師弟関係が無理だと諦めたとか。(その後、サラリーマンを諦めた話も伺ったけれどなるほどなあと思う)。あと講談絡みで、カー・アンソロジーに執筆した忠臣蔵ものの話など。話芸としての落語、語り芸としての講談。特に講談には、話芸の落語には出来ない面白さがあることを思い切り強調していた田中啓文さん。笑いとは別に表現できることが多々あるはず、となんか近々、「田中啓文原作」の講談話が聴けるようになるかもしれません。


06/11/28
・第31回を迎えた探偵講談「名探偵ナンコ」。残念ながら天気に恵まれず雨の中の開催。珍しく開演前に行くとやはり常連中心でお客さんの人数がそれほどでもないか。美人受付嬢にお代を支払うと、レギュラーゲスト・芦辺拓さんが外遊中につき、今回特別ゲストとして招かれた田中啓文さんがぼんやりと座っていらっしゃるのに気付く。挨拶をしたあと、朱鷺野耕一さんと雑談をしつつ開演を待つ。今回の演目、メインは既報の通り『素人探偵』という作品。その他は新作講談の『コアラ』、そして古典講談から『赤穂義士銘々伝・矢頭右衛門七』。開演時で観客が十数名というところ。マクラでは「名探偵ナンコ」を振り返り、いろいろと没ネタもあったもののかなり身についた作品も多いというお話。さらに南湖さんいラジオでレポーターの仕事が回ってきたという話で(しかし、梅寿で読んだような話とよく似ている)、ただそれでも舞台はやっぱり大事にしてゆきたいとの由。

・さてまずは『コアラ』。これは確か二年ほど前の初演時も聴いている。クリスマス前になると講談会で掛けられる甘酸っぱい話という触れ込みだったと思うのだが、基本的には南湖さんの思い出話(たぶん)がベースとなっていて、日常系でもあるためどこかマクラの延長のように聞こえるという弱点があるかも。高校生時代にしていたアルバイト。ケーキ工場でひたすらにクリスマスに向けてケーキのデコレーションをする。一緒に働いている女の子に対して仄かな恋心を抱く主人公。彼女はコアラが好きだといい、休憩時間には「コアラのマーチ」を食べ、そんな話題で盛り上がる二人。主人公はクリスマスを前にコアラのぬいぐるみを買い、そのポケットには恋文を入れて彼女に贈ろうと決めるのだが……。

・以前聴いた時には「何、これ、ホラー?」というようなコアラががさがさと動き回る話だったような記憶あるのだが、ブラッシュアップされて不合理さは消え、ひたすらに甘酸っぱい話になっている。但し甘酸っぱいが文字通りだったりするのはご愛敬。引き続きは講談のなかでも定番の赤穂浪士もの。これもある意味年末恒例といって良いか。『矢頭右衛門七』。実際、四十七士のなかで二番目に若く十七歳で討ち入りし、十八歳で切腹した彼については、母と妹が残されて彼女らを連れて箱根の山越えが出来なくて……といった、そちらはそちらでお話があるようなのだが、今回の講談はこんな感じ。

・吉良上野介を討ち果たすまで浪人として諸国にて雌伏する赤穂浪士たち。浅野家家臣の矢頭長助・右衛門七の父子は大阪堂島の貸間を借りて住んでいた。しかしこれまで武士だった彼らは日々の生活費を稼ぐ手段もなく、長助は日雇いに出るが慣れない仕事によりすぐに体を壊してしまい病の床に就く。日々父親の看病に明け暮れる右衛門七であったが、元より売り食いするしかなく、医者に払う金も日々の食費もすぐに尽きてしまった。大家の助けを仰ぐ右衛門七はただ一つ残った、矢頭家先祖伝来・鎧櫃に入れた腹巻きを大家に預け、それを質草に一両を借り出す。その後も大家からの借金を重ねたものの父親の容態は一向によくならず遂には討ち入りを前に身罷ってしまう。父親の遺言は、出陣の際にはその質草にした腹巻きを必ず身に付けよというもの。葬式一切を仕切ってくれる大家。しかしその右衛門七のもとに京都山科に潜伏中の大石内蔵助からの書状が。江戸に向かわねばならない。心ならずも大家に嘘をつき腹巻きを借り出した右衛門七はそのまま出奔する。しかし貯めた家賃と大家の心情に対して大きな悔いを彼は心の中に残したままだった……。

・さすがにウマイ。このような真面目な物語であるにもかかわらず、笑いをそこここに挿入し観客を引き付ける。討ち入りの部分は朗々と読み上げ、そして終盤ではしっかりと泣きのツボをくすぐる。旭堂一門の伝統を感じさせる作品であり、実に講談らしい講談にしばし聞き入った。

・ここで中入り。続いてが探偵講談と対談です。


06/11/25
・11/29のトークイベントを聴きに行きたいけれど、国立は遠いですねえ。なので距離的に近い方の告知を改めて。ちなみに今晩(11/26)、大阪では探偵講談ですよ。

・ 第四回 落語再生公開堂「ハナシをノベル!!」
 12月1日(金) 18時30分開場 19時開演
 入場料 当日2000円
 出演 月亭八天
 演目 「貧乏花見殺人事件」(作・我孫子武丸)「時たまご」(作・田中啓文) 月亭八天×我孫子武丸のトーク(司会・田中啓文)
 場所 大阪市中央公会堂地下大会議室 場所はこちら

・噂では我孫子さんの今回の新作は「本格ミステリ落語」らしい……。平日夜なので仕事や学業を早く切り上げて淀屋橋へGOだ!(そういう自分の立場が一番危うかったりする)。田中啓文さんも探偵講談に引き続いて登場なので大変そうです。


06/11/23
・結局『マルドゥック・ヴェロシティ』(沖方丁:ハヤカワ文庫JA)三冊、まとめてではなく毎週、発売日にそれぞれ別の本屋で購入。しかも『3』を買ったのは駅側の小さな書店だ。こういうことしたのって久しぶりかもしれない。これがまとめてハードカバーで三千円! とかでも買うには買ったでしょうけれど、やはり最初から文庫三冊分冊というのは何となく手に取りやすい。とはいえ、定価680円x消費税=714円x3冊で合計2,142円と、結果的に冷静に考えると並みのハードカバーより高くついている。でもひたすら貪り読んでいたりするので、損したとかそういう気分にはなりません。


06/11/20
・唐突に若かった頃の失敗を思い出した。古本屋の棚の奥底で一冊の書物と出会い、これは珍しい本に違いない! と思って意気揚揚と買って帰った本が、よくよく調べてみると単に前の持ち主の保存が悪くて薄汚れていただけだった――というもの。

・なぜ思い出したか。それは同じ失敗をこの年になってやっちまったからでい(なぜか江戸弁)べらぼうめ。

・些か唐突かもしれませんが、MYSCONでは現在、「MYSCONご意見アンケート」調査を実施しております。次回以降のMYSCONについて建設的なご意見やご希望を募集しています。何かご意見などお持ちの方がおられましたら、そちらにありますアンケートフォームでお答えくださいまし。


06/11/19
・東へ西へと飛び回る日々。

11/26(日) 次の週末は奇数月の第四日曜日。すなわち恒例の探偵講談のお知らせです。

 第31回『名探偵ナンコ』 〜よみがえれ!探偵講談〜

 会場/本遇寺(JR東西線「新福島」・ 阪神「福島」下車、地下鉄2番出口から徒歩5分。JR環状線「福島」下車徒歩10分。福島区福島3-7-38)
  開場/18:00 開演/18:30
  料金/当日1500円

  出演/旭堂南湖「探偵講談・素人探偵」(原作・神田伯鱗)「お楽しみ」
  特別ゲスト・田中啓文先生(作家)「対談」

・今回は前々からの予定とのことで、レギュラーゲストの芦辺拓さんがご欠席。南湖さんのサイトでも(今でも)ゲスト・未定となど書かれておりますが、今回は特別ゲストとして落語ミステリ・笑酔亭梅寿謎解話シリーズが好調の作家・田中啓文さんがいらっしゃるそうです。御本人曰く、「わーっとにぎやかして、しゅーっと帰ります。」とのことらしいのですが、いやそう簡単には帰しません。


06/11/12
・更新頻度をこれだけ落としておきながら偉そうなことはいえないのですが、一応本サイト、開設開始よりまる九年が経過、とうとう十年目に突入です。インターネットを開始したのはその一年くらい前からになるので、あのどこか熱狂的であった初期インターネット(小生にとって)を通じて知り合った人々とのお付き合いも、同じように長きにわたることになりますね。皆さまのご愛顧に感謝です。

・ただ、その九年間に主に本サイトで取り上げてきた国産ミステリの世界は確実に変動を起こしつつあって。強いていうならばミステリそのものの質やレベルが変化したというよりも、ミステリを大きく包括するエンターテインメント系の文芸出版の状況が動いている訳なのですが。その地殻変動は如何ともし難いところがありそうなので、今後は今のコア読者をいかに継続してつかみ続けるのかというあたりが課題ではないでしょうか。この分野が抹殺されないためには。


06/11/04
・少し前の記事ですが、東雅夫さんの幻妖ブックブログで、なんか心に引っ掛かったのでリンク。幻想文学新人賞のこと


06/10/24
・その宮部みゆきのある作品を読んでいて、ふと気付いたこと。うまくいえないが「透明」という感じ。物語全体は宮部節であるのに、その個々の文章に癖がほとんどなく、すっと心の中に情景や心情が入り込んでくる。「え?」と思い返してその文章をみても、その文章そのものには特に特徴も技巧もないようにみえる。そしてまた読み出すとすっと入ってくる。主義主張だってあるし、非現実的な事柄を描き出しもしている。それでも作者が透けて見えてくることがなく、物語だけがすっきりと心の中に入ってくるのだ。

・いったい他の作家の作品と、何が、違うのだ?


