MISCELLANEOUS WRITINGS
MISCELLANEOUS WRITINGS 今月の雑文


過去の雑文たち
07/03/29
・中入りのあと、再び桂雀喜さん登場。最初は拳法服だったのが今度はタイガーマスクの覆面、しかもお囃子は月光仮面だったりする。超ショートコント「仮面ライダーさん、なんの手紙書いているんですか?」「へんしん」。「ショッカー隊員さん、お湯加減はどうですか?」「イィーーッ!」の二席を披露して退場。むしろこれもまた、後から考えるに賑やかしにして、次の作品の布石だったりするから不思議だ。

・田中啓文さんと、次の作品の原作者である飯野文彦さん(素面)登場。山梨から自腹で来られた飯野さん、啓文さんの紹介によれば「酔っ払うと蛙のような動きをする」「ロフトプラスワンの菊地秀行さんのイベントでは、会場に遅刻してやって来て焼酎をラッパ飲みしてから舞台に上がる」など、凄まじい。飯野さん自身、テンション高く「大阪弁しゃべれます。何でも聞いてください」「したら何か言うてみて」「なんやねん」だとか。ただ、飯野さん自身は江戸落語の長らくのファンでもあり、落語そのものへの造詣は深いようだ。また、ノベライズを中心に五十冊から七十冊くらい(幅が大きいなあ)の著書があり、啓文さん曰く「この人のオリジナルの話、ほんっとイヤな話書くんですよ」「褒められると照れるじゃん」「褒めてないって」まあ、とにかくそんな感じ。

『戯作者の恋』(飯野文彦原作) とある長屋の大家を訪ねてきた並木五八なる若い男。出てきた鬼瓦のような顔をした大家と、昔のテレビネタを交えためちゃくちゃな会話を交わしつつ、長屋の奥の部屋を貸して欲しいという。しかしそのことになると大家の様子がおかしい。格安ならばまだとにかく、タダでもいい、長く居着いてくれるのだったら逆に金を渡してもいいなどと言い出す。貧乏で最近ろくなものを食べていなかった五八は、これ幸いとその部屋に住み着くことにした。

・五八は駆け出しの戯作者。転がり込んだ部屋で執筆をしていると、長屋の家主の娘でお菊と名乗る若い女性が突然現れ「お茶が入りました……」といってきた。瓜実顔で目がぱっちり。突然現れた美少女に驚く五八だったが、「おとっつあんにいわれてきました……」という彼女は、五八の書いた物語を覗き込んだり、夕方になると台所で夕餉の支度をしてくれたり。翌朝、大家が五八のところにやってくる。「何もなかったか? おかしいなあ」

・ある意味、長屋に女性が現れる……というパターン自体、よくあるネタではあるのだけれど、この作品良かった。お囃子のタイミングや八天さんの熱演、そしてメタフィクションの手法を巧みに取り入れた原作構成と、ひな形にして完成した落語作品となっていた。特に(これまた月並みな表現になるが)男女が互いに相手のことを思いやる気持ちが切々と伝わってくるのがまた良し。新作落語の人情話として、恐らく再演にかかることは間違いなさそうだ。ただ、一つだけ気になったのは江戸時代の大坂の話でありながらテレビネタ(仮面ライダーとか)はやはり似わない点。このあたりの小ネタについては、もっと普遍的なお笑いに徹した方が良かったように思う。(飯野さんにしても、八天さんにしても、逆にこのあたりにこだわりがあったのかも)。

・あとこの主人公についてもヒネリがあるのだけれど、それが最近読んだ作品とシンクロニシティがあって、それも驚いた。さて次回は5月31日、「第七回ハナシをノベル!!」には、満を持して森奈津子さんが登場されるらしい。もう一席は田中啓文さんが書く予定(未着手らしいですが)。今回も楽しかったし、次回もまた楽しみ。


07/03/26
・まずは3月20日に行われた「第6回ハナシをノベル!!」。今回の原作は飯野文彦さんと林譲治さんということで会場の入りはそこそこ。なんか関係者三分の一、常連三分の一、と初めての方三分の一といったバランスが出来つつあるような印象(数えたわけではないですけれど)。開演してまずは桂雀喜さんによる案内。月亭八天さんとは御近所どおしで、古典の名手・八天さんに稽古を付けて頂いた『住吉駕籠』は得意ネタ第二十八位にランクする……というような前振りを経て、まだ着替え中の八天さんを呼び出す間の悪さ(わざと?)。田中啓文さんも登場して八天さんとのトーク。回を進めるうちに段々と余裕が出てきたとのこと。スタートから丸一年、毎回二本新作ネタおろしをしているから都合十二本、次回でもう一周年です……といった話。さらに一作目の原作者・林譲治さんが登場。

・林譲治さんは(架空戦記等も含め)百冊以上の著書のあるSF作家。もともと林さんは「こんな電波系のメールが届いたよー」というメールを啓文さんに送ったところが、「ところで落語書きませんか?」と振られたのが原作執筆のきっかけだとか。ハードSFとはなんぞや? とか、今回の題名『ロボット医者』にちなみ、ロボットとは何ですか? アンドロイドとの違いは? といった質問を経て、唐突にロボット三原則について前説がある。ちなみに「人間の命令をきく」「人間に危害を加えない」「前二項に反さない限り、自分の身を守る」。後からわかるのだけれども、この三原則が『ロボット医者』の内容にも関わってくるわけで……。

『ロボット医者』(林譲治原作)  「山田さんの奥さん、交通事故で顔がめちゃめちゃになったらしいわよ」「それはかわいそうに」「でも手術で元の顔に戻ったわよ」「それはかわいそうに」……というような前振りから本題へ。メインの語り手は未来のお医者さん。もともと工作好きもあって患者の多くはロボット。さっきもロボットの五十肩を治療したところ。人間よりも最近はロボットの患者が多いなあ……としみじみ。そこへやって来たのはやっぱりロボット、しかも鳥取弁を使う。「あんた、ナマリがありますな」「いえ、身体は超合金ですが」 ちょっととぼけたこのロボット、本町のビル解体現場で働いているのだというが、カミナリが自分の身体に落ちて以来、一部の人間に対し「おかしなもの」が見えるのだという。診療してみたところ特に身体自体に変なことはないことがわかったが、その「おかしなものが見える」のは、ある特殊能力であることに医者は気付いて……。

・SFというよりも、SF風ショートショートのような奇想が混じる展開。なんともとぼけたロボットの味が、八天さんの話芸でうまく引き出されている。あと「チュィィィン」といった治療風景における擬音なども凝っており、このあたりもさすが噺家と感心させられた。ハードSF作家らしからぬ荒唐無稽な展開も、サゲに至って先の前振りにあったロボット三原則が活かされているのだ。SFなのに、落語らしい落語に仕上がっており楽しめる作品だと感じた。


07/03/23
・なにやら仕事とお楽しみが濃縮された怒濤の一週間でありました。おめでたい話あり、お久しぶりの人と会い、噂に聞いていた人と会い、でこの間に個人的には中国に行って帰ってきていたりします。一方でネットに触れる時間がほとんど無くなんとなく浦島太郎な状態です。さて、締めくくりは日曜日。ということで……。(告知がギリギリになってしまってすみません!)

