MISCELLANEOUS WRITINGS
MISCELLANEOUS WRITINGS 今月の雑文


過去の雑文たち
07/12/30
・年末休暇に入ってばたばたと後追いで書いてはみましたものの、今年も数十冊の感想を書き残し、数百冊の積ん読と共に年を越すことになりました。正直なところ今年は特に公私とも身辺慌ただしく、限られたイベントに参加するのが精一杯の状況。とはいえ、国産ミステリと国産ホラー小説への愛情は薄れていませんし、読書という時間に費やした時間はそう減っていないと思っています。

・まあ、そんなこんなで今年最後の更新になってしまいました。皆さま、良いお年を。


07/12/29
・最後に次回第11回ハナシをノベル! の予定。次回はなんとハナノベ初登場の”伯爵”こと、井上雅彦さんが噺を寄せてくれる……予定になっているようです。さらに「前回のリベンジ」とのことで浅暮三文さんが二度目の寄稿の予定とのこと。これでもっとお客さんが入るということがないのですが……と主催者みたいなことを言ってみる。ただ、実際のところ、誰の作品になるのかは直前の案内で改めて御確認ください。

・ちなみに今回のラストのトークによれば、田中啓文さんらが「落語書いてくれませんか?」と声を掛けていて「書く書く!」と反応してくれている作家には、会場から溜め息や拍手の出るような大物の名前がずらり(お名前を羅列していたのですが、都合により消しました)。さらに一度観に来てこられている有栖川有栖さんにもお願いいしているとのこと。ただ有栖川さんの場合は「せっかくの機会なのでちゃんとしたものを書きたい」といった反応になっているそう。つまりは有栖川さんの作品はかなり遅れるフラグが立った……というのが大方の関係者の見方、みたいです。

・そうそう、次回第11回「ハナシをノベル!」は、来年2月18日(月曜日)19時開演。場所は従来と同じく大阪市中央公会堂でありまする。


07/12/21
・第10回ハナシをノベル! 続き。

・中入りの後、クリスマス・イブやきよしこの夜のお囃子(三味線の寺西美紀さんGJ)に乗って、当日会場に来ていた作品提供作家一同(田中啓文、田中哲弥、北野勇作、我孫子武丸)が壇上へ。各人が訥訥と喋るだけなのだが、会話が噛み合わないところまでが芸になって(いつの間にか)客席は大いに受ける。ミスカレで演じられた『戯作者の恋』などの話題で「なんで飯野さんの作品で東京の人は泣くねん」「よりによって飯野さんの作品で」「いや、東京の方が涙腺緩いんちゃう?」「『おしん』という単語で泣くらしいで」等々。

・と、続いての演目は田中啓文『残月の譜』。ある試みが為されている……という前振りがあったが、そこはそれしっかりパンフレットに書いてあります。落語ではかなり珍しい(もしかすると初めてかも)試みで、噺家が高座で落語を演じるなかで笛を吹くというもの。三味線やギター(?)が入る落語はあっても口をふさぐ笛は噺には似わないためこれまで見あたらないらしい。もともと月亭八天さん自身、笛の名手ということもあり、田中啓文さんにそういう噺を作って欲しいとわざわざリクエストしたそうです。

・貧乏長屋に住む貧乏侍・大塚新右衛門。ネズミの骨が転がり、畳に茸と黴が生えた部屋で何をするでなくごろりと横になっている。そこに訪ねて来たのは新右衛門の碁友だちで、質屋の沢井屋久兵衛。新右衛門は久兵衛に、故郷に残してきた家族が病気になったので金子を用意して欲しいと頼み込む。久兵衛は友人の誼で無利子で金を貸すというが頑固な新右衛門は逆に納得しない。とはいえ既に武士の魂・刀は質入れしており、長屋には全くといっていいほど何もない。

・頑固なその性格で過去に殿様の癇に障り、それ以来俸禄が途絶えている新右衛門。彼は久兵衛にある提案をする。実は大塚家は武道ではなく、先祖代々”笛”で殿様に伝えてきた家柄。かつて籠城戦でもはやこれまでという夜に、大塚の先祖が蕭蕭と吹いた笛曲がきっかけで戦に逆転勝ちしたという過去があった。その時演奏された、先祖代々伝わる秘曲「残月の譜」を質入れするという。久兵衛もその心意気に打たれて話は収まるが、大名同士の集まりで藩に伝わる秘曲を褒められた殿様が、殿中に新右衛門を呼び出した……。

・これは良くできていた。八天さんが新作落語に慣れてきていることもあろうけれど、頑固な貧乏侍と人の良い質屋、更には我が儘な殿様という人物配置が巧みで、話の流れのなかで高座で笛を吹く場面も自然なかたちで挿入されている。(曲は『レフト・アローン』なのだこれが)。最初の長屋でのやり取りで武士の心情を表現しつつも笑いをしっかりと取っていたし、秘曲に纏わる過去のパートは微妙に講談調でこれまた巧かった。後半の殿様とのやり取りについてはちょっとばたばたしていた感もあるにはあるが笛の部分にしても流石なもの。小説作品の落語化というよりも、小説家の書いた落語として素晴らしく楽しめた。そういった意味ではハナノベに慣れた田中啓文さんの作品自体が次ステージへと進化したともいえそうだ。


07/12/19
・……の前に。既に各所でお知らせされていますが一応。MYSCON9開催日決定です。 先般のミスカレの時に日程だけは決まっていたのですけれど。来年の4月12日〜(13日)はスケジュールを空けておいてくださいね。かくいう私も来年の手帳すらまだ買っていなかったりしますが。

・いやしかし。もう次回で九年目になるのですね。年取るわけだ。確かに初回MYSCONなんて、もう大昔のような気がしますなあ。前世紀の出来事ですからね。鳳明館森川別館に泊まるのも次で九回目。


07/12/15
第10回ハナシをノベル! に行ってきました。淀屋橋の駅にやたら人が多いな……と公会堂方面に向かうと、折しも当日から大阪光のルネサンスなるイベントのメインパフォーマンスが開始ということで、人、人、人。その人並みをかきわけかきわけして中之島公会堂へ。いつもよりお囃子が長いオープニングを終え「開口一番」が前回に引き続いての桂ひろばさん。八天さんのネタがぎりぎりだということで(ホントか嘘かはよく分からない)、相撲を題材にした上方落語「大安売り」が披露される。ひろばさんの迫力ある体格と関取のイメージとが良く似合っており、とぼけた味わいがよく出ていたように思った。

・続いてはクリスマスソングのお囃子に乗って、田中啓文さんと月亭八天さんが登場。太田忠司さんは日本SF大賞選考委員の仕事があって上京中とのことでやはりいらっしゃらず。田中啓文さんによる太田忠司さん原作『殺しの罠』の前説が入る。太田さんと八天さんは直接はメール・電話含め一切連絡を取り合っておらず、全く面識がないとのことで、太田さんの人となりを言葉で田中さんが伝えようとする。「非常に真面目な方でこんな髪型でこんな眼鏡かけてはってね……」「名古屋は実は……」「実は女性ですねん」「え、ほんまでっか(八天さん半分信じかけ)」「い、いや嘘です」といったやり取りが聴衆に受けていた。

・そんなこんなで『殺しの罠』。父親の遺産を食いつぶして贅沢三昧をしてきたろくでなし・用太(字は適当)。彼は働くことが大嫌いながら、流石にその浪費癖から家計がピンチになってきた。彼が思いついたのは、遺産を残した父親よりも更に金を持っていると思われる叔父さんのこと。早速、無心に出向くが罵倒と共に追い返されてしまう。

・家に戻った用太だったが、その叔父の態度に逆ギレし、叔父に自分の他に相続者がいないこともあって何とか相手を殺害しようと計画する。色々考えた結果、毒殺がいいと考え、携帯サイトを経由して毒を入手。叔父の家に相談があるといって入り込んで、晩酌用のウイスキーに毒を入れて帰ってくる。用太が期待したにも関わらず、叔父さんに不幸が訪れる気配が全くなく、何日も過ぎてゆく。改めて叔父宅を訪問するが、先に毒を入れたウイスキーの瓶はもう空いたらしく、次の瓶に手を付けられている。失敗か……。そんな用太の携帯に、反社会的行為・違法行為を引き受けるという謎の業者からのメールが届く……。