06/10/21
・とりあえず、いろいろと。なんか新刊ばっかり読んでいると無性に古本屋に行きたくなるんですが、それはそれで気持ちを封印して。

・ということで、2006年刊行という作品を集中的に読みつつも、発表された年代もありましょうが別に本当の意味で”現代”を扱う作品が減ってきているなあ、という気もする。物語の年代を特定させないことで時代を超越する、といえば聞こえが良いけれど、実際は常に動きつつある時代(風俗や価値観など)をがっちりリアルタイムで小説がつかみとることが段々と難しくなっているからかも。いや、それは2006年に限ったことではなく、ここのところがずっとそうだったかもしれないのですが……。ただ、少なくとも実はこの点では、宮部みゆきや東野圭吾といった人気と実力を兼ね備えた作家は抜けて巧かったりもするんですよねえ。(まあ、漠然と思ったことをそのまま書いただけで何やら結論のある話ではないです)。


06/10/17
・本日、久々に多岐川恭の未読作品のレビューを書いてみたり↓した。そのついでに「多岐川恭」をbk1で何となく検索したら、結構残念なことになっていることが判明。いつの間にやら、創元推理文庫の復刊も全て品切れ扱いとなってしまって現代作品で普通に本屋で購入できる作品がない状況らしい。新刊で入手できるのは一部の時代小説のみ。創元の復刊は一渡りの需要を満たした段階で売上が激減することも分かるのだけれど……。リスト作成者としては何とも寂しい限り。


06/10/15
・以下、うまくニュアンスが伝えられるか判りませんがつらつらと駄文書いてみます。

・宮部みゆきが売れている、東野圭吾が売れている、という事実。依然として西村京太郎や内田康夫、赤川次郎といった作家は(廃止されるけれど)長者番付の上位を依然として占めているはずです。綾辻行人、有栖川有栖、京極夏彦、森博嗣といった作家の作品は一定以上のセールスが見込める。他、具体名は挙げませんがミステリ作家(冒険系から本格系含む)上位三十人から四十人くらいの人気作家の作品は、ミステリに元気が無くなりつつあるとはいえセールス的に大外れはしていないと思われます。

・その結果、文芸ジャンルにおける”ミステリ全体”のパイが下がりつつある(と推測される)現在のような事態においては、出版部数における上位作家の寡占化が進みつつあるのではないか? という疑念が湧きます。今まで100あったパイのうち、上位作家が60、その他作家が40だったものが、パイが80になると、上位も少し減って55としても、残りは25しかなくなってしまいます。 現在の状況、一次試験(新人賞)は毎年ずっと募集中だけれども、一連のミステリブームのあいだに多数のファンをつかむという二次試験、そのファンを維持するという三次試験は終了して合格者は既に決まっちゃってますといった感じです。

・結局のところ文庫を含め、特定の作家の新作ならば買う、それ以外には見向きもしない――といった読者層の固定化はあると思いますし、今なお着々と進行しているといえるでしょう。中堅以下のミステリ作家にとって、その上位層に入るか入らないかの最後のサバイバル期間に実は突入しつつあるはずなんですが、どうもそういった焦燥感があまり業界内にないようにも思えるのですよね。気のせいだといいんですが。


06/10/14
・某所より依頼を受けたので紹介です。既に様々なところで記述を目にしていますが小生も改めて。

・ 「関西ミステリ連合冬の総会」
  主催:立命館大学ミステリ研究会
  日時:2006年12月3日(日)
  ゲスト講師:戸川安宣氏
  会場:立命館大学衣笠キャンパス 以学館1号ホール

・他、詳細はこちらにて逐次アップデートされていくそうです。

・ただ、この二日前、12月1日(金)が↓の通り第四回「ハナシをノベル!」なのでそちらにも人は集まって欲しいなあとこちらも側面から宣伝。こちらのページでは次回の我孫子武丸さんによる噺の題名の方、「貧乏花見殺人事件」ということで発表されてます。


06/10/10
・第三回「ハナシをノベル!」レポート、最後。

・『病の果て』  エリートサラリーマン・山田一郎は過労のため会議中に倒れてそのまま入院してしまう。案内してくれた美人看護婦に「きれいな人やなあ」と見とれていると、同室の入院患者が一郎の耳元でいきなり声を発する。「ええ娘やろう!」「わっ、何ですかいきなり」「かまへんかまへん」。その男、坂本は五十過ぎくらいのおっさん。ここから一郎の多難な入院生活がはじまった。持ってきたはずのパジャマがない! と思うと坂本がそれを履こうとしていたり、パジャマのズボンがない! と思うと坂本がそれを着ようとしていたり。そんなイライラもあって、医者の診断時にはまだストレスが抜けていないと判断される。しかしいずれ入院生活に慣れるが、婚約者の光子が彼のもとを訪れる。エリートだったと信じていた一郎に幻滅したといい、婚約を解消したいと言い出す。さらに上司が彼のもとを訪れ、正確な発音もできないような僻地への左遷をも言い渡された。そんな一郎を見守る今日子、そして坂本。一郎はそんな折り、坂本に対してある告白をする。彼にはどうしても出世して喜んで貰いたい人がいるのだと……。

・文章に変換すると何が面白いのか判りにくいかもしれないが、こういった病院生活の日常がぽんぽん語られ、非常にテンポ良く進められる。(都合、四、五人の登場人物をキャラを変えて一人で演じる八天さんの話芸も光った)。途中に入るくすぐりも面白く、まさに新喜劇落語といった内容。エリートサラリーマンが拠り所を喪い転落させられる場面、それからちょっと温かい場面とめりはりがきき、医者のボケが凄まじく笑いどころも多い。お客さんもこちらの噺への反応は良く、ウケるべきところでウケ、しんみりすべきところでしんみりしていた。多少内容はベタながら、そのベタさ加減が関西人にとってはDNAレベルで受け継がれている笑いのツボとうまく重なっている感。この作品は、さらに練り込まれればまた良くなるし、恐らく八天さんも演じやすそうなのでまたいずれどこかで舞台にかかることになるのではないかと思う。

・最後に再び田中啓文さん、田中哲弥さん、月亭八天さんの三名が前に出て総括。やはり、八天さんによると、作者の方々の提出する台本の提出日が、回を追うごとに公演ぎりぎりになる傾向にあるそうで。次回は、ついに本格ミステリ落語ということになります。我孫子武丸さんによる台本で、12月1日(金曜日)に開催。 近くなりましたらまた告知しますが、ミステリファンの方なら必見です。

・八天「次回は、本格ミステリ落語ということで……あの、やっぱり”観客への挑戦”とか入れはるんですか?」
 我孫子「そうですねえ……」
 田中「さて、犯人は? としたところで、会場の全員が正解だったらどうします?」

・……げに怖ろしきは本格ミステリ落語。我孫子さん、頑張ってくださいね。


06/10/08
・あいだが空いて間が抜けてしまいましたが、それもまあ笑うトコ。「ハナシをノベル!」の続きであります。

・田中哲弥さん原作の『大阪ヌル計画』。『ホシ計画』廣済堂文庫というアンソロジーにも収録されている名作を落語家、じゃなくて落語化しようとしたもの。話によれば、元は田中哲弥さんが台本を二人の会話風に書き換えたそうなのだが、結局、八天さんの判断で元の原作を活かした内容となったのだという。電車のおばちゃんの話や米朝師匠が弟子を集めるエピソードをマクラにはじまったのはこんな話。(意訳入ってます)。