3月25日(日) 
 第33回『名探偵ナンコ』 〜よみがえれ!探偵講談〜


 会場/本遇寺(JR東西線「新福島」・ 阪神「福島」下車、地下鉄2番出口から徒歩5分。JR環状線「福島」下車徒歩10分。福島区福島3-7-38)
  開場/18:00 開演/18:30
  料金/当日1500円

  出演/旭堂南湖「探偵講談 情死か殺人か」、「お楽しみ」
  ゲスト・芦辺拓先生(作家)「対談」

・最近、円熟の域に達しつつある探偵講談は日清戦争の頃の探偵苦心譚で、噂によると驚愕のラストが待ち構えているとか。さらに私生活充実中の芦辺先生も登場。以前は行っていたけれど最近お見限りのアナタ、是非ご参加を。最近の「名探偵ナンコ」は本流回帰中。充実した二時間が約束されていますよ。


07/03/18
・装いを新たに、MYSCON8、ついにこの週末より受付を開始しました。今回は昼の部、夜の部の二部制となっており、どちらか片方だけの参加も可能です。というか、今まで宿泊前提がネックになっていた方は是非昼の部だけでも参加頂けるとありがたいです。もちろん日中にお仕事などある方は従来通り夜の部へ。夜を徹してミステリについて語り合うことができますよ。


07/03/14
・正式の告知ですー。ただ今回の新作、内容の事前情報を今のところ入手できておりません。

・ 第六回 落語再生公開堂「ハナシをノベル!!」

 3月20日(火) 18時30分開場 19時開演
 入場料 当日2000円(当日券のみ)
 出演 月亭八天
 演目  「ロボット医者」(作・林譲治) 「戯作者の恋」(作・飯野文彦) 月亭八天×林・飯野のトーク(司会・田中啓文)
 場所 大阪市中央公会堂地下大会議室 場所はこちら

・今回は初めて火曜日開催になりましたが翌日が祝日ですので。


07/03/10
・長らくお世話になっていた、fuku@kyougoku.comのメールアドレスが完全に使用不可になりました。これはもちろん転送アドレスで、このサイト上でもちょうど一年ほど前に使用停止の案内をした筈ですが、結局その後一年間は転送を受け付けてくれていた様子。しかしとうとうつい最近その転送が止まりました。(spamの大幅減少で判明)。アドレス記載残しがないかサイト内点検を実施しています。以前(というのは大昔)に比べ、インターネット上にメールアドレスを公開することのメリットよりデメリットの方が大きくなっている以上、無理に連絡先を記載することにこだわることもないかなー、とも思うのですがどうでしょう? 弊サイトそのものは旧態依然だしだらだらと継続しているだけですが、ネット文化の変化による影響は多少ながらも受けざるを得ないわけで。


07/03/05
・少し前に本を置くスペースがないとか書いていたような気もするが、そういう時期に限ってどかどかと買った本や譲って頂いた本が届く。でも結局は根が好きなもので、きゃーと言いつつ着々と部屋に積んでゆく。ほとんど饅頭恐いの世界ですな。

・こうやって部屋のスペースを占めてゆく本の増殖を眺めるに単行本という嵩張る存在は実は贅沢品なのかなー、などとも考える。所有する”物”の数を減らしたシンプルな暮らし。それは基本は電子出版。次いで文庫。どうしても欲しいけれどそれでしか手に入らないから単行本を入手する――なんて将来的には有り得る姿かも。自分にはとても耐えられないけれど。だって饅頭恐いし。


07/02/25
・長らく役目を果たしていなかったことを反省。珍しくe-NOVELS書評を書いてみた。珍しくなってはダメですね。とりあえずシリーズ一連を最後までやってしまおう。

野崎六助「夜の誘惑 黄昏ホテルシリーズ第15回」  e-NOVELS 定価100円(税込)17P 858KB 販売ページ

この作品はもちろん小説だし、小説の著作も数多くあるのだが野崎六助の場合、第45回日本推理作家協会賞を受賞した『北米探偵小説論』をはじめ、その評論家としての背景を語らない訳にはいかない――と思っていたら、e-NOVELSには田中博氏による野崎六助について《批評篇》なるコラムがあることに気付いた。さらに野崎六助について《小説篇》も合わせて読むとカンペキ。少なくとも、ひとくちで紹介することが難しい作家/評論家である。
とはいえ、本作そのものは幾つもの要素があるとはいえ、基本的にはハードボイルドをベースとしたすっきりとした作品だ。

 ある組織から逃げ出し、追われる身となった”おれ”。たまたま投宿した黄昏ホテルのセミスウィートの部屋のなかで、追っ手となる刺客が近づく気配を感じ取る。これまでおれは、刺客たちを返り討ちにし、それをもって組織に対するメッセージとしてきた。大口径の銃で吹き飛ばされた死体の数々。しかし最近は相手の腕が悪すぎる。今回の相手は三人。返り討ちにすることも恐らく容易だろうが、考えたおれは奴らを出迎えるのをやめ、尻尾を巻いて逃げ出すことにした。何しろ、おれにはとっておきの逃げ道が用意されているのだから――。鏡だ。
 かつて、やはり追っ手と戦う途中で負傷し、意識が朦朧として逃げ込んだ裏道にあった大きな鏡。その鏡と同じものが、なぜかこの黄昏ホテルにある。その鏡の中へ、おれは逃げ込むことができるのだ。奴らにちらりと姿を見せ、そしておれはいなくなる。鏡の中に飛び込んでしまえば、退散する、消える。しかし誤算ができてしまった。鏡のなかにいるおれが、おれの心の中に語りかけてきたのだ。「こっちに逃げてくるつもりなのか」――そいつは言った。

凄腕の殺し屋の心のなかに生じた一抹の疑念。鏡のなかの”おれ”は一体――?
 鏡の中がパラレルワールドになっているという設定の物語は、小説以上に映画などに多いように思う。というのはやはり視覚的に訴えるところがあるからだろうか。他にも一方から見ると鏡、でも反対側からみると素通しのガラスであるマジックミラーであるとか、大掛かりなマジックでも視覚の錯覚を起こすために鏡という小道具はしばしば様々な局面で用いられる。鏡には不思議な力がある――という発想を、微妙にその考え方の常識から外しているのが本作の特徴だ。オチというか結末については、ある程度予測がつくことはつくのだけれど、その鏡を使うことで一人称の主人公の思考や感情を複雑に演出することに成功している。

この書評の続きはこちらへ!