・太田さん自身ショートショートのように書いてみた、とパンフにある通り、ミステリ仕立てで非常に行儀の良い短編作品。ミステリとしての意外性を持たせているが、その部分の味わいはブラックというよりもやはりショートショートのそれだと感じた。また原作は会話文以上に地の文が多かったようで、このあたりが噺家泣かせの模様。ただ、その点については八天さんがいろいろ工夫されており、しっかり落語になっていて違和感はあまりなかった。むしろ細かい工夫によって初々しい新作落語らしさが引き出されていて良かったのでは。また今回はシンプルに原作通りに演じられていたものの、後半のアリバイ作りといった部分は演者によっていくらでも膨らませることができそうで、次回以降演じられる機会にはいろいろ工夫されるのではないだろうか。ミスドだけじゃなくて他のファストフードに行くとか(と後の座談会で言われていた)。また、オチは八天さんが微妙に変更したそうです。最初に不安が煽られたものの成功裏に終了、再び対談のあと一旦中入り。


07/12/11
・ということで次を御案内〜。次の週末になります。

 第10回 落語再生公開堂「ハナシをノベル!!」

 12月15日(土) 18時30分開場 19時開演
 入場料 当日2000円(当日券のみ)
 出演 月亭八天
 演目  「殺しの罠」(作・太田忠司) 「残月の譜」(作・田中啓文) 田中啓文のトークコーナー
 場所 大阪市中央公会堂地下大会議室 場所はこちら

・ここのところ月刊状態の太田忠司さん、ハナノベ初登場。今回は八天さんのホームページを参考に書いているのだけれど、今回に限って太田さん&八天さんのトーク(司会・田中啓文)がパターンだったのが、田中啓文さんのトークコーナーと書いてある。これは一体?? 太田忠司さんトーク固辞とか?? いずれにせよ当日が楽しみです。


07/12/10
・何もしないうちに12月かあ。時の経つのが早い。うう、記録ですが。

・――11月25日の日曜日。政宗九さんが来阪されるという話で「それなら名探偵ナンコに行きましょう」と誘い、珈琲舎 書肆アラビクにて待ち合わせ。店の方はプレオープンから雑誌取材なども結構入っているとのことで全体の雰囲気は当然同じも、美術品や本などが増えている。店主のcakeさんも交えて一時間くらい話をした後、中崎町・北新地経由で新福島へ。

・ミスカレ出演に深夜ラジオと何かと忙しいはずの旭堂南湖さんだが「名探偵ナンコ」に関しては非常にこぢんまりした会であるのは相変わらず。ラジオ大阪の番組の裏話などを枕にまずは古典講談「不破数右衛門」。赤穂義士銘々伝のなかのひとつで、先般「雀のお宿」で行われていた一週間講談のダイジェスト。長講で一時間くらいを一気に演じられたがその時間を感じさせない熱演に舌鼓を打つ。(一部は少し前に聴いたものながら、その違いもまた面白さとして堪能)。粗忽者の粗忽人生といった感じでウケとるるところも多いが、ほろりとさせられるところが良し。

・探偵講談そのものはシャーロック・ホームズもので『入院患者』。(『シャーロック・ホームズの思い出』所収)。ただ、現代訳がベースではなく、明治時代後半に天馬桃太なる人物が初の邦訳した作品。当時の慣行から登場人物や地名は日本名に変更してあり、原書では東京は芝に事務所を構えていたことになっていたそうだ。南湖さんはそれを更に大阪に移して講談化するという何とも不可思議な来歴となっている。

・大阪・心斎橋にあるベーカー街(?)の事務所に医者先生・鳥部が現れる。彼は最近奇妙な出来事に遭遇しているのだという。彼は強硬症という神経症(一定時間同じ姿勢で固まってしまう)を研究し、大学病院に勤めていた。しかし研究でこそ名を成したものの、勤務医でありお金はあまりなかった。そんなところに現れたのが福田なる人物。この男は鳥部に対し、スポンサーになってあげるから淀屋橋あたりに開業してはどうかと薦めてきた。これは好機到来とばかり、鳥部は福田の住むビルの階下に念願の病院を開業することができた。

・その福田、毎日一定時間に散歩する以外にほとんど外出をしない謎めいた人物。そんな折、鳥部のもとに屈強な若者に連れられた老人が訪れる。彼らは親子だといい、老人を鳥部が診察しているあいだに発作が出て老人は強硬状態に。その間に薬を取って来ようと鳥部が席を外すと親子の姿が消えていた。その翌日(それが鳥部が依頼してきた日)、再び親子がやって来て診察を受けて帰ってゆくが、福田が取り乱した様子で鳥部のもとにやって来る。第三者の足跡が福田の部屋にあり、誰かが部屋に侵入したのではないかという。どうも、その親子のうち若者の方の仕業だと思えたのだが……。

・とばかり。原作は間違いなく何度も読んでいる話で(オチを聴くとさすがに思い出したが)、聴いているあいだは展開が読めずなかなかの迫力。原作自体の微妙に辻褄の合わない感覚もホームズらしく、それでいて講談らしさと合わさってなかなか聴かせる展開になっておりました。南湖さんのこのあたりの緩急の付け方なども、新作の初読みながら巧みになってきており、なんとも明治時代の旧き時代が瞼の裏に浮かぶよう。観客が少ないのが勿体ない……という出来だったかと思います。

・打ち上げが今年最初の忘年会でした。次回はまた来年。


07/11/23
・名探偵ナンコのお知らせ。ミステリー・カレッジでも江戸川乱歩を熱演してくださいました旭堂南湖さん。その探偵講談はこちらが本家です。(同イベントにも参加してきたのですが、講談→落語トーク→落語とずっと同じ部屋に座っておりました……)。

11月25日(日) 
 第37回『名探偵ナンコ』 〜よみがえれ!探偵講談〜


 会場/本遇寺(JR東西線「新福島」・ 阪神「福島」下車、地下鉄2番出口から徒歩5分。JR環状線「福島」下車徒歩10分。福島区福島3-7-38)
  開場/18:00 開演/18:30
  料金/当日1500円

  出演/旭堂南湖「探偵講談 ホームズ」、「古典講談 長講・不破数右衛門」
  ゲスト・芦辺拓先生(作家)「対談」

・当日は夕方一旦アラビクに寄ってから出陣する予定です。場所的には梅田を挟んで東西反対になりますが。


07/11/22
・いつの間にかサイト開設してから十年を突破していました。

・毎日更新を十年継続できていればそりゃもう少し感慨があっても良いところなんでしょうが、単に時間が経過して、最近は手を抜いた更新をぼそぼそ続けているだけなので逆に恥ずかしいくらい。サイト開設当初とはいろいろ個人的な環境や状況も変化しているわけですが、幸い読書量そのものだけはそう落ちておりません。ただ読了はしたけれど感想を書いていない本たちがPC回りにかなり積まれています。

・ま、今後も時間をみつけてぼちぼちと、そしてほそぼそと続けてゆければなあと思います。引き続き宜しくお願いします。


07/11/04
・ベスト投票に伴い、(投票とは関係ないけれどが)十年前に刊行された『'98本格ミステリ・ベスト10』をなんとなく読み返した。当時は東京創元社から刊行されており、レイアウトなども洗練されていないのだが……これが面白い(懐かしいというべきか)。なかでも、収録されている笠井潔、法月綸太郎、千街晶之三氏による座談会が改めて興味深く、この当時から本格への危機感が叫ばれていたんだっけか? と改めて思い出した次第(……とまで書いてから「セルダン危機」を笠井潔氏が最初に訴えたのがこの座談会だったということを思い出した。その流れでいうと大森望さんの「カンブリア紀」説とかもあった)。当時の空気が伝わってくる内容で、こういった年度回顧の座談会は時代の流れを検証する意味でも有意義なものだなあ、と。それから十年がかりで実際にこの段階で話に挙がっている状況が実現されてきているところがある。恐らく、その当時に想像されていた状況からするとかなり時間が経過しているような気もするけれど。