・一族の長老が昔のことを語る。嘘ではない。良く聞け。聞かんかこら。今は大阪は世界中のゴミ捨て場となっているが、昔は東京に並ぶと住人は思っていたという繁華街だったのじゃ。そうじゃ、繁華街だけで出来た街だった。そこには水商売の女とそのヒモのヤクザ、そしてお笑い芸人しか住んでいなかった。そこでは何故か、人と人が道ですれ違っても、互いに譲り合おうとせなんだじゃ。その結果、ぶつかりあう。男はヤクザばかりだからの、当然「なんじゃこりゃわれ」という話になる。毎日毎日、大阪の人々は喧嘩に明け暮れておったのじゃ。なので、一旦家を出るとすぐ喧嘩になるもんじゃから、家を出てうどんを喰ってたこ焼きを買って、串カツ屋で一杯引っかけて帰って無事に来た者など、英雄扱いされる始末じゃった。

・その頃、神戸という街はお洒落なことで知られていた。その神戸の会社が新しい水着を開発した。少しでも水の抵抗を無くするため、摩擦力の少ない物質を開発して水着に使用したのじゃ。その物質に眼を付けた大阪の商人が、服にその素材を加えたものを開発した。すると、ぶつかり合っても摩擦でヌルっと滑ってしまい痛くない。なので喧嘩が起きない。この点を高く評価した大阪市はなんと条例でこのヌルを加えた服を必ず着るようにと決めてしまったのじゃ。ところがこのヌルには思わぬ副作用というか、変梃な効果があった。沢山の人数、つまり人混みの中にいるとその圧力が限界を超えた時、スポーンとヌルを着た人物が空に飛び出してしまったのじゃ。後にリープと呼ばれるこの現象を最初に体験した人物は172m飛んだとされているが、着地の時もヌルの効果で怪我一つなかった。このことは「おもろいかおもろくないか」が重要な価値基準と考える大阪の人々にとっては当然「おもろい」話になってしまう。そこで、大阪の人々は考えた……。

・いかんいかん、このままでは最後まで語り尽くしてしまう。ラストが気になる方は、e-NOVELSで100円で売っているのでそちらからどうぞ。

・さて、本作、今回の「ハナシをノベル!」に関してのみは出来は微妙と言っておこう。八天さんが思い出し思い出ししながら喋っており、観客もところどころではエピソードレベルで笑えるのだが、そこからだああああっと盛り上がれないまま結局終盤に至ってしまった。ただ、詳しい人によれば、この作品を八天さんがきちんと飲み込み咀嚼すれば、傑作に成り得る新作落語だそうだ。引き込むポイントなど、ツボをきっちり押さえれば、今までにない落語になる可能性は感じられた。なので、再演に期待。

さて、中入りで、再び田中啓文さんと哲弥さんが前に。第一声が「ついてきてください」というのはかなり真面目な意見とみた。続いて次の作品『病の果て』の事前解説。もとは田中哲弥さんが吉本現役時代「新喜劇やめちゃおっかなキャンペーン」に際し作った作品ながら、人事の問題など情勢の流れの結果、演じられることのなかったものなのだという。落語にしては難しい複数人物の書き分けを要求されるらしいが、新喜劇の雰囲気を頭に浮かべて楽しんで欲しい……と啓文さん。結果的にこの的確なアドバイスが功を奏したかたちになる。


06/10/03
・先の週末は第三回「ハナシをノベル!」に行ってきました。

・前回のレポートはこのへんの7月らへんにあるので参照頂くとして、小説家と落語家によるコラボレーション落語会も今回が三回目。演ずるのは月亭八天さん、ネタを提供するのは最近、二十一世紀初の新作を刊行した田中哲弥さん。ちなみに田中哲弥さんについては短編を幾つか読んだだけで電撃文庫とも縁がなく、当日前にぎりぎり『やみなべの陰謀』を読み終え『ミッションスクール』は読みかけの状態で臨むことに。(田中哲弥、誰? などという不埒な方は、騙されたと思ってこの『猿はあけぼの』を読まれるとよろしい。間違いなく興味が引かれるものと思う)。ちなみに後で伺った話によれば『猿はあけぼの』、来年くらいには本になるらしいとかなんとか。そこは哲弥さん本人の言うことなので。

・小生にとって二度目となる中之島公会堂。明治か大正か、モダニズム建築の薫り漂うこの建物には何かいつも圧倒されてしまう。今回は行ってみると「名探偵ナンコ」でお会いする面子がちらほら……って、南湖さん本人が居てちょっとびっくり。六時半の開場、七時の開始。隣のレストランでは結婚式などやっていて、そのお客さんたちがお囃子の聞こえる部屋を何だろう? と覗いてゆく。観客は四十人弱だろうか。まだまだ会場には余裕があるので、次回はぜひ貴方もどうぞ(と、意味無く宣伝してみたり)。

・まずは私服姿の八天さんと田中啓文さんが司会として登場。マクラというかネタ振り。今回が初めての参加という方が八割ほどで、リピーター率の少ない落語会であることが判明してしまう。作家個人のファンが追いかけてくるケースが多いのかな。新作落語ネタ下ろしということもあって、もしかすると今後の定番となる噺の誕生に立ち会うつもりで参加して欲しいとかそういうお話。着替えに舞台裏に行った八天さんに代わり、今度は原作者の田中哲弥さん登場。W田中ですね。

・田中哲弥さん、ぼそっとした喋り方が独特で啓文さんのツッコミとのタイミングが合わず微妙な間があったり、それはそれで面白いトークショーとなっている。 「えー、今回の一作目、『大阪ヌル計画』はどういうものでしょう?」「どういうものと言われても?」「お前が書いたんやろが!」 ……てな具合。ただ、田中哲弥さんがもともと吉本新喜劇におられて、八天さんとも二十年来のお付き合いであるとか、舞台裏で緞帳を上げ下げしていた話であるとか、ポケットミュージカルの台本を書いてあまりウケなかった話とか、意外な裏面のお話が出て興味深い。

・そんなこんなでお二人の会話が続かなくなった頃に、再度お囃子に乗って八天さん登場。本題、まずは『大阪ヌル計画』へ。


06/09/28
・さて『さらし首』(何が”さて”なのだ?)。いっときますがヒアリングをベースに書いているので、固有名詞は基本的に思いつき、当て字です。ストーリーはこんな感じ。――明治時代。大工の松造親方の下で働く職人に源六と安三というのがいた。仕事を終えた後、皆で盛り上がろうと吉原に誘ったのに、俺はそんなところに行く必要はないと嘯いた同僚の色男・裕治郎を冷やかしに、その裕治郎の恋人であるお舟の家を夜中に訪ねる。どんどんどん。扉を叩く二人(えれえ迷惑な奴らだな)。しかし裕治郎が出てくるものとばかり思っていたが、呼べど叫べどその家からは何の物音も聞こえてこない。何かおかしい。不審に思った彼らが家の中に入ってみると中は寝具までぐっしょり濡れた血の海状態。首が切断された女性の死体がその真ん中にあった。

・腰を抜かした二人だが、慌てて警察に事件を知らせると付近は大騒ぎに。さらに翌朝、近くの公園では柳の木の枝に髪の毛で括り付けられた女性の生首がぶら下がっているのが発見される。この「さらし首」は果たして誰が何の目的で……?(というのは原本では見事な色絵で犯行現場が描かれており、実は物語が始まる前からネタバレだったりする)

・怪しいのは、その家に居たはず遊び人・裕治郎だが その行方はしれない……はずだったが、松造親方のもとにふらりと現れたのはその裕治郎その人だった。彼のいうところによれば、自分は実は恋人・お舟の家には寄らず、そのまま夜通し、それこそ吉原の香割茶屋で遊びほうけていたのだという。この事件を解決するために登場する探偵・田島宗矩(たじまむねのり)裕治郎のアリバイを確認し、次に疑ったのは、裕治郎と以前交際していた女性・お良(およし)であった。そのお良、仕立屋を営みつつ、静かに暮らしているようにみえるが、これが実は強かな悪女。裏では柄の悪い山彦の源二郎なる男と繋がっている。お良の動向を探るために客を装って近づいた探偵の田島、この追及を交わすため背後から殴りつけて昏倒させ、お良と源二郎は逃げ出してしまう。

・そのお良、何としたことか株の世界では五指に入るという相場師・米倉利右衛門の別宅に、素性を偽り下働きとして潜り込んでいた。いつしか利右衛門からも信頼されるようになったお良は、山彦の源二郎と共にその財産を狙うようになる……。とまあ講釈でいえば、いわゆる「毒婦もの」。ミステリ風に呼ぶならば、女性主人公のクライム・ノベル。こうやって文章に落とすと何とも大したことない物語にみえるかもしれないが、南湖さんの熱演で聞くとこれが滅法面白いのだ。冒頭の殺人事件は犯人探しのフーダニットにもなっていないレベルなのだが、その人生を転がり落ちてゆく堕落した女性の描写が素晴らしい。先が読めるようで読めない展開(むちゃくちゃともいう)が、生々しくも艶めかしくもあり、そのストーリーにじりじりと引き込まれてゆく。この作品は今回初演ながら、それでもかなりまとまった内容かと思われた。南湖さんの講談に向いたストーリーであり、この作品はじっくりとモノにしてもらいたいもの。