07/02/24
・二つの出版社を跨って十年、三十六冊もの刊行を果たした『異形コレクション』。そのタイミングを記念して刊行された『異形コレクション讀本』(光文社文庫)を購入。……今読んでいるところなのだが、これが意外とというか予想通りというか面白い。従来通りの『異形コレクション』同様の厚みに近い装幀で、『異形』そのものがいわれていた以上に、中身は小説雑誌みたいな感じ。インタビューや対談、評論に作品がバランス良く入っていて、読んでいて飽きない。

・『異形コレクション』自体、短編集は売れない、アンソロジーは売れないという常識を覆してここまで続いたシリーズであり、なんか当たり前のように刊行されているのを眺めていた(実際、『異形コレクション』として手に取ったのはたった四冊しかない)わけなのだけれど、改めてその実績や凄さを感じさせられる。むしろ各作家の短編が『異形』に収録されていても、いつかは短編集に収まるだろうと(実際かなりの作品を短編集で読んだ)楽観していたところがある。だが、この『異形コレクション讀本』を読むうちに、やはりこのアンソロジーのかたちにこだわって読むのが正解なのかもしれない、と思い直させられた。

・改めて集めてみたいな……とふと思う。問題は文庫とはいえこれほどまでの作品量を安置するスペースが確保できるかどうか、だ。


07/02/18
・トクマノベルズのこの時期の刊行傾向を前後にわたってみて調べてみたのだけれど、結論からいえば他社ノベルスとやはり同傾向にあった。ただ、田中芳樹『銀河英雄伝説』シリーズの初出がこの時期のトクマノベルズなのは突出している。定期的に大藪春彦作品を復刊していたことも特徴か。全般的には、伝奇SF系統(笠井潔『巨人伝説』とかもあり)と、ミステリ作家だとビッグネーム(赤川次郎、山村美紗、西村京太郎、斎藤栄……)が並んでいる感じで、全般を並べてみたところは伝奇、SF、ミステリの三本立て。確かに若年層を標的にできるような作品はあまり無く「ミオ」の刊行自体は頷けるところがある。

・この1987年のトクマノベルズ刊行分で個人的に気に掛かるのは、中町信『榛名湖殺人事件』だとか、鷹見緋沙子『悪霊に追われる女』、そして多島斗志之『ソ連謀略計画を撃て』あたり。


07/02/17
・1987年9月。客観的にみてこの月末にはもうひとつ触れておく必要のあるイベントがあったのだった。「トクマノベルズ・ミオ」の創刊である。当時のトクマノベルズが、より若い読者層を狙って新しいレーベルを立ち上げた……のだが、結局三十二冊を数えてなし崩しに終了といった経緯はよしだまさしさんが「ガラクタ風雲」にまとめられているので、興味のある方は参照頂ければと思う。(ミステリファンにとってはシリーズ四冊のうち文庫が一冊だけで止まり、竹本健治収集の鬼門となっていた『バーミリオンのネコ』シリーズがこの叢書で刊行されていた。後にハルキ文庫で刊行されるまで必死で集めた記憶が)。

・この時、レーベル立ち上げのため一挙刊行された八冊が以下。

 『天の星 地の影』 水城雄
 『ドリーム・オン 境界線でつかまえて』 岬兄悟
 『死に急ぐ奴らの街』 火浦功
 『名古屋1997』 高井信
 『肉感春売人ニュース活人事件』 桑原譲太郎
 『機械たちの時間』 神林長平
 『コンタクト・ゲーム』 大場惑
 『人狐伝』 石飛卓美

・それとは別に本家のトクマノベルズからは一冊。

 『幽霊軍団』 山田正紀

・〈スーパー・カンサー〉シリーズの最終巻にあたるようです。ただ本家のトクマノベルズにせよ、ミオにせよそこは徳間書店。いずれにせよSF系統が強い印象。


07/02/15
・……とまあ、落語に講談と楽しんできたのももう二週間も前のこと。なので(もう本人も忘れかけている)1987年9月、『十角館』周辺の回顧を再び試みてみる。

・講談社ノベルス、カッパノベルスときて次に調べたのは意表を突くかカドカワノベルズ。ちなみに前二つはノベル”ス”で、カドカワはノベル”ズ”ですよ。(これをクイズにしていたのは吉村達也の……『日本国殺人事件』だったか。違ったらごめんなさい)。

 『虹色の青春祭』 森村誠一
 『結婚以前』 赤川次郎

・え、二冊? んー、どうやらやっぱり二冊だけらしい。しかも森村に赤川と超ビッグネームである。両方ミステリだとは思うがあまり参考にならないか。ちなみにこの年のカドカワノベルズのラインナップをみてみると光瀬龍『平家物語 巻之6』、荒俣宏『帝都物語 8 未来宮篇』、藤川桂介『宇宙皇子 天上編4』、栗本薫『魔界水滸伝12』だとか、伝奇SFのシリーズ作(しかも途中)が目立っているような印象。加えて手塚治虫原作の『火の鳥シリーズ』だとか、永井豪原作『凄ノ王伝説』などのノベライズ、さらには富野由悠季『オーラバトラー戦記』、鎌田敏夫『男女七人夏物語』などタイアップ系……と、時代と話題を追ったと思しき作品も散見される。

・現在にも残るミステリという意味では高木彬光が『姿なき女』『七福神殺人事件』、島田荘司が『ひらけ! 勝鬨橋』をこの年、同ノベルズより刊行しているのが目立つくらいか。結局やはりミステリも発表される状況にはあったものの、より一層、伝奇小説が強い時代だったといえそうだ。


07/02/08
・↓というようなストーリー。つまりはこの保義の死の真相は……? というのが探偵講談たる所以であろう。しかも今回のチラシには南湖さん特別サービス(?)の「主な登場人物」があり花岡警視(老警視)、徳永敬三(老探偵1)、福本喜久造(老探偵2)、水田藍介(老探偵3)と、犯人候補よりも人数が多いのではないかと思われるほどに探偵側に登場人物が割かれているのだ。もちろん、犯人当てがここからはじまるのだと期待していると……。

・それなりにトリックというか欺瞞はあってこの時期の探偵講談に比べると比較的まともな犯人像が提示される。何よりも意外なのは、推理役として機能している探偵が三人名前があるなかの実はたった一人で、後の二人は酒飲んでるばかりでほとんど何もしなかったことか。とはいえ、その唯一の探偵が開陳する推理内容が突飛ではない代わりに非常にオーソドックスであり、原作が明治期であったことを考えると驚異的なまでに整った作品だといえるだろう。