・この座談会当時は二十世紀。それから十年、二十一世紀に入って、本格のシーンが当時に比べて変革したかというと結局そうでないところの方が大きかったのではないかと愚考する。当時、清涼院流水や蘇部健一といったメフィスト賞の初期組が活躍を開始しており、彼らの処遇(?)について本格ムラの中でどうするかに迷いがあったことは事実。ただ結局、そこでの線引きが誰もできないままにさらにその後の殊能将之、舞城王太郎、佐藤友哉、西尾維新……といったところを迎えてしまい二十一世紀初頭の良く言えば百花繚乱、悪くいうと混乱期を迎えてしまったのではないか。本格系の読者の支持を受けてデビューしていても、個が立つ作家は固有のファン層を作り、本格の枠に囚われない、(そもそも元からそういう意識のない)作品作りを始めてしまう。その最たるものが、当時はランキングに複数作品が顔を出しながら、最近は全く(本格系ランキングには)ご無沙汰の森博嗣あたりではないか。なんでも書くが時々本格系の良作を発表してくれる東野圭吾は別格。その他の人気作家は出て行ったきり帰ってくる気配があまり感じられない。

・――ただ、その本格の核とは何なのか。結局は作家と作品があるばかり。

・つまりは、重要なのは実力ある作家が、きっちり毎年のように本格作品を打ち出し、それが売れること。それがこの二十年間の本格ミステリのジャンル隆盛に繋がってきていたように思う。その作家層が特に近年の本格ミステリ界は厚く、誰かがさぼろうが、他の誰かが話題ある本を出すというスパンで回ってきたことと、毎年のように新規参入があったこと。この結果、本格ミステリというジャンルが盛り上がっていたのではないか。だが、このサイクルがギリギリで回っているのが最近の現状のようにも見える。端的にいえば、有栖川有栖の『女王国の城』、米澤穂信、道尾秀介、石持浅海らの健闘が2007年を何とか支えた。果たして来年はどんな年になるのだろうか。

・……などと、珍しくジャンルとしての本格ミステリのことを真面目に考えてみた。

・ということで、原書房 『2008本格ミステリ・ベスト10』の投票は本日(11/5)までです。


07/10/28
・こちらはなかなか行けなくてやきもきしております。在京の際、それからその後も上京のたびにお世話になっております「モルトバー ですぺら」。夏頃の休業以来、いろいろなご苦労の末についに完成(?)されたとのことで場所は同じ赤坂見附。但し近くのビルに移ったため住所が変わります。(駅からはより近くなったのではないでしょうか)。

 モルトバー ですぺら

  正式(再)オープン 10月29日(月)
 (新住所)
  東京都港区赤坂3丁目9-15 第2クワムラビル3階
  ※赤坂見附駅を細い通りのほうに出て右へ、「坐・和民」のビルの細道を通り抜けたみすじ通り、白木屋前のビルです。

・来月には一度顔を出したいですねえ。写真などで見る限りは前の店と内装が近いようで同じような雰囲気なのでしょうか。いずれにせよ行ける日が楽しみです。


07/10/27
cakeさんが梅田・中崎町で近々開業される「珈琲舎・書肆アラビク」のプレオープンに遊びに行ってきました。

  


・だいたいの地図を頭に入れておいて、梅田のロフト周辺の喧噪を抜け、阪神高速とJRの高架を超えると、大阪の普通の街っぽい中崎町になります。そこをひたすら真っ直ぐ進むと周辺には長屋を改造したと思しき雑貨店や美容院など、普通の住宅に混じって隠れ家的スポットがちらほら。郵便局を超えて角を曲がると目的地。

・cakeさんが表に立っていたのでご挨拶してなかに入れて頂きます。噂に聞いていた通り、長屋ですよ長屋。道路に面した側がガラス扉になっていて、そこを開けると土間。古道具と思しき、味わい深いテーブルと椅子のセットの両側に本棚があって、そのあたりが「書肆」の部分。今回はじっくり拝見するのを遠慮しましたがなかなか黒っぽい本が多く(幻想文学、ミステリ系)、楽しみですねえ。

・奥が板の間になっており、厨房などはそちらに。奥にソファもありますが、人数が多い場合は直接靴を脱いでくつろげるようになっています。お話によるとイベントスペースとしても活用したいそうで、人形作家やイラストレーターの展示会もしたいとのこと。

・奥でコーヒーを頂きましたが、これがまた美味しい。また、夜にはお酒も出せるようにする計画とのことですので、お店の利用方法はいろいろありそうです。また梅田からは少し歩きますが、谷町線の中崎町からはかなり近いです。アラビクという店名からも分かる通り、本好きがゆっくりくつろぐのに良さそうなお店なので、個人的にも今後少しずつ通うようにしたいと思います。もし、行きたいという方がおられましたら御案内しますよ。

・正式オープンは、11月3日(土)友引 です。
・お店のブログはこちら。 (地図もこちらにあります)。


07/10/26
「ハナシをノベル!」が新聞記事に。 田中啓文さん曰く「SF作家に関西在住者が多いのは、大ぼら吹き、奇想、お笑い好き、といった関西人の資質がSFにぴったり合っているから。これは落語にも通じる」といったあたり言い得て妙。地域文化論ととして興味深いなあ。

・ところでふと思いついた疑問。大きな書店の屋号には○○堂という名前が多いよなあ――。堂ったら神仏を祀る建物のことじゃないの? と思って調べたら違いました。意味合いとしてもともとは「古く接客や礼式などに用いた建物。表御殿。表座敷」というものがあり、さらに先の神仏、さらにそれから既に意味は転じられているのか「多くの人が集まる建物」という意があるようです。さらに発展して接尾語として「店の名や雅号・建物の名などに付けて用いる。」ということ。確かに雅号とかにもつきますものね。プチ疑問のコーナーでした。


07/10/16
・昨年から今年にかけて講談社BOXをかなり集中的に読んでいる。幾つか気付いたことがあるのだが、その一つが物語の長大化しているようにみえること。長大な作品を選んでわざわざ講談社BOXとして刊行しているのか、執筆を依頼する作家の作品がたまたま長大なのかは不明ながら、講談社BOXにおけるエンターテインメント文芸のほとんどがシリーズであり(例外もあるが)、結果として何冊かに分冊されている。十二ヶ月連続刊行含め、気軽に一冊だけ手にとって楽しむというよりも、リピーターというのか購入し続ける読者を対象にしている印象がある。

・従来からエンタメ世界でも長大なシリーズ作品はあるけれど、それはあくまで人気を背景にしたものだと思う。ただ――一冊二冊では終わらないシリーズ世界というニーズが潜在的にあるのか、それとも現代読者の要請なのか、そのあたりがちょっと自分のなかでもハッキリしない。人気が出れば当然のようにシリーズ化されて継続していくラノベ感覚の延長? 実際、どうなんでしょうね。


07/10/14
・リスト類の整備(新刊に気付いたらすぐやれ<自分)。

・リストといえば皆川博子さんの『倒立する塔の殺人』も理論社ミステリーYA!の一冊として近々出るみたいですね。ある人から教えていただいたのですが、先に刊行されている『薔薇密室』とこの『倒立する塔の殺人』は、名作『死の泉』の作中作著者・野上晶の訳書としてずっっっっと早くから題名のみ登場しているんだそうです。(確認しました。ハヤカワ文庫版でいうとP643を参照のこと)。壮大なり皆川博子世界。