・とまあ、いつも通り打ち上げに参加。あれやこれやあれやこれや。あと驚愕。


06/09/27
・第30回記念及び五周年記念……ということで賑賑しく告知された今回の「名探偵ナンコ」の簡単レポート。家での所用を片して慌てて駆けつけたものの、例のごとく(?)開演に十分ほど遅刻してしまう。壇上で講釈中の南湖さんの目を盗み、記名をしようと受付台に向かうが、パンフレットがない。おお、こりゃ大入りでパンフ売り切れか? と思って周辺をみるに二十数名、いつもより多いものの超大入りということもなく、首を傾げる。(実はパンフの刷り部数を絞っていたことが後で判明、さらにあらすじ入りの二枚折りのパンフを南湖さんがご自宅に忘れてきたとのこと)。最初の演目は古典講談『猫塚の由来』なる一席。博奕で大事なお金をすってしまった男が、猫に神頼みして三両何とかして欲しいとぼやくと……というお話。どうやら聞き逃した時間はマクラがほとんどだったみたいとはいえ冒頭を聞き損ねてしまっているため、100%の評価は不可能ながら、人情ものの雰囲気が良く伝わってくる作品でした。

・続いては旅行講談/実話講談となる新作講談の『波照間島』。実は小生、こちらの講談に入ってからずっと「長いマクラやなあ」と思いながら聞いていたということは秘密だ。ある夏、南湖さんが思い立って割り引き航空券を利用して沖縄方面へと向かった顛末が講談にまとめられたもので、題名通り人が住む日本最南端・波照間島滞在時のあれこれが語られる。まあ、バースデー割引やら、沖縄の富田林やら行くまでのエピソードも盛りだくさんで、ルートビアから幻の泡盛までくすぐりのツボの多いお話で、楽しゅうございました。

・さて本番、今回のメインは明治期の探偵講談(後でこっそり、明治時代に駸々堂が版元となって刊行されたという原作本も拝見しました)『さらし首』。

・ちゃっかり樋口有介著作リストをコンテンツに加えてみました。間違い指摘下さいましたO師匠、ありがとうございます。


06/09/24
・あとは、前日晩からひたすらリスト関係を拡充。柚木草平シリーズが創元推理文庫にて復刊されていることを記念して、多島斗志之同様、樋口有介作品リストを作ってみようと思い立ったまでは良かった。数時間作業した結果、ほとんど出来ているのだけれど、幾つか気になる点があって公開しづらい。

・とかいっていると欲しかった有力な情報が。○○○さんありがとうございますー。名前出しても良いのか判らないので、ここでは伏せときます。でも公開まではまだ少し。


06/09/23
・も一つ告知です。こちらは来週開催です。

・ 第三回 落語再生公開堂「ハナシをノベル!!」
 9月30日(土) 18時30分開場 19時開演
 入場料 当日2000円
 出演 月亭八天
 演目 「大阪ヌル計画」「全快」(作・田中哲弥) 月亭八天×田中哲弥のトーク(司会・田中啓文)
 場所 大阪市中央公会堂地下大会議室
 リンク先はこちらが一番分かりやすいと思われました。

・初回は田中啓文さん原作、前回の第二回は北野勇作さん原作、今回は田中哲弥さん原作、そして月亭八天さんのホームページによれば、12月開催予定の第四回は既に我孫子武丸さんが準備中の模様です。


06/09/20
・ということで、↓行く予定。無理にでも。でも、第30回記念ということだけれども何か特別な秘密がある……? やっぱりいつものナンコで何も無いような気もしますねえ。

第30回『名探偵ナンコ』〜よみがえれ!探偵講談〜
  *30回記念興行*

 日時/9月24日(日曜日)
 会場/本遇寺(JR東西線「新福島」・ 阪神「福島」下車、地下鉄2番出口から徒歩5分。JR環状線「福島」下車徒歩10分。福島区福島3-7-38)
 開場/18:00 開演/18:30  料金/当日1500円
 出演/旭堂南湖「さらし首」、「お楽しみ」
 ゲスト・芦辺拓(作家)「対談・探偵講談と探偵小説あれこれ」


06/09/17
・原書房では、今年末の『2007 本格ミステリベスト10』の刊行を控えて「オールタイム('96〜'05年)ベスト」のネット投票を募集しています

・とまあ、投票をして頂くにこしたことはないけれど、リンク先の投票フォームにはこれまでの「本格ミステリベスト10」における20位まで('96年のみ10位まで)のランクイン作品がずらりと一覧形式になって並んでいる。表の左側が年次順、それを作者別にソートしたのが右側。それをつらつら眺めていて思ったこと、というかこれはこれでランキングなのであくまで参考値なのかもしれないけれど、このリストをもとにした作者別、ランクイン冊数リストを作ってみた。(編著は除く、敬称略)。

 圧倒的一位は、芦辺拓 (11冊)。『時の密室』の二位が最高位ながらコンスタントに著作をランクインさせており、冊数別ではダントツで、二桁ランクインさせたのも数多い本格系作家でもただ一人だけ。カウントによっては編著の一冊を加えた十二冊になって更に上積みがある。この結果からは、芦辺拓が水準以上の作品を毎年コンスタントに生みだし、それがまた本格ファンより常に一定以上の支持を受け続けていることがうかがえる。で、続く二位に来るのは……これがなんと東野圭吾 (8冊) 一位は昨年の『容疑者Xの献身』のみで十位代が多いのは事実ながら、『どちらかが彼女を殺した』『名探偵の掟』といったところをこれまでベスト10圏内に送り込んだ実績も光る。そして同率三位は、島田荘司 (7冊) 西澤保彦(7冊) 本格のビッグネーム、島田荘司はなぜかこの「本ミス」ではあまり恵まれておらず、五位以内となった作品がない。昨年の『摩天楼の怪人』(六位)が最高位。そしてランクイン作品のほとんどが吉敷ものではなく御手洗ものという点が特徴。一方、こちらも独自のパズラー路線から、コンスタントに作品をランキングに送り込んでいる印象がある西澤保彦だが、島田同様『神のロジック 人のマジック』での六位が最高。代表作のひとつ、『依存』も七位止まりだった。

・続いて、五位。こちらも二人いて、ひとりは 柄刀一 (6冊)。コンスタントに真っ向から本格に挑む作品を打ち出してきている氏だが、ランキング上で抜けた作品は少なく、短編集の『OZの迷宮』の八位が最高という結果になっている。もう一人の五位は 麻耶雄嵩 (6冊)。 こちらは『鴉』が'97年に一位を獲得しているほか、『螢』が三位、『木製の王子』が四位、『メルカトルと美袋のための殺人』『神様ゲーム』が五位と「出せば高評価」。ただ、その分寡作だというところで損をしているクチにあたりそうだ。

・さて、七位はグループ(?) 有栖川有栖 (5冊)、京極夏彦 (5冊)、殊能将之 (5冊)、森博嗣 (5冊)。 ある意味で納得、ある意味で意外な顔ぶれ。ランクインさえすれば作品全てがベスト10内(最高位は『スイス時計の謎』の二位)の有栖川有栖、京極堂シリーズにおける、かつての(今も)高い評価が大いなる財産となっている京極夏彦(最高位は『鉄鼠の檻』で一位。他二位が二回)、デビューが遅く、刊行数は少ないながら抜群の破壊力が魅力となっているのだろう殊能将之(最高位は『ハサミ男』の二位)、そして初期のS&Mシリーズの評価が高い森博嗣(最高位は『すべてがFになる』の四位)。と、ここまでで丁度十名。

・さて、十一位グループはというと、石持浅海 (4冊)、北村薫 (4冊)、鯨統一郎 (4冊)、谺健二 (4冊)、貫井徳郎 (4冊)、山田正紀 (4冊)。 もう個別のコメントは避けますが、ベテランから若手まで顔ぶれはいろいろですねえ。(※注:二階堂黎人 (3冊)は、編著を加えると4冊になりますので、集計次第ではこのグループになります)。

・せっかく数えたので十七位グループを名前だけでも。乾くるみ (3冊)、歌野晶午 (3冊)、奥泉光 (3冊)、恩田陸 (3冊)、北森鴻 (3冊)、倉知淳 (3冊)、二階堂黎人 (3冊)、法月綸太郎 (3冊)、横山秀夫 (3冊)、でした。 あくまで'96年以降の本格シーンの動きなのだけれど、この結果を眺めているといろいろ考えること出てきませんか? 