・終了後の対談では、最近しっかりと探偵講談を発掘してくる旭堂南湖さんに対し、芦辺さんが専ら聞き役に回り、その裏話を聞き出す……といった「名探偵ナンコ」初期の頃とはまた別の光景が展開される。また芦辺さんからあるイベント報告があり、会場全員が拍手を送る一幕も。なんとも良い空間を楽しませて頂きました。次回はまた三月の第四日曜日ですね。


07/02/06
・中入り後、本日の『名探偵ナンコ』のメイン「探偵講談・貴族の謀殺」(原作・竹葉散人)。

・明治二十九年のこと。向島に久保という名の子爵がいた。当主の保夫は亡くなっており、その先妻の息子に保義がおり、現在は当主となっている。この保義は人柄も良く、当主の後妻の息子・保近とも仲良くしており家内は安泰にみえた。その保近、一時は誰に誘われたか芸者遊びにうつつを抜かす時期もあったが、家族や下男の必死の訴えに耳を貸し、今は勉学に励むようになっている。そんな折り、保義が病に罹った。胃病である。子爵家出入りの医学士で先代に多いに世話になった辺見が、保義を診断、静養をすれば良いという。保義は良い機会と熱海は相模屋に宿を求め、義母の春江、その春江の叔父・丸田角太郎、そして下女のお静と共に長逗留することにした。辺見医師は時々東京から保義の様子を見に通ってくれる。

・11月、義母が東京に一時的に帰るのと入れ替わりに、学業の方が休みとなった保近が熱海に遊びにやって来た。秋の月を眺めに伊豆山に行ったりとしている。その日、保義は普段服用している薬に違和感を覚えた。何か苦いように思えたのだ。弟がその薬を舐めてみると、やはり苦いように思える。使用しているクミチンキが新しいとこうなるのでは、というがよくわからない。結局、叔父の角太郎が薬局へ走って薬を取り替えてきたので、改めて飲んだところ問題はないようだった。

・しかし五、六日経過すると保義は身体の節々に痛みを感じるようになってきた。地元の医者に見せると脊髄病だという。しかし、その痛みは徐々に烈しさを増してきて……。ある夜、子爵は宿のなかで突如立ち上がると苦しみだし、そのことに気付いた角太郎が医者を呼ぶ甲斐もなく、息を引き取ってしまったのだ。


07/02/03
・『ハナシをノベル!』の二日後には『名探偵ナンコ』。双方のイベントが奇数月の後半に行われるため、どうしても日程が近くなっちゃいますね。しかし今回の『ナンコ』も良かった。

・今回で第32回を迎える『名探偵ナンコ』。前回は芦辺先生外遊のため、田中啓文さんが特別ゲストであったけれど四ヶ月ぶりに芦辺さんが復活。ちょっとそわそわされている。マクラは時節柄(?)不二家の話から。ペコちゃんが穴に落ちたらどうなる? で爆笑。続いて現在も週二回続けておられるラジオのレポーター話。映像では見る機会がないが(当たり前だけど)、現在は機器も進化していて小さなマイクと携帯電話だけでインタビューが取れるらしい。その結果、普通の格好した南湖さんがマイクを突き出しても、多くの人が話したがらずに無視していくため、取材が大変らしい。しかもノンアポだったり、アポイント取っていっても喋ってくれなかったり。更に放送と関係ないところで延延と喋るご老人がいたりとコボレ話が面白い。

・今回の演目はシンプル。古典講談&新作探偵講談。まずは『太平記より 楠木と泣き男』。序盤の背景説明が見事に講談口調だったこともあり、きちんと背景説明が出来ない……。要は足利尊氏と対立していた楠木正成が赤坂城で兵を集めようと「一芸に秀でたる者を召し抱えよう」という立て札を出した。それに応じて続々と人々が集まってくる。ある者は木登りが得意だといって採用され、またある者は水練の達人だということで召し抱えが決まる。そんなところにやって来たのが杉本村の佐兵衛なるあまり冴えない男。佐兵衛がいうには、自分は言葉一つで相手を泣かせたり、怒らせたりすることが出来るのだという。首尾良く受付の兵卒を怒らさせた佐兵衛は、ぬけぬけと正茂ら幹部連へとお目通りへ。そこで彼は並み居る人々を全員泣かせてみせると豪語、事実ある話をしてほぼ全員の瞼を涙で濡らすのだがただ一人、生まれて「おぎゃー」と言って以来、一度も泣いたことがないという楠木家一の剛の家来(やおべっとうけんこう? 字が……)だけは、どうにもこうにも泣かすことが出来なかった。彼を泣かせられなかったら自らの首級を差し出すと約束していた手前、首を斬られそうになった佐兵衛は、自分がなぜこの戦いに身を投じようとしているのかを語り出した……。

・さすが古典。昔から練られていることがよくわかる展開と、旭堂南湖さんの(最近とくに)得意としているであろう世話物の語りが絶妙の雰囲気を醸し出していて、素直に講談らしい講談として楽しめた。特にこの佐兵衛というキャラクタが、どこか南湖さん自身とも重なるような気がして、その分演技にも身が入っているようにみえるのが良い。また随所に笑いが挿入されていて演芸としての面白さもある。


07/02/01
・中入り後は牧野修さんが登場。無口な牧野さんと苦労しながらコミュニケーションを取ろうとする田中啓文さん。「今回は落語は落語でも怪談と違ってホラーですね」「僕、喋るの嫌やし」……。それが何故か立ち芸に見えるのはなぜだろう? 「この人の書く嫌な話は嫌にもほどがある。なんでこんなん書くの?」「……んー、心かなあ」

・「この前メールが来まして、こんなん書いてありました。『あなたの小説は二度と読みません』……」「確かに、なんでお金払ってあんな嫌な思いをしなきゃならんねん」という感じでマクラは続いていくのだが、この後は実話怪談とフィクションのホラーの違い、その中間点という話は結構ためになった。本当にあったら怖いけれど、実際にあったら笑ってしまうとか、人によって「そんなんあるわけない」で終わってしまうとか。読者によって受け取り方が異なるためホラー小説の書き方は難しいというような話。なるほどねえ。

・さて、『百物語』。八天さんが登場して直後、舞台は暗転。田中さんが仏具屋で買ってきたというローソク(電池式)が演台の上に灯され、ぼんやりと八天さんの顔が下から照らされる。暗闇で懐中電灯を顔の下から当てる、あれと同じ感じですね。そこからはじまるのは……。

・怖い話が好きな”きーちゃん”。彼のもとには怖い話が好きな友人たちが集まってくる。今日は「百物語」の日。もちろん、怖い話を参加者が一つずつ語り、終わった後にローソクを一本一本吹き消してゆく。トップバッターは会社員風の男。仕事の帰りに帰宅するため自宅の近所を歩いていたところ前から一人の男が歩いてきた。しかしその歩き方は異様で何かゆらゆらとしている。酔っ払っているのではなくどうもかげろうのような感じがする。その男が急に苦しみだしたかと思うと……。

・次なる話は主婦の話。彼女が新婚当時に住んでいた安アパート。自分は歯科衛生士で夫は会社の営業マン。先に帰った彼女が家で一人でいると毎晩ハイヒールで歩き回るような音が天井から響いてくる。旦那はネズミだというが。ある時、夫がその天井裏を覗き込んでみると……。そして勉強部屋から外の空き地での喧嘩を覗いていた受験生の話、合コンで暗い女の子と知り合ったナンパ風の男の話と続いていく。さらにそして最後のローソクが消えるときに何が起きる……?