07/10/09
・↓ 予告ではなしに記録。

・ 第九回 落語再生公開堂「ハナシをノベル!!」

 9月29日(木)
 出演 月亭八天
 演目  「みんなの会社」(作・北野勇作) 「わあわあ言うております」(作・田中哲弥)
 場所 大阪市中央公会堂地下大会議室

・ということで、これまた告知すらしておりませんでしたが第九回「ハナシをノベル!!」を聴いて参りましたのでレポートをば。ちょうどこの一週間ほど前、9月21日大阪の天満天神繁昌亭で出張版「ハナノベ」が開催されていた。かけられたのはホラー系統の作品だったこともあって題名は「八天がホラーをノベル!」。ただ、折良く(悪く)某新聞読者向けに繁昌亭のタダ券割引券が大量に配られていたこともあり、当日は大入り満員。立ち見も満員。当日券を当てにして立ち寄ったものの観られず帰った人が百人以上(小生もその一人だったりする)という大イベントになった。そして今回は、その入れなかったお客さんと会場のお客さんが大挙して押し寄せる――ことはなく、いつも通りの人の入り。

桂ひろばさんのトーク、更に田中啓文さんと北野勇作さんのトークによって客席が温められたあと、最初にかけられたのは北野勇作原作『みんなの会社』。社員、係長、課長、部長、さらに経理課長といった面々が日曜日に”会社”に招集される。理由が分からない。それぞれ会社の備品を売り払っていたり、会計を誤魔化して男に貢いでいたり、社長の奥方と浮気をしていたりと心当たりがありまくり。さらにそんななか、後から社長とその奥さんの専務がやって来るという展開。こうやって書くとなんということもないようにみえるが、実際これだけの多人数が同時に一個所に集まって相互に会話をするという状況は、落語としては演じるには極端に難しいはず。初回ということで苦労の跡も見え隠れしながらも、まずまずの仕上がりで八天さんが後で反省するほど悪くなかったと思う。

・二作目は田中哲弥原作『わあわあ言うております』。この「わあわあ言うております」というのは前座噺などをかける際、サゲまできちんと話が行かなくとも「……というように、わあわあ言うております」で切り上げてしまう口上、決まり文句。今回はそれをメインに持ち込むことがツボとなるメタ形式を取り入れた落語(と書くと偉い斬新やなあ)。物語そのものは古典落語風の設定で、喜六が長屋の甚兵衛さんに相談しにくる話。幼馴染みの結婚に向けて、見栄を切って散財した挙げ句、借金の取り立てに追われる喜六。絶体絶命の危地に陥るたびにある言葉でリセットがかかる。……というと話の内容は見えたも同然かもしれないが、この作品、実際に毎回毎回お囃子が鳴って八天さんが噺を切り上げて、またお囃子と共に戻ってくるという趣向。途中、アドリブで時代がどんどん入れ替わり、さらにそれにお囃子が見事に追随するなど見どころ多し。オチまで含め、よく出来た作品でした。

・この『ハナシをノベル!』が、来月講談社より単行本で刊行されます。月亭八天により実際に演じられた落語のCD付き。内容はアンソロジー形式で、新作落語の”ネタ”として各作家がこれまでに書き下ろした作品が収録される模様です。

・とはいえ読むのと実際に観るのは大違い。月亭八天さんは、旭堂南湖さんと共にミステリーカレッジに登場しますので、是非その時にでも実際の”落語””講談”の面白さを体感してください!


07/10/03
・下の記事で旭堂南湖さんが持つラジオ番組の題名を、当然「南湖の美男子講談師」だと耳で聴いて思い込んでいたのだが、ラジオ大阪のサイトで見てみると『南湖の美男子好男子』とある。こうだんしという言葉にあてるのが「好男子」というところに関係者の並々ならぬ覚悟がみえる……。

・今日からだったのに仕事していて聞き逃しました。いきなり残念。


07/09/30
・↓ 予告ではなしに記録。

9月23日(日) 
 第36回『名探偵ナンコ』 〜よみがえれ!探偵講談〜


 会場/本遇寺
 出演/旭堂南湖「探偵講談 敵討ち」、「古典講談 名月松坂城」、「無声映画活弁劇場」
  ゲスト・田中啓文先生(作家)「対談」

・ということで、ばたばたしていて告知すら出来ませんでしたが行ってきました探偵講談。東京・名古屋の南湖は一旦区切りになるとのことながら、大阪での会は継続しております。

・まず、半年以上継続されていた旭堂南湖さんによるラジオ大阪のレポーターは近々の番組改編のタイミングで終了となる予定だとのこと。その一方、なんと「旭堂南湖」の冠番組が始まるというニュース。題名(仮題?)は「旭堂南湖の美男子講談師」。まだ内容は決まっていないようですが、深夜零時からいわゆるアニメ枠の前の番組として流れる模様です。スポンサーがあのサンガリアというあたり、ローカルっぽくて素敵です。

・さて冒頭は「名月松坂城」。天正十五年、秀吉の九州討伐で軍を率いた加藤清正と蒲生氏郷。岩石城後略の際、蒲生氏郷は敵将の一人・熊井越中守との一騎打ちに臨む。しかしその闘いに入ろうという時、蒲生の乗る馬に矢が突き刺さり、氏郷は落馬。絶体絶命の危機に駆け付けたのは氏郷配下の猛将・石塚久四郎であった。久四郎、熊井を得意の槍術にて打ち倒すと、蒲生の名前で勝ち名乗りをあげた。岩石城は落城し、意気揚揚と引き返す蒲生軍。さて本拠・伊勢の松坂城で論功行賞が行われるが、そのなかに石塚の名前がない。しかも氏郷はすっかり記憶違いをしており、熊井を討ち取ったのは自分自身だと信じている。その言葉を聞いた石塚、思わず忍び笑いを漏らしたところ氏郷が聞きつける。石塚は主君の勘違いを正そうとするが氏郷は逆に激昂、その場で槍を取り石塚と庭での勝負に挑むが……。

・古典。聴くのは初めてのお話。蒲生氏郷、そして石塚久四郎主従の関係がうまく物語に込められており、よく出来ている。主人を見限って城を出てしまう久四郎、しかし怒りが鎮まると共に反省する二人だけなら普通なのだが、出戻った二人がまた同じように闘っちゃうところがミソですね。合戦や一騎打ちの迫力もあって単純な感想ながら面白い講談でした。

・探偵講談は「敵討ち」。明治時代、上野。その路上で年の頃なら三十二、三、身なりの良い紳士が額に傷を負い、更には全身傷だらけで倒れていた。騒ぎになり病院に運ばれるがその紳士、意識が戻っても自らの姓名はおろか、傷を負った理由すら警察に対しても話そうとしない。加害者でなく被害者であるため、病院側が退院させたところ、警察に対して探偵・瀬川次郎がこの人物の裏に何か犯罪があると申し出、尾行をすることになる。瀬川の尾行の結果、その男は上野で辻占いを行う太田正道なる人物であることが判明した。お喋りな大家の話によれば、太田は広島出身で妻と子供を失って、現在独身なのだという。瀬川は尾行を続けていくうちに、どうやら太田は上野にある南洋商社という会社に対して何か腹に一物を持っていることが解ってきた……。

・ベースは実話なのかもしれないが、筋書きが一本道の分かりやすすぎる内容。題名から敵討ちであり、まあ、そんな話でした。物語の途中で「おお?」と思わされるような意外性がほとんどなく、むしろ人生残酷物語のようなかたちの作品なのかもしれない。しかも冒頭の謎、なぜ太田が傷だらけで路上に倒れていたのか理由が本編ラストまで語られない(南湖さん曰く、云うの忘れてました)という……。南湖さん自身の出来は上々だっただけに、お話のセレクトが勿体ない印象でした。

・今回の無声映画はアフリカ探険もののアニメ。こればっかりは、即興は厳しいみたいなのできちんと事前にシナリオを作り込んだものを見せていただきたいかな。これまでに上演したものの再演で構いません。最後の締め括り、田中啓文さんとのトークは「どうも、芦辺拓です」という前振りから、何故か芦辺さんの話になり、そこから田中さんの生活とか、南湖さんが家でも南湖くんと呼ばれている話(「本名、知らないんちゃいます?」)だとか。会場のノリは今ひとつ(人数がそれほど多くないせいもあって)ながら、個人的には面白かった。あと、さすがに田中さんが今手がけている忠臣蔵の話などは良い感じでした。