06/09/14
・この週末に使おうと暫く仕舞い込んでいたクーラーボックスを戸棚から出し、何の気なく蓋を開ける。その蓋付属のポケット部から、何故か味付け海苔のパックが幾つかと一万円札が出てきた。謎だ。まあ、無理矢理三題噺にしようと思えば出来ないことはないだろうけれど、いずれにせよ心当たりがない。まあ、臨時収入だ(もとは恐らく自分のお金だけどさ)。本でも買おう。

・いわゆる「このミス」年度末(年間ベスト投票の対象期間は、前年11月から10月まで)の新刊ラッシュ。魅力的な新刊が多くて大変です。


06/09/13
・ようやく心おきなくピンクの栞をプレイし、ここで得た「完」から黒い栞を入手。ついでに最後の”犯人篇”まで完全に終えて長かった『かまいたちの夜x3』のプレイ期間は終了。特に”犯人篇”は、意外な人物が意外な動きをしており、これまでのバッドエンディングでは、視点人物の死によって謎のままだった部分が幾つも説明がつけられていてちょっと感激。流れてきてあっという間にどこかに行ってしまった謎の死体の正体であるとか、闇の中に跋扈する殺人鬼であるとか。なるほどねえ。その裏側に物語がきっちり仕込んであった点には正直、相当感心致しました。「よいしょ、よいしょ」のあたりは背筋が寒くなりましたが。

・まあこのゲーム、いろんな評価があるようですが、個人的には今回の『かまいたちの夜x3』、濃密かつ凝縮されたストーリーが多面的に楽しめたので満足です。CMにある売り文句のような、全てに「3つの××」があるというようなバリエーションはあまり感じませんでしたが、『2』から連続してプレイしている身にはこれ以上ない贈り物だったかと思います。

・財布を買い換えたので、首都圏系の古書店カードを幾つか処分。もう数年使っていないものがずっと財布のなかに入っていて、何のかんのと長らく行動を共にしていたかと思うとちょっと感慨深いものもありますが。でもだって、行かないんだもん。


06/09/08
・別にピンクの栞を心おきなくプレイしていた訳でもなく、単にばたばたと忙しい月初を乗り越えたらもうこんな日に。この間にまた一つ徒に馬齢を重ねております。

・この間に、某所の引っ越しの手伝いに行って来たところ、不要本が。もともとミステリの人でもなんでもない単なる親戚のお家ゆえ、もちろんお宝本など発掘される訳もなく、だけど捨てるのというのなら頂きましょう、と救ってきたのが赤川次郎と星新一。まあ、両者ともン十年前にはかなり読んだ筈なのだけれど、改めて読んでみるといろいろ新鮮で楽しい。何がきっかけになるか分からないのが読書の良いところだと改めて実感致します。


06/09/02
・以前にこちらでも宣伝しました、【どのミステリーがすごい!? 2006年上半期編】 投票結果が発表されています。一位は、大方の予想通り『夏期限定トロピカルパフェ事件』。今年の新刊ミステリで、幅広く読まれていそうで、それでいてシリーズ二作目にして一定の水準以上をキープし続ける米澤穂信氏の新刊が一位を獲得、1/四四半期で一位を獲得していた『怪盗グリフィン、絶体絶命』は二位に転落……と分析しだすとキリがないので、リンク先の投票結果を読まれたし。

・「かまいたちの夜x3」は、ようやく隘路を通り抜けて「完」へと至りました。選択肢のセレクトの部分がまさに隘路。あそこであいつをああいう風にしておかないと、こちらが推理を続けられないとは。あと、最終的には別次元の話が影響するわけですが、このあたりは我孫子さんというよりも「2」でシナリオを書いていた田中啓文さん的な雰囲気が強いかな。この部分、餃子一日百万個に爆笑。思わず正解が判っているにもかかわらず遊んでいたら、強烈なツッコミを受けてしまいました。

・ピンクの栞で遊ぶ前に、通常編のはバッドエンディングをコンプリートさせるつもり。


06/08/30
・ええい、またもやバッドエンディングか!(これで四十いくつか目だ) 攻略サイト見ないとツライのか。今回こそ「完」に至ると信じた道もまた「終」へ。おおよそのトリックも犯人も分かったというのに。ああ、でも黒いコートの男がよく分からん。多分、彼だと思うのだけれど、そちらについては決め手なし。

・どうも序盤の方の選択肢の選び方、主人公をどこで切り替えるかといったところがポイントになりそうだ。透と俊夫だよなあ。双方犯人じゃないのに、互いに疑い合ってはいけません。


06/08/27
・ほんとにちびりちびりと『かまいたちの夜x3』を進める。ザッピングというシステムがようやく理解できてきた。都合、本作では四人の主人公が選べるのだが、ある主人公を選んで選択肢を選ぶと、その行為によって影響を受ける他の主人公視点でのプレイが変化するのだ。つまり、Aさん視点でプレイする際、Bさんに対しての会話を選択する。例えば「お元気ですか」or「この馬鹿野郎」。すると、Bさん視点では、Aさんの時に「お元気ですか」と言われた時と、「この馬鹿野郎」と言われた時の二つのリアクションが発生するというわけだ。今までは分岐するだけだったのが、あみだくじのような流れになっている。(分かりにくい説明だなあ)。

・まだいくつかの「終」(つまりはバッドエンディング)しかみられていない。どうやら「完」に至るには、このシステムを巧く使いこなしてゆく必要があるようなのだが……。


06/08/26
・平日の夜中にちびりちびりと『かまいたちの夜x3 三日月島事件の真相』をプレイ中。本来はサイト巡回とか更新に充てる時間を思いっきりゲームに突っ込む日々。本作は、これまでの『かまいたちの夜』『かまいたちの夜2』のメインストーリーが収録されているのでまずはそちらから。ゲーム史上でも名作として語り継がれる『かまいたちの夜』、個人的には実は初めてのプレイ。何度か試行錯誤を繰り返すうちにメインとなるトリックが見えてきたので、何とかきちんとしたエンディングを迎えて、後はバッドエンディングの回収に走る(ここで時間が結構取られた)。しかしなるほど、本格テイストがしっかり籠もっていてやりがいのある内容ですねえ。

・一方、『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』は、本編が出た段階で購入して、かなりやり込んだ過去があるので、思い出し思い出ししながら進めてゆくうちに、最初のプレイがそのまま完結編へと繋がった(実をゆうと少しほっとしている)。こちらは以前の蓄積があるので無理に脇道探索はしないことにして、そのまま本編へと突入した……。

・そこでようやく本編『かまいたちの夜x3』。前作、すなわち監獄島での事件という本筋のシナリオが下敷きとなったプロローグ。前の事件での生き残りである、浪速のど根性実業家・香山が、不運にも命を喪った最愛の妻・夏美を偲んで三日月島を買い取り、供養のため、事件後にぼろぼろになった館を巨額を投じて改装するところから物語が始まる。

・時間があれば「CRITICA」とかコメントしたいのですが。当面無理そうです。


06/08/19
・発売日より遅れること×日、ようやくPS2ソフト『かまいたちの夜x3』を購入。おまけ(?)の初代『かまいたちの夜』から、改めて全部することにしてますので、当面廃人になるかもです。

・↓「CRITICA」は購入メールを送信して即入金。発送者の好意により現品は輸送途上に至っている模様。楽しみです。「どのミス」は投票を済ませました。今日(20日)が締切ですね。


06/08/17
探偵小説研究会の機関誌「CRITICA」の通販が開始された模様です。個人的には、コミケ等には個人的に全く縁がないので素直に申し込みましたー。

・あと↓で御紹介しました「どのミス」の締切が20日に迫っております。皆さまご投票を!


06/08/15
・ちょいと縁があってここ何年か盆休みに避暑に出向いている信州某所、去年は無かった(と思う)BOOK OFFが出来てましたので覗きました。ただ――もともと開店時には他店の余り本を持ち込んでいることもあるのでしょうが、各地方における店舗の個性が本当に無くなってきている印象。もともと大手リサイクル系に個性を望んじゃいけないという話ではあります。けれど、まだチェーンを開始して間もなかった数年前は、もう少し何か店による違いがあったような気がするんですけどね。気のせいかも。(でも、都内の店と鹿児島のそれとで明らかに違いがあったような)。

・この何年かの間に会社としてのマニュアルがブラッシュアップされて「各店舗はこうすべき!」という決まり事が結構しっかりと出来てしまっているのかも。(あと、リサイクル系の常で刊行時期が古い本はあっさり廃棄されているのか) ウチの近所のBOOK OFFはしょっちゅうバーゲンセールをやっているので、それが個性といえば個性。だけど本自体の回転があまり無いようで、偶に寄ってもあまり発見はありません。

・あ、その某店でも坊主引いてきました。当たり前といやあ当たり前ながら、例えば2000年と比べると、それから六年のあいだに刊行された本が棚を侵食している訳で、当時ならば棚の隅に残されていたような古い本はどんどん淘汰されて消えてゆくのですよね。