・雰囲気満点。確かに笑いはほとんどなく観客もしん……とせざるを得ないという反応。しわぶきさえも憚られるような緊張した空気が会場を覆う。後で牧野さんによれば「反応がなくて何か嫌な気分だった」ということながら、小生は感動させて頂きました。恐らく参加された他の方も同じような気持ちだったのでは。活字の怖さと映画の怖さの中間、想像力がかき立てられるというか、ライブならではの独特の恐怖感がすばらしい。特に作中に語られる二番目の話はシュールでもありそれでいて怖さが立ち上ってくる秀作です。

・次回は、フロム東京シリーズで森奈津子さん、飯野文彦さんいずれかの作品、ないし両方(らしい)。当日の段階ではまだ作品が上がっていないとのことではっきりした予告はありませんでしたが、また近くなってきたところで発表されるものと思われます。


07/01/30
・この週末、第5回「ハナシをノベル!」と第32回「名探偵ナンコ」に行きました。双方のレポートを書きます(時間がかかるかも)。

・まず「ハナシをノベル!」の方。平日開催二回目ということが理由か、牧野浅暮人気なのかこれまでで最高の入りだった模様。まずは桂ひろばさんが登場して会場での注意事項と、「2月11日、読売テレビ!」を連呼。何かざこば師匠のための蜂蜜を海外まで行って取ってきたという話(番組で見られます)。そして田中啓文さん登場。会場の入りがマクラの話題となるとすかさず「頂点は極めた、後は下がるだけ」と凄まじい突っ込み。月亭八天さんはすぐに舞台裏に戻って代わりに浅暮三文さんが「こんちゃー」と軽いノリにて登場する。元もと浅暮さんには渋谷の小劇場にコントなどを書いていた時期があるとのこと。「ここでコントやりましょか」とか「演りながら書くというのはどないです」と微妙な呼吸。かつて大阪に居た頃は大阪の堂島の広告代理店に通勤していた時期もあったとのこと(「米相場やってはったんですか?」という突っ込みあり)。営業がライターを兼務するという仕事。出身の浅暮さんのこのころの文章も「浅暮三文大全集」を出したら収録されるのではないか。「尋ね人」「ホール係募集」。

・さて、その浅暮さんの作品「動物記」。マクラは大阪新世界は飛田商店街の、おでんで一杯飲れるアラレ屋の話。八天さんの寄席の打ち上げでその店を使った時、おでん以外の乾き物を所望したところ……。そして本編。

・植木職人のポン吉は動物が大好き。今日も動物を連れて、動物のことに詳しいシートン博士のもとを訪ねます。「シートン先生! シートン先生!」「なんだいポン吉」「実は、犬を拾いましてん」「君は犬はもう十匹、猫十五匹も飼っているじゃないか。インド人の人口よりも多い」「いや、拾った犬が変わっているんで何を食べさせたらええやろかと思って」「どこが」「鴻池さんの屋敷の庭で、松の木に梯子をかけて仕事しとったんですわ。振り返ると視線を感じて。振り返るとそこに犬の顔があったんです」「どこにいるんだね、その犬は」「表に繋いであります」……。

・とまあ展開は予想できるかもしれませんが、その端端に浅暮さん的センスが織り込まれる作品。やはり浅暮さんと犬といえば、ブラッキーなる固有名詞も登場したことは個人的にもツボ。全般には八天さんによる噺に関する種々の工夫とテクニックがちりばめられている印象。最初からテンションの高い”お約束”の展開のなかで止めはどこまで行き着くのかという点が注目されたかな。発想が素晴らしく落語のテンポとマッチしているのでバージョンアップしてくうちにさらに面白いネタになっていくのではないかと思われました。


07/01/26
・ちょっと切り口というか視点を変えてみる。1987年9月、即ち『十角館』の月、別の出版社から刊行されたノベルスはどうだったか。とりあえずミステリにおいては現在もう一つの雄(?)である光文社カッパ・ノベルスはこの月、こんなラインナップで刊行していた。

 『完全犯罪の使者』 森村誠一
 『58便、応答せよ』 福本和也
 『在外捜査官』 島田一男
 『殺人指令千分の一 俺は秘密諜報員』 胡桃沢耕史
 『黒豹必殺  特命武装検事黒木豹介』  門田泰明

・感覚的には伝奇やSFは無く、ミステリー系のエンターテインメント小説が並んでいる印象だ。何となくではあるが、読者として想定されている層も微妙に現在よりも年齢層が高そう。カッパのこの前後のことを詳しく書いてもあまり意味がなさそうさだが、調べたので書きだしておくと、前月である1987年8月に作品が刊行されている作家が、西村寿行、島田荘司、斎藤栄、菊地秀行の四人。島田荘司は『展望塔の殺人』である。ちなみにカッパでは、これよりかなり以前から島田荘司はカッパノベルスより吉敷シリーズの初期作品を発表している。1987年10月の作家は、山村美紗、西村京太郎、小杉建治、大谷羊太郎だし、11月の作家は山崎洋子、深谷忠記、西村寿行に赤川次郎。ただ12月には再び島田荘司の『灰の迷宮』、そして東野圭吾の『11文字の殺人』なども出ており、カッパ・ノベルスはこの時期に限っていえば講談社ノベルスよりもミステリ寄りであるように見受けられる。

・とはいっても作家名をつらつらと見るに、全体的に”大物感”が漂っている。(売れ筋ともいう)。


07/01/25
・ちょっと昔の講談社ノベルス話の続き。87年分は紹介したので、とりあえずしょっぱなの1988年1月刊行分を紹介してみる。

 『小京都連続殺人事件』 山村美紗 (?)
 『津軽(アリバイ)海峡+−の交叉』 深谷忠記 (書下ろし大トリック・アリバイ崩し)
 『流浪(サスライ)期』 小嵐九八郎(書下ろし青春サスペンス&エロス)
 『不倫の戦士たち』 阿部牧郎(サラリーマン官能小説)