07/08/25
・先週から告知されているのでご存じの方はご存じかと思いますが、e-NOVELSが来年から新しいフェイズに突入します。自身の多忙にかまけて更新頻度が大幅に減りましたが、e-NOVELSの書評を引き受けていた身としてはいろいろ思うところもあります。残念なことは残念なのですけれど、インターネットがこれだけ普及しながらほとんど「読書」というアナログ形態に変化がなかったことも事実ですし、周囲にもほとんど電子出版で何かを読んでいる人間がいない状況は、八年前「これからはインターネットの時代だ!」という段階では逆に予想できなかったように思います。(ついでに旧態依然の当サイトの形式も八年以上変わってない)。

・あと、Timebook Townでも発売される作品については今後も書評は残す予定です。


07/08/24
・【訂正】申し訳ありません。思いこんでいましたが、服部まゆみさんの最新刊は今年5月に刊行された『ラ・ロンド』でした。副題が「恋愛小説」なので、これも耽美系恋愛小説なのかな。お詫びにっていうのも変ですが、昨日本屋で同書を購入しました。


07/08/23
・二十年前の'87年に横溝正史賞を受賞、『この闇と光』が直木賞候補作になった服部まゆみさんがお亡くなりになっていたようです。独特の耽美系センスでミステリを描く作家さんでした。最後の作品となった『レオナルドのユダ』は未読ですが、後半期はミステリから離れ独自の世界を追求されていたような印象があります。ご冥福をお祈りいたします。


07/08/18
・この週末は名古屋の『みそ煮込み南湖』、東京では『幻の南湖』が最終回なんですよね。これもまた一区切りなのでしょうが……。ここのところの本家大阪の「名探偵ナンコ」は絶好調。『名探偵オルメス』がなんとも講談で聴くと味があることよ。ところできちんと前回のレポート、書けるかなあ。着々と一ヶ月が経過しかかってるしなあ……。

・とりあえず樋口有介著作リストを修正してみました。


07/08/08
・本来は名探偵ナンコのレポートですが、今さらのお知らせです。ジュンク堂の梅田店(堂島本店ではなく)では、今月19日まで「落語フェア」を開催中。「落語家の読んでいる本100選」ほかスペシャルイベントが目白押し。そんなイベントのひとつがこちら。(第一回は既に終了していますが)。

・落語フェア スペシャルイベント
 「落語再生公開堂 ハナシをノベル!!」 落語家VS作家トークライブ

出演:月亭八天(落語家)、田中啓文・北野勇作・田中哲弥・我孫子武丸(小説家)
日時:8月3日(金)19時、8月11日(土)14時、8月19日(日)14時の計3回  *田中哲弥、我孫子武丸は8月11日のみ

会場:ジュンク堂書店梅田ヒルトンプラザ店(ヒルトンプラザイースト5階)
問い合わせ:ジュンク堂書店梅田ヒルトンプラザ店 TEL.06-6343-8444

・イメージは「ハナノベ」の一つの目玉と化している冒頭トーク部分の再現みたいな感じでしょうか。


07/07/30
・前回の「ハナシをノベル!」の続き。二席目はハナノベ初登場の小林泰三さん。田中啓文さんとのトークで会社ネタを振られるが「いや、これは風説の流布になるのでごにょごにょ」。また、なぜか科学は信用できるかという話になり、電車の中でパソコンで原稿書きをしていた田中さんが、セーブミスで数十枚分の原稿を無くしたエピソードが。「でも、それって科学のせいか?」というツッコミに爆笑。果たして科学は勝ったのか負けたのか。小林泰三さん曰く「タイムパラドックスを完全に解決したハードSF落語」の始まり。

・題名は『時の旅』。長屋の物知り・甚兵衛のもとにやってきたのは宮本留五郎。今まで誰も考えつかなかった金儲けの方法を思いついたのだという。「タイムマシンがあるという前提で……」という留五郎に対し、タイムマシンは無いじゃないかと当たり前のツッコミをする甚兵衛。話が進まないので「前提」で話が進む。その内容は、銀行に入れた千円が、未来になれば莫大な利子が付いているというものだった。しかし、そのタイムマシンがない。なので留五郎は、自分の子孫にタイムマシンを持ってきてもらうよう遺言書を作成するのだが……。

・ネタバラしになるかもしれないが、噺の後半、実際にタイムマシンが登場する。そのため前半部は「タイムマシンがあるわけない」という建前のなかで繰り広げられる仮定の話の面白さだったものが、後半はタイムパラドックスを理解できなくなりつつある登場人物の混乱がネタとなり、物語のギアチェンジがうまくかかって面白い。特に後半部は論理で説明がつかなくなるなか、強烈なオチに持ち込まれる。ただ、その論理のドタバタ加減が落語のテンポと交わって雰囲気としては非常に良い感じでした。

・次回は9月29日。まだ誰が新作を書くのか分からない状態とのことです。ただ以前観客席にいらっしゃった大物作家の名前が挙がってました。


07/07/21
・第八回「ハナシをノベル!」のレポートを簡単に。

・平日ど真ん中にもかかわらず五万五千人の大観衆(by林家竹丸さん)を集めて行われたハナノベ第八回。その林家竹丸さんが「持ち時間3分」と厳命されていたらしいなか「鶴の恩返し」の変形版を繰り出して会場を温める。続いて田中啓文さんと月亭八天さんが登場。「二年目突入」と意気込む八天さんと「え、そんなに続いたっけ?」とぼける田中さん。さらに先の林家竹丸さんが大学のゼミの後輩であるといった話のあと、最初の噺の提供者・北野勇作さんが壇上へ。「今日もまた潮干狩りの帰りですか?」というあたりから、前の作品「寄席の怪談」が八天さんの定番になりつつある一方、そのある演出のために演じられる度に呼び出される話とか。

・そんなこんなで最初の一席『カエル通信システム』。北野さん曰く「バイオテクノロジーと情報工学の詰まったハードSF落語」。――日曜日、引っ越してきたばかりで友人もいない筈の独身男の家にやって来たセールスマン。無視しようとする男をピンポン攻撃で引っ張り出し、「インターネットとか興味ありますか?」とセールストーク。無料という言葉に釣られ、男が契約してしまったものは「カエル通信システム」という名前の、「インターネットのようなもの」であった……。

・落語でよくある「変な商売の話」を書きたかったとの北野さんの弁。題名からも予想できる通り、通信システムを契約してしまった後の男が詭弁によって混乱してゆくさまが面白かった。さすがに八天さんも新作の初演ということで立て板に水といった風には話すことができない点、序盤のリズムをつかみづらいところもあったが、北野さんらしい原作と落語とがうまく噛み合った作品だと思えた。


07/07/20
・ハナノベには行ってきました。次は名探偵ナンコです。

7月22日(日) 
 第35回『名探偵ナンコ』 〜よみがえれ!探偵講談〜


 会場/本遇寺(JR東西線「新福島」・ 阪神「福島」下車、地下鉄2番出口から徒歩5分。JR環状線「福島」下車徒歩10分。福島区福島3-7-38)
  開場/18:00 開演/18:30
  料金/当日1500円

  出演/旭堂南湖「探偵講談 ルーフォック・オルメスの冒険」、「赤穂義士伝」、「無声映画活弁劇場」
  ゲスト・芦辺拓先生(作家)「対談」

・前回、風邪を患ってしまい行けなかったので今回初めて「無声映画活弁劇場」を聴くことができそうです。更には下記で御紹介した毎日亭の演目「赤穂義士伝」。そして、これは本来一部の人は見逃しちゃなんないのでは。カミのオルメス探偵ですよ。これは平成の探偵講談との親和性が高いかも。


07/07/16
・相変わらず告知です。

・ 第八回 落語再生公開堂「ハナシをノベル!!」

 7月18日(水) 18時30分開場 19時開演
 入場料 当日2000円(当日券のみ)
 出演 月亭八天
 演目  「時の旅」(作・小林泰三) 「カエル通信システム」(作・北野勇作) 月亭八天×小林泰三&北野勇作によるトーク(司会・田中啓文)
 場所 大阪市中央公会堂地下大会議室 場所はこちら