06/08/08
・このサイトの更新サボり時期にあたったことと、周囲でも話題があまり続かなかったように思うので、開始時期からかなり遅れての再掲示。

どのミステリーがすごい!? 2006年上半期編  シーズンオフのMYSCONが送るオンライン企画。要は「このミス」の期間が一年間であることに対して、とりあえずその上半期でのベストはどうなのかを皆さんの投票で調べてみようという企画です。ちなみにこの企画は、MYSCON7開催に合わせ、2006年第1四半期分として投票が既に実施されており、その段階でのダントツの一位は『怪盗グリフィン、絶体絶命』でした。(当時の成績について詳しくはこちら)。

・果たしてその後の三ヶ月に刊行された作品による逆転はあるのか。それとも『怪盗グリフィン』が引き続き一位を守るのか。 この手の投票は母数が多ければ多いほど面白いものだと思いますので、是非投票をお願いします。面倒くさければ、五冊挙げるだけ、コメント抜きでも構いません。今さらながらですが、よろしくお願いします。


06/08/06
・仕事の関連で定期的に訪れていた四国にある某市。時間調整でごくたまに行っていた某リサイクル系古書店があったのだが、先日行ってみると看板が掛け変わっていた。うあ、閉店か、と目の前まで行くと別の系列のリサイクル系の古書店に変わっていた。ほっとして中に入ると、品揃えについては「居抜き」。(ただ、CDやコミック売り場が大きくなって一般書のスペースは減っていたけれど) 確かに元から経営していた会社より、後の方が若干規模や知名度は大きいように思うのだけど、これって結局、この市場(リサイクル本)がとうとう飽和状態に入って来ているということなのか?

・リサイクル系の古書店の進出してきた街では昔ながらの古本屋さんが店を閉めるケースはこれまでも(残念なことだけれども)よくみてきた。マーケットというか、受け手の側からしても今さら新鮮味はないだろうし、コンビニ等と同様、全国的なスケールメリットを打ち出して、大手同士が競争する時代になりつつあるのかもしれない。


06/08/03
・もう八月ですねえ。刊行自体は認識しながらちょいとサボっておりましたが、多島斗志之作品リストと皆川博子作品リストをアップデートしておきました。しかし創元推理文庫の「多島斗志之コレクション」はいいですね。長く続くと良いなあ。続いた折りには、雑誌に発表されただけで未刊行の作品を集めた短編集とか企画してくれませんかねえ。というか、ぜひお願いしたいです。


06/07/31
「名探偵ナンコ」最後。

『炎天』に続く、二つ目のエピソードは、超が付くといっても良い程の古典怪奇小説の傑作『猿の手』

・新福島駅北へ五分。「餃子のカプリチョーザ」という中華料理屋を営む夫妻は長男を不慮の事件で亡くし悲しみに暮れていた。彼らにはもう一人息子がいて、名前を伸二(”シンジ”は間違いないけど、字は適当)といい、工場勤めをして真面目に生活している。事件の傷が癒えた頃、夫妻のもとに旧知の老人が現れる。彼は、戦時中にいわゆる”全滅部隊”に所属していたといい、奇妙なお守りを持っていた。猿の死骸の手の部分である。その猿の手は三つの願いを叶えてくれるというのだが、老人はその猿の手を捨ててしまおうとする。慌てて止める中華料理屋夫妻。願い事なぞ叶えてくれるわけがないと思いつつも、翌日の夜、二人は相談の結果、店の改装資金として五百万円ほど欲しいと、猿の手に念を込める。どこか遠くで大きな音がしたような気がするが定かではない。さらに翌日、夫婦のもとに次男・伸二が務めている会社の人間が訪れる。工場の事故で伸二が亡くなったというのだ。彼が持ってきた見舞金が丁度五百万円。夫婦は悲しみのあまり、猿の手に二つ目の願いを込めてしまう。曰く伸二を生き返らせて欲しいというものだった……。

・『炎天』以上に忠実に『猿の手』をなぞったかたちで、なるほど興味深い。こちらの方はラストの演出も少しアレンジしてあって怪奇小説らしい余韻がより生きてきていた印象。それにしてもこの不幸続きの中華料理屋は……。南湖さんが、怪談系の講談の決まり文句「さて恐ろしきは人の執念かな〜!」とやろうと仕掛けて、「あ、違いますね」ととぼけるところはご愛敬。あと『炎天』にしても『猿の手』にしても、この日、日中含め一ヶ月連続で講談をこなしている南湖さんの出来が非常に良かったことも好印象に繋がっている。演奏家は一日も練習を休まないというけれど、講談師も仕事を毎日続けていた方がいい仕事になるのかな、と考えてみたり。

・中入りのあと、恒例の旭堂南湖・芦辺拓対談で、怪奇小説を講談で演じることの裏話など。いつもの面子で打ち上げてこの日はオシマイ。充実した時間を過ごさせて頂きました。といいつつ、この文章を書いているのはその一週間以上あと。とほほ。


06/07/30
・今回の探偵講談のメインの演目は、『怪奇小説傑作選』。夏ということで怪奇小説から題材を引く、……とはいっても講談であるからして外国の作品をそのまま読むことはなく、日本を舞台に、日本人たちによる物語として置き換えられているのがポイントだ。ちなみに本日は名作『炎天』そして『猿の手』の二つがベースとなっている。

・新福島駅北へ五分。「餃子のカプリチョーザ」という中華料理屋を営む夫妻の長男・伸一(”シンイチ”は間違いないけど字は適当)は画家だった。暑い夏のある日、彼は特に題材を決めず、筆の赴くままに何の気なく絵をキャンパスに描き始めた。徐々に構図がはっきりしてくると、それが裁判所の様子を描いたものであることが判る。虚ろな目をした五十代と思しき男が被告席にいる図。彼自身そんな光景を目撃した記憶はない。描き終えると、あまりの暑さに彼は夕涼みをしようと散歩に出掛けることにした。しかし、陽は落ちようとしている時間帯であるのにとにかく暑い。どこへゆくともなくぶらぶらと歩いていた彼はいつの間にか、知らない路へと入り込んでしまう。どこからか石を砕く音が聞こえてきて、彼はその音に引かれるように、その石屋を覗き込む。店の奥で大きな墓石に彫刻のノミを振るっているのが主人だろうか。その仕事ぶりを眺めているうちに、伸一は奇妙なことに気付く。その墓石に彫られている名前、それは伸一自身の本名と同じうえ、生年月日までが同じ。伸一は思わず、その主人に声をかける……。

・とまあ、筋書きとしては本編と同じ。だけど完全に日本、しかも会場のすぐ近くの地名を使って、先に講談で演じられた『飯店エキサイティング』とも舞台を重ねてしまっている。考えようによっては悪ふざけなのだが(事実、そこで会場はウケた)、それでもその講談世界にすっと引き込んでしまうテクニックとしても優れている。実際、物語としては『炎天』そのものな訳で、百年以上前に英国で発表された作品を、現代の日本に置き換える作業は、彼我の風習・慣習の違いなどもあってかなり難しい。それでも多少苦しいなと思える部分はありながらも、結果的に原作同様の嫌らしいエンディングがじんわり心にしみ通る。


06/07/25
・続いて日曜日は『第29回名探偵ナンコ』。前日は何とか保ったお天気が昼過ぎから完全に崩れて、開演直前は土砂降りの状況。福島駅から傘を差しても下半身を濡らす雨に、「これは観客がめちゃくちゃ少ないのではないか……」と憂いながら来たものの、結果としてはいつも通りの入り。他の方たちも同じような危惧と感想を抱いていた模様。早速、南湖さんによる前口上(というか少し遅刻したのだ)。旭堂南湖さんは、七月に入り『講談・文月毎日亭』と題して毎日講談を開催中。本日は昼の部をこなしての太融寺入りとのこと。そちらのエピソードから始まり、露鳳と千代大海の遺恨を講談風実況にてその真相をさらりと明かして(?)みたり、昼間の講談で覚え中という、六十八代横綱の名前を全員挙げてみせたりと、前振りの段階からとてもノリが良い。

・まずは文月の方でも演じている「寛政力士伝」から「小田原相撲」の一席。小田原に化け物じみた強さを誇る大岩という素人力士がいた。彼は地元の相撲では負け知らずで、その鼻息は荒いうえ傲岸で我が儘な性格によって周囲から煙たがられていた。そんな彼は江戸から小田原へ巡業に来ている力士を相手にしても負けず、とうとう小田原への巡業は中止となり、地元の相撲ファンを悲しませていた。しかしある計らいによって江戸から谷風一行による巡業相撲が復活した。意気揚揚と参加する大岩、そして鯱関、九紋竜(字が分かりまへん)といった関取を次々に手玉に取った。そんな谷風のもとに十歳ほどの子供を連れた女性が現れて、その大岩が仇なのだと訴える……。