・……と刊行傾向はやはり読みにくい。というかこの近辺の講談社ノベルスは、結局はトラベル(地名)付きミステリ、既に名を成している乱歩賞系の大家による作品、伝奇+SFシリーズ作品、さらには官能系作品といったところが刊行の中心を形成していたということらしい。まさに一般サラリーマンが出張の時間つぶしに新幹線で読み終わる……といった軽めの作品が圧倒的に多い。

・ただこの88年、講談社ノベルスは確実に後の新本格ミステリのムーヴメントへの移行を開始する。『十角館の殺人』でデビューを果たした綾辻行人は館シリーズ長編をこの年は、なんと二冊も刊行する(今では想像できない贅沢)。『水車館の殺人』『迷路館の殺人』。さらに斎藤肇の三部作の一冊目にあたる『思い通りにエンドマーク』。息の長い活躍がこの段階では予想しづらかった歌野晶午『長い家の殺人』。さらには法月綸太郎『密閉教室』といった、それまで実績のなかった(そしてこの後のミステリシーンを担う)作家が次々とデビューしてゆく。この時期に後に「新本格」と称されるブームの基礎が着々と固められつつあった印象だ。

・他にもこの年には、島田荘司『火刑都市』(『占星術殺人事件』の講談社ノベルス版は'85年刊行)、皆川博子『聖女の島』、泡坂妻夫『花火と銃声』といったところが刊行されている。本格ミステリそのものが見直されつつあるような動きが感じられる。

ただ、この'88年当時の他の講談社ノベルス作品をつらつらと眺めても、圧倒的なのはまだまだ西村京太郎や山村美紗、森村誠一といった乱歩賞系ビッグネームであり、または菊地秀行や竹島将といった伝奇バイオレンス系統、さらに旅情ミステリ等々が全体としては多数派を占めている状況だ。明らかな変化をみせるのは、やはり90年代に入ってからということになる。(1990年くらいから、だいたい月に一〜二冊は「新本格」系統及び島田荘司や、当時は本格ミステリ指向の強かった東野圭吾といった作品が混じるようになってくる)。
07/01/20
・ミステリ・SF専門のネット古書店・ジグソーハウスさんのセール、第二弾が開始されました。今回は新書ノベルス・文庫・雑誌・雑本・特選品コーナーの本が50%オフ。金額をある程度まとめる必要があるのがもしかすると単行本より大変かもしれませんが、「テーマに沿ってまとめ買い」を考えておられる方などはこの機会をお見逃し無く。

・もう一つ告知。

・ 第五回 落語再生公開堂「ハナシをノベル!!」

 1月26日(金) 18時30分開場 19時開演
 入場料 当日2000円
 出演 月亭八天
 演目  「百物語」(作・牧野修) 「動物記」(作・浅暮三文) 月亭八天×牧野・浅暮のトーク(司会・田中啓文)
 場所 大阪市中央公会堂地下大会議室 場所はこちら

・「百物語」(作・牧野修) 怖〜い話を一つするごとに、ふーっ……。吹き消されていくローソク。すべてを語り終えた時、本物の怪が現れる! 背筋も凍る、ホラー落語!! 

・「動物記」(作・浅暮三文) 長屋に住む植木職人のポン吉は生来の動物好き。捨て犬を拾ったと言っては、動物学者シートン先生の元を訪れるのだが……。

・以上はチラシによる紹介文。牧野さんの本格ホラー落語に加えて浅暮さんが関西初登場。トークは間違いなく盛り上がるでしょうし、非常に楽しみ。事前の申し込みも不要で、当日ふらりと来てくだされば入れます。


07/01/19
・『十角館』同期の『南紀殺人 海の密室』を読了。題名通りのトラベルミステリー。一応確かにコアにトリックがあって、そこに至る手掛かりも文中に仕込まれてはいるのだが、本格ミステリとしてはちょっと評価しづらい。(密室トリックとしてはむしろ「あちゃー」と思う)。むしろ「凝ったトリックなぞ不要、芸能界という派手な世界の表裏を旅情を混じえてに描きなさい」……という時代の要請に沿って執筆された作品なのかも。二時間ドラマが文章化されたようなイメージなので誰にでも取っつきやすいことは取っつきやすいのだ。長井氏が当時、出版界にてどのような状況にあったのかは不明だが、あの皆川博子さんですらノベルスではトラベルミステリーの執筆を強制され、それを受けるしかなかったというエピソードが思い出された。


07/01/15
MYSCON8、開催日時決定 初の昼・夜開催ですよ。4月開催も久しぶり。2007年4月21日(土) 夜 2007年4月21日(土)夜〜22日(日)朝。


07/01/14
・まだ調べているので例の話題が終了したわけではないのですがいろいろお世話になっているので。

・先週の末より、インターネット古書店の老舗・ジグソーハウスさんが「御来店数100万人突破&ネット古書店開業10周年記念」の第一弾として、国内・海外・SF単行本関連の50%オフセールを開催してます(含むハヤカワミステリ)。ホントは今日(14日)までだったのですが、どうやら数日延長されるようですのでご存じなかったという方は覗いてみてはいかがでしょうか? (また近日中に新書や文庫も対象になるはず)。

・ご来店数100万人というのはまあサイトを継続していれば達成もできるでしょうけれど、最近は競争も厳しくなってきたネット古書店専業でコンスタントに更新しながら十年続けてこられたという点に敬意を表したいです。この店がなければ手に入らなかった本も個人的には多数。


07/01/22
・これも告知ですよ。

・1月28日(日) 次の週末は奇数月の第四日曜日。すなわち恒例の探偵講談のお知らせです。

 第32回『名探偵ナンコ』 〜よみがえれ!探偵講談〜

 会場/本遇寺(JR東西線「新福島」・ 阪神「福島」下車、地下鉄2番出口から徒歩5分。JR環状線「福島」下車徒歩10分。福島区福島3-7-38)
  開場/18:00 開演/18:30
  料金/当日1500円

  出演/旭堂南湖旭堂南湖「探偵講談 貴族の謀殺」、「楠木と泣き男」
  ゲスト・芦辺拓先生(作家)「対談」

・講談の方、ちょっと珍しい新作ネタが披露される模様。さらに対談は前回は芦辺先生ご不在で田中啓文先生が特別ゲストとしていらっしゃっておられましたが、芦辺先生が四ヶ月ぶりに復活(とはいっても一度スキップしただけですが)。果たしてどんなお話が聞かせて頂けるのでしょうか。こちらも楽しみだなあ。