・今回初めて作品を提供されるのは小林泰三さん、更に北野さんの新作ということで関西SF対決ということになった模様です。「時の旅」は「金もうけを思いついた男。埋蔵金でも、石油を掘り当てる話でもない。1000年先まで貯金すればよいという。さて、そのお金、どうやって手に入れる?」といった内容。さらに「カエル通信システム」は「訪ねてきた営業マンのしつこさに根負けして、思わず入会した「カエル通信システム」。新しく開発された「地球にやさしい」次世代型情報伝達ネットワークだというのだが……。」というもの。はてさて。問題は今回は平日ど真ん中ストレートな開催日であるところがちょい厳しいか。

・もう一つ。こちらは毎日、現在進行形でやってます。

・ 第2回『講談 文月毎日亭』〜一ヶ月続き読みの会〜

 ・7/1(日)〜31(火) 平日は19:00開演(但し24日、27日は昼興行)土日祝14時開演(但し21日は夜興行)
 会場/雀のおやど(近鉄・地下鉄「鶴橋」下車、JR中央口、地下鉄7番出口で出て、鶴橋駅前商店街を北へ徒歩30秒)  料金/一ヶ月通し券1万円・1日券1000円
 出演/旭堂南海「浪花侠客伝」、旭堂南湖「赤穂義士伝」、旭堂南青「太平記」

・この一ヶ月連続講談、とりあえず一回聞いてきましたがめちゃくちゃ面白いです。千円は安い。講談の入門に最適。一時間半の濃密なひとときが間違いなく楽しめるはず。会社帰りでも大阪出張でもなんでも騙されたと思って都合の合う日があれば寄ってみてください。一人でも複数でも、フリで普通に行って聞くのが吉。たぶんハマります。個人的にも会期中にあと何回か行きたい。


07/07/07
・気付くと七夕。仕事をして身体を動かしもりもりと本を読んで更新はサボりがち。こんな日常。最近では読了した本に比して、感想が全く追いつきませんのでひと言だけ、先に。戸板康二『中村雅楽探偵全集2 グリーン車の子供』創元推理文庫の巽昌章さんの解説に痺れるほどの感銘を受けました。日常の謎の祖のような扱いを受けつつ、初期作品に殺人事件が多く扱われる一連の戸板作品における「世間的評価」に対して個人的に抱いていた微妙な違和感が払拭され、更にその理解に深みが増すという素晴らしい内容。戸板作品を通じて現代ミステリ作家の名前を幾人も出して、その立ち位置までをも過不足なく説明してしまうことにもびっくり。解説のかたちでありながら完全なる評論であり、それでいて間違いなく名解説という希有なる数ページです。こういう解説に出会えることは至福の読書体験といえましょう。


07/06/18
・間が空きましたが、ハナノベレポ最後。

・中入りを経て、拍手と共に今度は壇上に八天さんと田中啓文さん、そして森奈津子さんが登場。会場には落語ファンもいるため「森奈津子」という作家を紹介しようとすること自体に苦労されている。「主にSFめいた官能小説を書いております」「この分野では第一人者でいらっしゃる」「というか、この分野自体、一人しかいないように思う」(意訳)といった会話から、最近の風俗事情を取材された時の話など明るくぽんぽんと飛び交う。また、森奈津子さんは関東育ちゆえ、上方落語は聞いたことがなく「『うばすて村』で初めて上方落語に触れました」「最初がアレっちゅうのはうーん……」といった一幕も。しかし田中啓文さんは毎回、作家から話題を引き出すのが上手です。

・今回の噺『正直課長』についても「官能描写は無しにしました」「でも最後のあたりには、その片鱗が感じられますよね」といったかたちで期待を煽るかたちで対談は終了し、いよいよ改めて八天さんが壇上へ。「嘘も方便」といった前振りでは、偶然であった親子に対して、嘘を駆使してほめあげる男の例と、彼らに対して正直に(というかそれ以上に悪意もあるように思われたが)感想を述べてゆく男の例を比較していく。

『正直課長』 一流商社を途中退社して我が社にやって来た人物・吉田裕次郎(漢字は適当)は社長の息子。二十台半ばのイケメンで、そんな事情からいきなり課長職に就く。女子社員は皆、彼のことが気になるし、男性社員は面白くない。ただ、このエリート課長、ちょっと変わった癖があって”嘘”を生まれてこの方、一度もついたことがないのだという。現在の社長、つまり父親が母親に対して愛人がいるいないといった嘘をつきまくったことに対し、嘘を絶対についてはいけないという母親からの教育が徹底的になされた結果らしい。しかし、その吉田課長、部下や同僚への”嘘”への指摘は厳しい。部長が歌うカラオケに対して「上手です!」といったおだての言葉にツッコミを入れたかと思うと、「いい天気ですねえ」という当たり前の挨拶に対しても厳しくチェック、さらにはお昼休み「わたし、水を飲んでも太っちゃうんです」という部下のOLに対しても更に激しく当たっていくのだった。「その言葉、本当なのか?」 そんな課長のもと、部下の一人がある場所で酒を楽しんでいると、そこに課長が……。

・八天さん曰く、地の文があるなか会話で状況を分からせようとするあたり苦労されたようで、会話のキャッチボールはそれぞれ面白いながら、場面場面の繋がりの表現が難しかったような印象。オチに至る道筋の方に森奈津子さんらしさが溢れており、そちらの微妙な加減も演ずる側としては最高級に難しいと思う。ただ、初演のネタ下ろしでもあり、今後スムースに演じられれば独特の新作落語として今後も十分に使える内容だと感じました。

・今回は、一周年記念ということでプレゼント大会があり、月亭八天、田中啓文、森奈津子三氏による寄せ書きのサイン色紙や、田中さんがライナーを執筆したジャズCD、森さんの絶版本や同人誌、八天さんの手ぬぐい、その他美術館入場券から落語会のパンフレットまで様々が大盤振る舞い。最終的には参加者の半数くらいの方が何かしら当たったのではないでしょうか。小生も後半に当選していい物を頂きました。感謝。

・次回は、7月18日(水)。現在のところ、二席のうち一席は小林泰三さんの作品がかかることが決まっているとのことです。客席に見かける作家さんが続々登場している状況なので……さすれば今後は……(と妄想が膨らむ)。


07/06/06
・とまあ、相変わらずの抱腹絶倒の前振りが終了し、八天さん再登場、一作目「うばすて村」へ。

・……代官によってご禁制となっている山。入り口には竹矢来が組まれ、警護の兵がものものしく立っている。そこへ大きな風呂敷包みをしょってやってきた男、は村人の吾作。通して欲しいと懇願する吾作、通ってはならぬという門兵。許しが得られぬとみるや、吾作は脱兎のごとく門をすり抜けて山に飛び込む。「おとっつぁーーん! おとっつぁーん! くいもの持ってきたでー」 追っ手を振り切り山の中を駆け、危うく崖から落ちそうなところでようやく立ち止まる吾平。その崖下に大切な食い物を落としてしまう。

・……その少し前のこと、村の掟に従い六十五歳を迎えた父親を「うばすて」しようとする吾作。父親の為五郎は往生際悪くなかなか承知しようとしない。子供のようなだだをこねる父親をなだめすかして代官所に連れて行く吾作。自分はまだ身体は頑健だし、山に行きたくない! と叫ぶ父親はさらに激高して今すぐここで殺してくれとまで言い出す。吾作を下がらせ、説得にあたる代官……。そしてその説得工作のあと、なぜか為五郎は山に行くことをあっさり承知してしまう。むしろ楽しみにしているようにみえ、急な父親の変化に戸惑う吾作だったが……。