・いつも以上とも思える熱演でつかみは抜群。物語そのものは、谷風ではなく雷電が見せ場を持ってゆくのだが、それも以前に聴いた「雷電の初相撲」が伏線になっている訳でして。十二分に古典を堪能したあとは、落語家・月亭遊方さんが書いた『新作講談・飯店エキサイティング』。題名だけだと何のことやら……というこの作品、新福島駅北へ五分。中華料理屋「餃子のカプリチョーザ」がその舞台。内容は……というと五十代の夫婦がやっている中華料理屋内のやり取りが延延と続くもの。笑えるという意味ではめちゃ笑えるのだけれど、これはやっぱり講談というよりも落語ですよねえ。一方の遊方さんは、南湖さんの作った講談を落語として演ずるのだそうです。

・ここで演目として芦辺拓さんによる『文藝朗読パノラマ館』がクレジットされているものの、これは連絡不行き届きで今回のお話は無し。その代わり、本日のメイン「怪奇小説傑作選」に関する説明をして頂く。訳者である平井呈一先生のあとがきによって人生が狂わされてしまった評論家・作家の数々といったところが面白かった。


06/07/24
・まずは「ハナシをノベル!!」続き。

『天動説』(実はリンク先で読めます)のあとは、再び田中啓文さんと北野勇作さんが登場されてのトーク。怪談噺ということでこちらは純然たる新作のネタ下ろし。北野さんによるとテーマは「怪談は怖いのは本人だけ、他人から見たら笑い話や」だそうで、啓文さんはこれをサイン色紙に書いたらええやんとやたら勧める。(長すぎますって)。まあ、そんなこんなで再び八天さんが壇上へ。

・今度の前振りは、かつて流行ったひと言怪談。「かめののろい」「あくのじゅうじか」といった定番から、これも有名な(?)「消えたシューマイ」といったネタふりで観客を笑いのテンションに持ち込んでおいて始まったのが『寄席の怪談』

・とある古い寄席の警備に回されてきた人材派遣会社のアルバイト・ナガサカ君。控え室にいた劇場の人に挨拶。「そうか、前の奴は一晩で辞めたか。無理もない」との怪しげな台詞。深夜にたった二回巡回するだけで、相場よりかなり割のいい収入となるアルバイトなのに、なぜ? 「聞いてないか。まあいい、嫌でも知ることになる……」 ああ、何とも不気味なおっさんの台詞。とはいえ、このおっさんとナガサカ君のボケの応酬は訳分からなくて面白い。「聞きたいかあ?」 このあたり、八天さんの語り口が絶妙。結局のところ、順路を覚えるという口実でおっさんと共に夜の劇場をナガサカ君は歩き回る。「すすり泣きの聞こえる芸人専用の便所」「奈落にぶら下がるロープ」「夜中に電気を点けてはいけないホール」……、そして……。

・ある意味、ホラーとしては定番の道具を使いながら、八天さんの「脅かすおっさん」「怯えるナガサカ君」の語り分けが実にツボに嵌っていて、オチまで一気に演じてしまって時間を忘れる展開とするあたりが素晴らしい。正直、ネタ下ろしとは思えない完成度でした。現代怪談でありながら、古典の匂いがするのはやはり展開としては定番であるからか、演者と台本の両方が、夏の夜にぴったり合う一作でありました。(演出も良かったですよ)。先の『天動説』を合わせ再演される機会があるようでしたら是非聴きに行ってくださいませ。

・最後には、第三回執筆予定の田中哲弥さんを交えてトーク。「あんまり喋るのが得意ではない」という田中哲弥さんではありましたが、結局、八天・啓文が巧みに引っ張り出す。台本の進行状況はまだ少しとのことで、その答え(?)は二ヶ月後、9月30日に再び中央公会堂にて。あと、8月には田中啓文さんの『笑福亭梅寿謎解噺』の続刊、さらに一作目の文庫化に加え、なんと8月1日発売の『ビジネスジャンプ』で漫画化されることも決まったとの報。これは興味津々。あと北野勇作さん出演の劇団・虚航船団パラメトリック・オーケストラの公演も7月28日〜30日にあるそうです。(と、ちょっと宣伝をお手伝い)。

・また、パンフレットに記載があったのでここで書きますが、第四回は(たぶん)牧野修さん第五回は(たぶん)我孫子武丸さんによる台本のあと、参加予定作家として浅暮三文さん飯野文彦さん、そして森奈津子さんのお名前が。……果たして実現するのか、実現したらどうなるのか。楽しみい(怖いもの見たさ?)。

・続いては「名探偵ナンコ」です。


06/07/23
・この週末は比較的身体が空いたこともあって、土曜日にハナシをノベル!、日曜日に名探偵ナンコ と落語・講談の豪華イベントを梯子。(リンク先はそれぞれ、月亭八天さん、旭堂南湖さんのホームページ)。

・まずは土曜日の「ハナシをノベル!!」。上方落語への深い造詣から、落語ミステリの傑作『笑酔亭梅寿謎解噺』を生み出した田中啓文さんが仕掛け人。その田中氏の十数年来の友人で、梅寿シリーズのチェックを行ったという月亭八天さんが、落語の新作を啓文さんに依頼したことがコトの始まり。元より一度書いてみたいと思っていたという啓文さんと意見が合い、どうせなら「小説家の書いた落語」を披露する会を持ち上げてしまえ、ということになって、五月に第一回が開催(小生は聴き逃しました……)され、今回が第二回目。

・初回は当然、田中啓文さん自らが書いた作品『新説・七度狐』『皿相撲』が演じられ、第二回目となる今回は落語研究会出身のSF作家・北野勇作さんが登場。演目は、桂雀三郎師匠が開催した新作落語台本募集で最優秀賞を獲得したという『天動説』、加えて怪談ネタの『寄席の怪談』の二作。さてさて。

・会場となるのは、知る人ぞ知る歴史的建造物・大阪市中央公会堂。その地下会議室。入るのは初めてなのだが、その雰囲気を残したまま、内装はしっかりと改装されていてちょっと驚き。開場までには十数人のお客さんが入り口付近で待っている。突如響いてきた太鼓の音(ライブ)と共に受付開始。客層が見事にバラバラで、友人連れの若い方から小生のような単独客、五十六十代と思しき夫婦連れなど。どうも小生の後ろに座られた方たちは、会話で類推するに北野さんの演劇関係者か。

・まずは、平服の八天さんと田中啓文さんが前に出てトーク。前回を振り返って……なのだが、なぜか前回うまく行かなかった言い訳が主。ただ、お二人の絶妙のボケとつっこみが噛み合い、この段階でかなり笑いが取れる。前回は、八天さんも観客も緊張しすぎていたのがいけなかった、という反省によるものらしい。天満繁盛亭の話題や、前回の打ち上げ秘話などいろいろ話されたあと、着替えに八天さんが舞台裏へ、続いて「あんたら、言い訳ばかりやなあ」と北野勇作さんが登場、トークが続く。『天動説』の賞金が十万円だった話や、実は関西のSF作家は筒井康隆・小松左京さんといった大御所からずっと、落語作品を書いているというあたり興味深い。「そんなアホな」というオチがSFと落語の親和性がうんたら、と微妙に納得させられてしまう。

・再び出囃子(ライブ)と共に八天さんが登場。『天動説』。自身が天文大好き少年だったという前振りから、伝統的な落語の形式を活かした幕開け。即ち、忙しそうに仕事をしている相方に「ちょっと教えてえな」と絡む男。しかも、こいつわがままなうえ酔っ払っているからくどい。くどいのだけれど、そこが面白い。彼がいうには「地球は回ってないと思うねん!」 それに答えて相方は一生懸命それを説明しようとするのだが……。最後に相方の方が、男を納得させてしまう展開が意表を突いて面白いうえ、二重、三重にオチがつく。ああ、なるほど、あの部分にはそんな意味が、と得心させてしまう点が見事。恐らく小説で読むと「ベタ」でしかないネタが、落語という「語る」形式では別のかたちで伝わってくる。”芸”ですねえ。


06/07/20
・先般から言及していた古書買いの件。ようやく手元に届きました。夏目書房さんの、こちらのコーナーを眺めていての衝動買い。

・笹沢左保『夜泣石は霧に濡れた』講談社初版・署名。
・小峰元『ピタゴラス豆畑に死す』講談社重版・署名。
・高柳芳夫『『禿鷹城』の惨劇』講談社初版・署名。

・乱歩賞作家署名本三連発! ……と注文した時には思ったのだけれど、よくよく考えてみると笹沢左保は乱歩賞そのものは受賞していないのでした。ちゃんちゃん、と。(でも嬉しいなあ)。

・ちょっと早い気がしますが、この週末、7月23日(日)は第四日曜日になるので名探偵ナンコですよ。

 第29回『名探偵ナンコ』 〜よみがえれ!探偵講談〜

 会場/本遇寺(JR東西線「新福島」・ 阪神「福島」下車、地下鉄2番出口から徒歩5分。JR環状線「福島」下車徒歩10分。福島区福島3-7-38)
  開場/18:00 開演/18:30
  料金/当日1500円