07/01/13
・ここまできたので1987年、年内分最後の12月についても掲載しておく。

・『十角館』翌々月、1987年12月。

 『武蔵野殺人(ルート)4の密室』 水野泰治(書下ろし本格推理! 意外な結末)
 『戦士誕生』 竹島将(書下ろしファントム戦士伝説4)
 『殺意の朝日連峰』 太田蘭三(書下ろし山岳渓流推理)
 『破魔神紀 3 劫火の巻』 志茂田 景樹(長編スーパー伝奇ロマン)

・やっぱり強い伝奇SF。(あくまでイメージでしかないのだが、伝奇SFが書き下ろしで発表される場合の主の媒体は、ノベルス系新書だったということか)。

・ということで、1987年後半の講談社ノベルスの傾向をみてみたわけだが、それはそのまま当時のエンタメ小説業界状況の一端(あくまで一端。全貌などではないですよもちろん)を示しているように思われる。また、ノベルス巻末広告を眺めていると”本格”という言葉自体があまり使われていないことに気付く。「新本格」という言葉は、笹沢左保だとか登場したこれより以前にも使われていた時期があるけれど、それ以上にまず「本格ミステリ」という言葉自体がこの時期ではあまり一般的ではなかったようだ。  代わりに使用されているのが「本格推理」。まあ、こちらはこちらで今なお使われている言葉だけれど。ただ――、その「本格推理」ですら、この時期の講談社ノベルスにおいてはほとんど見られない(使われない)言葉のように見受けられる。

・その観点でいえば1987年の講談社ノベルスの巻末広告で「本格」という言葉が使用されていたのは下記の作品のみ。

 『十角館の殺人』 綾辻行人 (書下ろし本格推理・大型新人鮮烈デビュー)
 『奥秩父狐火殺人事件』 梶龍雄 (書下ろし伝奇本格推理)
 『裏六甲異人館の惨劇』 梶龍雄 (書下ろし本格トリック犯人探し)
 『もしもお前が振り向いたなら』 笹沢左保 (本格推理鮮やかなドンデン返し)
 『占星術殺人事件』 島田荘司 〈長編本格推理)

・「犯人探し」という言葉が使われているところをみると、フーダニットという言葉が人口に膾炙するのももっと後ということになるのかな。


07/01/11
・さてとりあえず87年9月以前の講談社ノベルスはよくわからなかった(いばるなよ)。では『十角館』刊行以降はどういう推移を遂げていったのか。まずは翌月。1987年10月に刊行された作品はこんな感じだった。

 『寝台特急六分間の殺意』西村京太郎 (新トラベルミステリー)
 『ヤバ市ヤバ町雀鬼伝 2 ここが地獄の一丁目編』 阿佐田哲也 (新麻雀小説 ここが地獄の一丁目編)
 『エイズ街の連続殺人』 和久峻三 (?)→和久は巻末広告に出てないのでわからないが何となく想像が……。
 『愛して盗んで』 辻真先 (青春トラブルミステリー)
 『黒衣の略奪者』 竹島将 (書下ろしファントム戦士伝説3)
 『夢魔の嗤う夜』 井上淳 (書下ろしハードボイルドミステリー)

・まずはノベルスの帝王・西村京太郎のトラベルミステリー。そして存命だった色川武大、つまりはギャンブル小説のペンネームである阿佐田哲也による麻雀小説。さらに辻のユーモア系のミステリ、伝奇、ハードボイルドと各方面のニーズを満たそうというような意図が(何となくだが)感じられるラインナップ。但し、少なくともいわゆるがちがちの本格作品は『十角館』の翌月には刊行されなかったということのようだ。

・そして、更に翌月、1987年11月の刊行分はどうかというと。

 『星乃国邪神伝説』 紀和鏡 (書下ろし伝奇ミステリー)
 『さらば黒豹  特命武装検事黒木豹介』 門田泰明 (特命武装検事黒木豹介)
 『純情可憐殺人事件』 赤川次郎 (ユーモアミステリー)
 『闇の太守 2 御贄衆の巻』 山田正紀 (?)←戦国伝奇ロマンですけどね。
 『超人類生誕秘録 3 紅蓮の巻』 谷恒生 (長編伝奇オカルトバイオレンス)

・うわー、黒豹ですよ。こんなところで見かけるとは。ま、それはそうとして、この月はどちらかというと伝奇系統が強めに出ている月のようにみえる印象。赤川次郎のユーモアミステリは、前月の辻と同じような位置づけか。この頃の山田正紀さんはバリバリの伝奇SF作家として登場している感じ。(ミステリも既にこの時期には書き始めているはずですが、『人喰いの時代』とか。但し本格ミステリに本腰が入るのはこれから数年の後のこと)。

・特にテーマがない月はエンターテインメント各ジャンルのバランスを重視してノベルスを刊行していたのでは……というのが取り敢えずの仮説。少なくとも本格系の作品が積極的に刊行されるのはもっと先のこと。


07/01/09
・↓の月は、偶然テーマが揃ったのではなくむしろ当時の講談社ノベルスで年一回くらいの割合で行われていた「トラベルミステリー特集」の結果だったのでは、という指摘を頂きました。なるほどー。その可能性が高いですね。

・こうなったら、更に気になって気になって夜も眠れなくなりそうなので、『十角館』刊行の前々々月、1987年6月もついでに調べてみた。

 『東京インフェルノ』 和久峻三 (?)
 『白夜の虹  犯人はこの中に』 森村誠一 (本格ミステリー犯人はこの中にいる)
 『成城官能夫人』 南里征典 (長編サスペンス&エロス)
 『六本木戦争  純愛物語 2』 桑原譲太郎 (書下ろし純愛物語2)

・乱歩賞作家が二人。和久の作品はどうやらハードボイルドアクション+陰謀ものの模様。一方の森村は、森村らしいどろどろした世界観のもとで行われる犯人当て。さらいエロスと純愛って何なんだよーーーー!