・とまあ、なぜ父親・為五郎が急に山に行く気になったのか、果たして「うばすて」の真実は? という興味で噺への興味がぐいぐいと深まる作品。当初、まったりとした”日本昔話風の噺”というはずが、いきなりのシリアスドラマみたいな導入部から動きが多くなっており、特に山に駆け込む吾作を演じる八天さんの熱演ぶりが良かった。また話芸も光り、特に素直に父親との別れを悲しむ吾作と、その”何か”が気になって気になってしょうがなく、気が急いて早く山に上りたい為五郎との裾野での別れにまつわるやりとりの部分は秀逸。笑いまくりました。

・オチは八天さんのオリジナル(?)らしく、一席終了後に再び壇上に上った八天さんと田中啓文さん、そしてYさんによって総括と裏話。事前に打合せしようにも、Yさんがずっと入院してて啓文さんを介してのやりとりになったとのこと。信念を通そうとする八天さん、Yさんそれぞれとのあいだで中間管理職がごとく啓文さんが苦しむ話とか、「病院でうばすて村の話をするわけにいかんでしょう」に爆笑。


07/06/03
・第七回『ハナシをノベル!』に行ってきました。

・まず最初に。月亭八天さんによる新作落語の会にして落語家と小説家のコラボレーション企画がこの「ハナシをノベル!」。今のところ大阪での開催のみなのでなかなか直接参加できない――というアナタに朗報。どうやら年内に本のかたちでこの「ハナノベ」が刊行される目処が立った模様。しかもCD付き……ということは、ハナシ(噺)を読み、ハナシを聞くことが出来るというもの。発売の折には是非ご購入を。

・今回は一周年記念スペシャルと銘打ち、東京から原作者の森奈津子さん(自腹)をお迎えしての回。鳴り物でのオープニングから、「面白ければ笑うこと、面白くなくても笑うこと」といった前口上を桂ひろばさんが述べたあと、月亭八天さん、田中啓文さん、そして今回の一本目『うばすて村』の原案を作った啓文さんの友人・Yさんが壇上へ。

・聞けば、お二人とも中学二年生の頃から、二十数年来のご友人同士とのことで会話も息がぴったり。
 「こうして二人、正座して並んでいるとよう先生に怒られたこと思い出すなー」
 「『またお前らか!』とかなー」
 「僕ら高校生の時にバンド組んでましてん」
 「そうそう」
 「こいつドラムですねんけど」
 「なんでかというとあの頃の有名なドラマーがみんなそうやったようにドラムには太った人が多いから」
 「同じパターンで野球やったら必ずキャッチャーやったね」
 「ハイハットでリズム取ることに気付くまで半年かかりましてん」
 「なんでかというと、教則本を絶対に見ないという縛りがあったから」
 「そうそう、バックバンドが映るザ・ベストテン観ながら勉強してたけど、一週間に一回しかなかったし」
 「どんなん演ってたかというと『三途の川の子守唄』とか『魔法使いとアホウ使い』とか。これなんて○○のほとんどパクリやね」
 「一つやってみよか」
 「そやな」

 「や〜まよ〜♪」「や〜まよ〜♪」「おれは帰る〜でよ〜♪」
 「う〜みよ〜♪」「う〜みよ〜♪」「おれは帰る〜でよ〜♪」
 「か〜わよ〜♪」「か〜わよ〜♪」「おれは帰る〜でよ〜♪」
 「このまま盛り上がることなく百番くらいまで続きますねん」
 「嫌でしょ」
 「聞く方、嫌やったろうなあ」(ちなみにこのフレーズ、翌日も耳について離れません)


07/05/29
・週末に風邪で体調を崩してしまい、せっかくがちでスケジュール入れていたのに名探偵ナンコを欠席してしまう。聞くところによれば、どうやら今回の「大蛇美人」はなかなか良い出来だったようで、返す返すも残念だ。また何か機会があれば是非聞いてみたいところ。

・実はまだ完調ではないのでこちらも体調と相談ですが。

・ 第七回 落語再生公開堂「ハナシをノベル!!」

 5月31日(木) 18時30分開場 19時開演
 入場料 当日2000円(当日券のみ)
 出演 月亭八天
 演目  「正直課長」(作・森奈津子) 「うばすて村」(作・田中啓文) 月亭八天×森奈津子のトーク(司会・田中啓文)
 場所 大阪市中央公会堂地下大会議室 場所はこちら

・遂に東京から百合系最終兵器・森奈津子さん(実は落語が大好き)の初登場。「正直課長」は、生まれてこのかた、一度もウソをついたことがないというイケメン課長がオフィスで巻き起こす珍騒動という内容で、森さんの作品を八天さんがどう演じるのか興味津々。また「うばすて村」は、年寄りを山に捨てるうばすて村。代官に説得されると、嫌がる老人たちもなぜか山行きを承諾する……というストーリー。今回は太っ腹(?)一周年記念プレゼント付きとのこと。是非御来場を!


07/05/24
・名探偵ナンコのお知らせ。そういえば明日の晩(5/25)、天満繁盛亭初のレイトショーに南湖さんも参加されるようです。お題は名探偵ではなく三題噺の模様です。

5月27日(日) 
 第34回『名探偵ナンコ』 〜よみがえれ!探偵講談〜


 会場/本遇寺(JR東西線「新福島」・ 阪神「福島」下車、地下鉄2番出口から徒歩5分。JR環状線「福島」下車徒歩10分。福島区福島3-7-38)
  開場/18:00 開演/18:30
  料金/当日1500円

  出演/旭堂南湖「探偵講談 大蛇美人」、「古典講談 長短槍試合」、「無声映画活弁劇場」
  ゲスト・芦辺拓先生(作家)「対談」

・ここのところの探偵講談、毎回ネタ下ろしながらレベルがとみに高くなっている印象です。今回も題名からして何かすごく魅力ありますよねえ。どうやら、番頭さんが饅頭貰ったらお金を持っていかれる話のようです(意味分かりませんが)。あと今回初登場、活弁は戦前の無声映画に南湖さんが当てレコするというもの(のよう)です。今後連続する新企画となり得るのか。注目して見てこようっと。


07/05/19
・別々の書店で『赤い夢の迷宮』勇嶺薫と『六とん3』蘇部健一を購入したら、同じ紙カバーをつけてもらった。KODANSHA NOVELS 25thというロゴがあり、お馴染みの犬のマーク入り。どうやら現在、講談社ノベルスを購入すると「講談社ノベルス25周年記念カバー」がかかるのようですね。更に、二軒目の本屋では三種類の栞から「どれが良いですか」と尋ねられた(綾辻栞にした)。そのカバーを外すといろいろとフェアをやっていることが判明。詳細はこちら。栞も最終的には全二十五種類って、全部集めるのは大変そうだ。

・特製ブックカバーの類はこれまでの経験上、基本的に使わないとはいえ、25年全著作リストは欲しいかも。

・ということでリストを入手できるのはかなり先なので二十五周年を調べてみた。二十五年前、初めて講談社ノベルスが刊行された際に発売されたラインナップはこんな感じ。なんか力のこもった作家陣だ。ちなみに刊行日は全て1982年5月。

 『東西南北殺人事件』 赤川次郎
 『ばいにんぶるーす』 阿佐田哲也
 『神州日月変』(上)(下) 栗本薫
 『檻の中の被害者』 佐野洋
 『陽の翳る町』 仁木悦子
 『特急さくら殺人事件』 西村京太郎
 『殺人行おくのほそ道』(上)(下) 松本清張
 『神より借りた砂漠』 森村誠一

・このうち赤川次郎さんは、二十五年後の今年もまた『三姉妹探偵団』のシリーズを講談社ノベルスで刊行しているわけで……。いやいや。すごいことですよ。


07/05/06
・連休の最後の一仕事とばかり、e-NOVELS書評を書いてみた。

小森健太朗「黄昏色の幻影 黄昏ホテルシリーズ第16回」  e-NOVELS 定価100円(税込)16P 1,068KB 販売ページ

小森健太朗氏といえば必ず『ローウェル城の密室』で史上最年少で第28回江戸川乱歩賞の最終候補作に残るという枕詞がつくのだが、それはもう1982年のこと。今を去ること25年前になる。(小森氏の本格的な作家デビューは'94年の『コミケ殺人事件』)。ただリンクを張った通り、その『ローウェル城の密室』もまたe-NOVELSで購入が可能なのだ。しかもこちらには先に出版芸術社より刊行されたものから改稿されており、さらにおまけとして別稿による異なる結末がつくという。こちらもお勧めしておく。