  出演/旭堂南湖「世界怪奇小説傑作選」、「飯店エキサイティング」(作・月亭遊方)、「寛政力士伝」
  ゲスト・芦辺拓(作家)「対談・探偵講談と探偵小説あれこれ」

・今回は夏らしく、怪奇小説の講談とのこと。聞くところによれば「炎天」と「猿の手」をアレンジした新作とか……。これはどのようなアレンジになるのかちょっと興味が湧くところ。ちなみに南湖さんは現在、文月毎日亭で一ヶ月連続の講談中。


06/07/17
・もう既に公開されて時間が経過しましたが(自分の備忘録代わりでもあるので)、探偵小説研究会の公式WEBサイトのリンク。 機関誌の発売と探偵小説評論賞募集のお知らせなどがあります。

・先週のある平日のハナシ。 始発に近い新幹線に乗っての遠距離出張。午前中に用件が終わり、少し帰りまで間がある。実はその街には小学生の頃に何年か住んでいたことがあって、電車で十五分ほど行くとその頃住んでいた家があるのだ。いそいそと近距離切符を買い、そちらへと向かう。夏の暑さは変わらぬものの、十×年前は、田圃が目立った地域もすっかり住宅地。引っ越してきてすぐのこの季節、蛙の声が夜な夜な響いていた一帯には幅広の直線道路が走る。しかし、寂れたショッピングセンター、リニューアルしたと思しき床屋など、一部のランドマークは当時を思い起こさせるものがあってなかなか懐かしかった。ただ、印象としてはほとんど別の街。そんなもんですよね。ちなみに、以前何年か住んでいた家はどうも取り壊されたらしく、全く別の瀟洒なお家が建っていました。

・で、一駅分歩いて帰ろうとしたところ、隣駅には立派なブックオフが(しかも多少建物自体は古びてしまっている)。 これも時代の流れですかねえ。そこでは収穫はまったく無しでした。


06/07/10
・W杯も終わって、ひさびさに早朝にゆっくりネットを巡回……と思ったら、某古書店のサイトに嵌り、平均単価二千円超/冊x3冊の注文を反射的に押してしまった。……たぶん、後悔しないと思うのだけれど。何を買ったかは届いてから。

・昭和期の文庫本は大抵今よりも活字が小さく、一ページあたりの分量が多いことは自明のことなのだけれども。読んでいて微妙に眼に疲れを覚えるようになってきた。以前、小生よりもちょうど十歳年上のある方が「読書に老後のお楽しみはあり得ない。理由は眼がついてゆけなくなる」という趣旨のことをおっしゃっていて、その時は「ふーん、そんなもんかな」としか思わなかったのだけれども……。人ごとではなくなりつつある? 取り敢えず、目薬。


06/07/09
・アンソロジー「クリスピー物語」レビュー続き。

森山東『チョウになる日』 ミュージシャンを目ざしコンビニでバイトする男。彼は同棲している美容師のエリカに支えられてきたが結婚には踏ん切りがつかない。そんな彼が入った喫茶店で、青虫の入った瓶を渡され……。短いなかにまとめてしまったためか展開が急だが、幻想を通じて自分自身の進むべき姿を再発見する男の姿が新鮮で、爽やかな一編。

小林泰三『少女、あるいは自動人形』 この作品、先に傑作といっておく。僕が四十年前に訪れた屋敷は人形作家の館だった。館にはオートマータと呼ばれる精巧な人形があり、主人とマリアと名乗る美少女がいた。人形はあたかも人間のような振る舞いをし、僕は選別眼を試される……。その枠組みといい、内容といい、精巧に計算されており、シンプルな物語のなかに複数の惑乱とサプライズがある。短い物語ゆえに説明抜きで強引に納得させていくテンポある展開に素晴らしいセンスを感じた。特にラスト一行での衝撃がGOOD。

北野勇作『妻の誕生』 「生まれ変わりたい」と妻はいい、その準備のために大量の卵の殻を摂取しはじめてしまう。止める僕を無視したまま、妻は蒲団のなかで本当に卵になってしまっていた……。「殻を脱ぐ」という本アンソロジーのテーマに対して、真っ向から挑んだ(?)作品。妻への態度や、残った卵の黄身と白身に対応する”僕”の行動など、物語全体をほのぼのとした感覚で包み込むため、これまでの北野作品の延長線上の作品だと感じる。やはりこの感性はどこか安心感を読者にもたらしてくれる。

・というわけで、あっさり読み終わる分量でありながら、ショートストーリーという枠組みのなかで贅を凝らしたアイデアが放り込まれている作品もあってじっくりと楽しませて頂きました。あと、カバーを外すと「ネスレ文庫」とありますが、紙質といい色合いといい、角川文庫にそっくりなのがいい味。まあ、とっくに「クリスピー物語」は食べ終わりまして、そちらにさしたる印象はない(だって口に入りゃキットカットと同じだし)ですが、文庫本は残るのでお得ですよ。


06/07/07
・アンソロジー「クリスピー物語」レビュー。「殻を脱ぐ」というのが各作品のテーマだという。まあ、キットカットの「クリスピー物語」自体、ウェハースがチョコの殻を脱いだと受け取れる訳なので、そのあたりへの引っかけですね。

・鈴木光司『クロスロード』  「うお?」一瞬、我が眼を疑うというか何というか。冒頭の一文がいきなり「淫らな表情で声を上げれば、声まで淫らになる」。……お菓子のおまけでいきなりコレでいいのでしょうか。とはいえ、物語そのものは決してエロくはなく、あまり頭が良くなく、人生に流されながらも少しずつ自分の力で三十代にして銀座のホステスにまで上り詰めた三橋果菜子と、小学校時代に彼女を庇護していた秀才・深山龍太郎とが、店で再会するワンシーン。回想にて描かれる彼と彼女の想いのすれ違い、十数年を経ての彼らの現在の境遇などが切なく描かれ、また幸福にも悲劇にもどちらにでも簡単に転げ落ちそうな予感を孕ませつつ幕が閉じられる。

大石 圭『魚になったミジンコ』 子供の頃から無口で引っ込み思案でおどおどしていた自分。かくれんぼでは参加していたことを忘れられ、卒業アルバムに写真がないことに友人はおろか両親ですら気付かない。そんな自分を救ってくれたのは、水泳だった――という話。前半部のやりきれない人生が、高校時代に水泳していてあることをつかみとったことで変化する、短いながら拠り所の存在の大切さを感じさせる物語。

牧野 修「押し入れ」 「臭いがしたんですよね。玄関入った途端に。」 こいつは少し壊れているのか壊れていないのか――不安にさせてくる一人称での語り口は、牧野ワールドでは定石。そこから”壊れ”の背景から理由へと繋がっていく展開に愛があり、そして……お見事な一作。


06/07/02
・賞味期限が2007年となっていたので購入したまま封を切っていなかったネスレ・クリスピー物語(文庫本パック)。先日、お腹が空いた時に手元に他に食料が見あたらないので食べてしまいました。結果的に同梱密封状態であった「ネスレ文庫」のアンソロジー「クリスピー物語」が読めるようになりました。本来帯となる部分は濃紺で印刷されており、「クリスピー物語 話題沸騰!! チョコレートと文庫本がひとつになった!?」「生まれ変わりたいと願う、すべての人たちへ――」「6人の作家による完全書き下ろしショートストーリー集」と書かれております。更に帯の背中の部分には「食べてから読むか!」とありますが、これはチョコの箱の方「読んでから食べるか!」に呼応しているものですね。

・まあ、別に重版がかかっているわけでもないのにあまり「話題沸騰」と煽るのはいかがなものかと思いました。また、我々のような読者層にとっては、「読んでから」「食べてから」の中間、即ち「食べながら読む」という選択肢もあると思うのですが(キットカットと異なり、最外部がクリスピーであることですし)、まあ、本を汚したくないので止めておきましょう。

・折角なので、作品を順次紹介しようと考えとります。執筆陣は鈴木光司、大石圭、牧野修、森山東、小林泰三、北野勇作。あいうえお順でないところが微妙だなーと思ったり。あと、全員が角川ホラー文庫に著作がありますね。まあ、ネスレ文庫プロジェクトそのものに角川書店が深く関わっているようですし、そう違和感があるわけではないですけれど。


06/07/01
・考えてみれば今年に入って規則正しい生活をしている。しているが、そのおおよそ一日のタイムスケジュールのなかにホームページの作成時間が含まれていないこと。更新が不定期になっているのは、更新内容作成時間をその規則正しい生活のなかで時間を捻出しないといけない。結局、それが問題なのだな。――と、一年くらいかけてようやく気付く。ましてW杯開催期間中ともなると更に。

・とかなんとかいっても、今年も折り返しですねえ。早っ。