・ちなみに1987年5月は、西村寿行月間だったらしく『赤い鯱』『黒い鯱』『白い鯱』の三冊同時刊行ときたもんだ。

・1987年9月以前の講談社ノベルスの傾向と対策、及び結論。わかるようでいて。でもやっぱり。よくわかりません。


07/01/08
・本日寄った古本屋でたまたま'87年9月刊行組の一冊、長井彬『南紀殺人 海の密室』を発見して即購入。近々読みます。長井氏の乱歩賞受賞作、『原子炉の蟹』は社会派+本格の良作だった記憶があるのだけれど、その後どんな作風になっているのかそれはそれで少し楽しみでもある。

・で、昨日の疑問の続き。

・この頃の講談社ノベルスは、シリーズ作品、しかも伝奇SF系統に力を入れていたのか?? さらに気になって『十角館』刊行の前々月にあたる1987年7月も調べてみた。

 『大阪国際空港殺人事件  税関検査官・陽子の推理』 山村美紗 (?)
 『桜島一〇〇〇キロ殺人空路』 本岡類 (書下ろし究極のトリックミステリー)
 『アリバイ特急+−の交叉』 深谷忠記 (書下ろし大トリック・アリバイ崩し)
 『新横浜発12時9分の死者』 津村秀介 (書下ろし消えた死体とアリバイ崩し)
 『津軽逆転の3重殺』 鷹羽十九哉 (書下ろしアクション&トリック)

・おお、山村美紗が! なんて思ったがその他の作家がなんと本岡、深谷、津村、鷹羽……。これは渋い。地味ながら本格にこだわりを持つ本岡、アリバイトリックの名手・津村、トラベルミステリーなど力作の多い深谷、サンミス出身の鷹羽。国産本格ミステリという観点からするとこのセレクトは渋すぎる。だが個々にはこの月刊行された作品を一冊も読んでないので内容に触れられないのが残念だ。

・とはいえ、トラベルミステリー特集? ともいえる月。……全然、SF+伝奇で固められた翌月と違うやんか! なんでなんで??


07/01/07
・で、昨日疑問を感じた『十角館』前後について調べてみた。

・まず『十角館』の前月、即ち1987年8月に講談社ノベルスより刊行された作品は以下。

 『創竜伝 〔1〕』 田中芳樹 (書下ろし長編伝奇〈超能力四兄弟〉)
 『熱空の女王 ファントム戦士伝説 2』 竹島将 (書下ろしファントム戦士伝説2)
 『復讐のフェスティバル』 今野敏 (書下ろし〈超能力者〉シリーズ)
 『超人類生誕秘録 2 紅小蛇の巻』 谷恒生 (長編伝奇オカルトバイオレンス)
 『破魔神紀 2 怒濤の巻』 志茂田景樹 (書下ろし伝奇ロマン)

・……なんというか、ある意味見事すぎるラインナップ。伝奇、しかもシリーズ作品が目立つ。というか題名だけで判断すると今野作品を除いた五冊中四冊にナンバリングがあり明らかにシリーズではないか。(……と思って調べてみると、この『復讐のフェスティバル』も「 猿沢ら4人のジャズ・プレーヤーが、ハリウッド・ジャズ・フェスティバルに招かれた。だが彼らが宿泊したモーテルでアメリカ人の女性が殺され、猿沢が容疑者とされてしまう。事件の鍵を握る被害者の夫の過去に隠された恐るべき秘密!やがて4人の超能力者は壮絶な死闘に巻きこまれる。読切りシリーズ第4弾!」てな内容で”超能力者”というキーワードを考えるとSFっぽい作品のようだ。しかもシリーズ四冊目)。ちなみに、説明は巻末広告からの引用だが、この時期の講談社ノベルスは「書き下ろし」でも「書下し」でもなく「書下ろし」で表現が統一されている。

・ミステリとしての傾向と対策を洞察するどころか、この月の講談社ノベルスに関してはオールSF&伝奇、しかもシリーズものという取り合わせ。これは一体……? と暫し呆然とする。


07/01/06
・今回の更新で、佐橋法龍『こちら禅寺探偵局』の感想を書いてみた。で、この講談社ノベルス版は'87年9月刊行なのだ。これがどういうことなのかというと、綾辻行人『十角館の殺人』と同時に刊行された本だということ。幸い、古書ながら帯付きで入手したので、他にこの時に何が刊行されているかがわかる。(この頃は巻末に同時刊行の説明がない)。何かというと梶龍雄『裏六甲異人館の惨劇長井彬『南紀殺人 海の密室』高橋克彦『総門谷』そして『禅寺』『十角館』の五冊だ。吉川英治新人文学賞を授賞した高橋克彦の伝奇ものの代表作品『総門谷』は、初刊行ではなくノベルス落ち。長井のこの作品は未読だけれども、説明によれば「カメラマンの怪死にはじまる謎の連続密室殺人! 歴史伝説ミステリー」とのこと。佐橋の今回の作品は、ちょっと評価が微妙で作者に話題性がなければ刊行されなかったのではないかという印象が正直なところ。一方の梶の作品は、趣向を凝らした本格ミステリ変化球。とこう考えると、いわゆる「新本格」がはじまったといわれるのはこの月から。ただ、眺むるに講談社ノベルスとしては、バリエーションを広く取るような刊行方針だったのではないかと想像される。

・ちなみに『十角館の殺人』は「本格推理に大トリックがまだ残っていた! 大型新人颯爽デビュー」というのが説明文。内容を知っている今となっては何とも感慨深い。実際は、この前後の月にどういった作品が刊行されていたのかというあたりも調べてみたいような。どういう背景のなかから『十角館』が刊行されたのか。少なくとも高らかに本格ミステリの元年を宣言したりしたものではないことだけは確かだと思う。


07/01/03
・サイト構成は従来のままでやっぱりゆきます。リスト関連を年末基準でアップデート。創元推理文庫での多島・樋口両作家の復刊が今年も進みますように。

・「名探偵ナンコ」でも予告がありました通り、今年から旭堂南湖さんがラジオ大阪「街角ステーション 僕らのラジオ」でリポーターをされるそうです。月曜日と水曜日が御担当(火曜日と木曜日はこちらも以前ナンコにゲスト出演されたこともある、笑福亭たまさん)。生番組ながら六時間という長丁場で、そのプログラム全体のなかで二回登場するとのこと。個人的には平日のその時間にAMを聞く環境にないのが厳しいのですが。頑張ってくださいませ。


07/01/02
・あけましておめでとうございます。

・新年最初の更新というか、旧年中に書き散らかしたことを整理してリニューアル……とまでは参りませんが、改めて2007年頑張ってみようかな、と気持ちを新たに取り組みたいと思います。特に2006年の傾向からすると、残念ながら今年もミステリという分野にとっては楽ではない年となるような予感もありますが、このジャンルに取り敢えずこだわって見守ってゆきたいと思います。もちろん何が起きているのかを知るためにもミステリのジャンルばかりにこだわらず、広く読んでゆきたいとも考えておりますが。

・もう一つ、昨年はかなり新刊にこだわって読んできましたが、今年は改めてかつての名作(そうでなくとも昭和期作品)の読み残しを拾ってゆく作業も進めたいと考えています。あと、変化進化を続けてゆくだろうMYSCONのお手伝いとか、各種イベントへの参加とか。とにかく、2007年という一年を充実した年として過ごしてゆければと思います。

・ということで、引き続き今年も宜しくお願い致します。年頭の挨拶でござんした。