 「探さないでくれ」。 画家の夫・拓也が失踪して十日が経過した――。妻の亜有子は思いつく限りの知人や親戚と連絡を取ったがその行方は分からない。亜有子の心配は夫の浮気ではなく、最近診療を受けた結果判明した、画家の命ともいえる夫の視力が致命的に低下していたことにあった。自分の将来を悲観して自殺しているのかもしれない、と最終的に亜有子は警察に捜査願いを出す。すると警察は、夫が遺したと思しき青いボストンバッグを見つけてきた。確かに夫の荷物であったが、なかには行く先の手掛かりになりそうなものは何もなかった。が、ただ一枚、亜有子が初めて眼にする写真が、何も書かれていない大学ノートに挟まれていた。その写真には亜有子に面差しの似た女性の上半身裸体が映し出されている。ここに至り、亜有子は夫がこの女性と行動を共にしているのではないかと疑った。よくよく観察すると、その背景となっている風景に亜有子は見覚えがあった。今から十年ほど昔、夫と共に国内旅行を行った際に宿泊した「黄昏ホテル」。亜有子は「行けば何かがみつかるかもしれない」と黄昏ホテルに向かうが、フロントで夫やその女性の写真で確認しても、よくわからないという答が返ってくるばかりだった。

芸術家の夫の行方を追う妻。彼の真実を知ってしまった結果の複雑な感情がポイント
 行方不明の夫を捜す妻――。よくあるパターンでは妻と夫の立場が逆のことが多いかもしれない。ただ大抵のこの場合、その追跡の過程で、夫婦でありながらも実は相手のことを良く知らなかったことを、改めて思い知らされることが多い。毎日一緒に顔を合わせて暮らしていた夫は、一体どうして失踪してしまったのか。本書も短い作品ながら、その妻の焦燥が巧みに描写されている。唯一の手掛かりである黄昏ホテルに辿り着いたものの、夫はおろか相手の女性も見つからないことへの焦り――。普通は結婚生活の追憶と後悔へと至るものだが、ここから物語は、そのハードボイルドの常道から、思わぬ方向へと曲折してゆく。

この書評の続きはこちらへ!


07/04/26
・忙しかったです。まだ忙しいけれど。

・あいだにMYSCONを挟み、抜け殻。年に一度のお祭り騒ぎ。というか、前回が一年前だったのか? というくらい自分のなかでは定着していて、鳳明館森川別館のつるつる滑る廊下や階段、擦り切れた畳、ロビーの柔らかな椅子、部屋割りが完璧に頭に入っている間取り等々、何か実家に帰った時のような安心感があったり。

・とはいえ、今回は昼夜の二部開催。昼の部は既報の通り、海堂尊、三津田信三、桜庭一樹インタビュー。会場のベルサール九段は当日初めて行きましたが、夜の森川別館とは全く対をなす近代的な建物であることに驚き。初回ということもあり、段取りにいろいろ不備はありながらも何とかこなせたのではないかなと。今回判明した各種の課題事項は来年以降、少しずつでも解消してゆきたい。その昼の部、インタビューなど様子の一部はCSのミステリチャンネルで放映されるみたいです。

・内容についてはMYSCON公式サイト内のレポートリンクから詳しい人のところに飛んでください。

・でも結局はスタッフやっているのが一番楽しいなあ。この楽しみを皆さんにも分けて差し上げたい。たぶんどのスタッフに聞いてもそう言うと思う。


07/04/14
・……とまあ、今回の講談は探偵小説っぽいというかミステリらしい内容。ただ問題は、原典が上下に分かれているうちの”上”しか南湖さんの手元になく(別の解説本により犯人は判明しているとはいえ)、後半部が存在しないところが良くも悪くもポイント。今回読まれた内容からは「あれれ?」というような犯人像が指名されているようで、講談らしいといえばらしい作品だったかな。ただ先にも書いた通り、明治時代では先端の(?)考え方などが取り入れられておりやはり『無惨』なりの影響が大きいことは感じ取れた。序盤に魅力的な場面も多く、いっそのこと後半部を創作してしまうのも一つ手かなと思わされました。

・あと一週間となりましたMYSCON8。うち昼の部は新会場・ベルサール九段にて開催します。アクセスはこちら。「九段下」駅「5番出口」徒歩5分(半蔵門線・新宿線)「九段下」駅「7番出口」徒歩3分(東西線)「神保町」駅「A2出口」徒歩6分(半蔵門線・新宿線・三田線)「飯田橋」駅「A5出口」徒歩7分(JR線・有楽町線・南北線・東西線・大江戸線)「水道橋」駅「西口」徒歩8分(JR線・三田線)。いくつ行き方があるんじゃい、という気もしますが、四駅利用可という好アクセス。ゲストに、海堂尊、桜庭一樹、そして三津田信三(敬称略)という豪華かつ不思議な取り合わせはMYSCONならでは。当日ふらりと訪れていただければ入場できますので宜しくお願いします。

・そしていつもの鳳明館は夜の部のみの会場となりますので御注意を。その夜の部についてはまだ滑り込みが可能です。スケジュールが確定しなくて申し込めていないという貴方。すぐにこちらからどうぞ。


07/04/09
・さて今回の講談のメインは「探偵講談・情死か殺人か」。原作は玉田玉秀斎なる人物でもともとは京都の講談師らしい。ただ、この作品、聴き終わると分かるのだが明らかに黒岩涙香の影響下にあって『無惨』とよく似た部分があるのが興味深いところ。

・明治二十八年。日清戦争の前後の頃。飯田橋を出て八王子に向かう機関車が信濃町のトンネル内部でなにかを轢いてしまった。雨の降る夜のこと、トンネルの中程での出来事ときては機関士にも何が起きたのか分からない。次の停車場に向かったところ、どうやら人間を轢いたような形跡があった。慌てて現場に引き返したところ、男女二人の轢死体が残されていた。男は顔かたちも分からないような状態だったが、女性は年の頃は十七から十八の美人。白い絣を着ておりトンネルの入り口では履き物も揃えている。駆け付けた警視庁の探偵たちは、これは情死に違いないと決めつけていたが、老探偵・船田節蔵はただ一人納得が出来ていない。残された女性の遺体から本人のものではない長い髪の毛があるのを抜き取って証拠として残しておく。

・また船田は遺留品となった下駄がまっさらであることに注目。雨が降るなか履いてきたにしては何か違和感があった。しかも被害者が差してきたはずの傘も見あたらない。下駄にあった印から近くの下駄屋を探し回ったところ、新品の下駄を若い書生が買っていったという店が見つかった。近くにある明治義塾の学生・金子義雄がその人物だったが、船田の追及にも金子はその下駄は買ってすぐ盗まれたものだと言い出す。納得しないまま、明治義塾を出た船田はその門前で馬車と人力車の事故に出くわす。その人力車に乗っていた婦人は美濃部繁子で、明治義塾の校長・美濃部国友の妻。駆け寄った船田が彼女を抱き起こしたところ、彼女の髪の毛の色や縮れ具合が、トンネルで発見された髪の毛とそっくりであることに気付いた。

・この明治義塾という学校に何かあると踏んだ船田が調べてみると、国友の妾のお玉、そのお玉が実は美濃部の級友の愛人で、一方の繁子夫人は書生の一人で長髪の春木梅吉に特別な感情を持っている――。教育者とも思えない乱行の果て、果たして事件の真相は?


07/04/08
・いつの話をしているのだという気もするけれど出席した限りは続けている名探偵ナンコレポート。今回にて第三十三回にもなりました。この数日前にゲストの芦辺拓さんにめでたいことがあり(おめでとうございます)、その席上に来られていた方全員勢揃いとはいかず、多少人数的には寂しかったか。それでも今回の「名探偵ナンコ」は非常に充実しており、来て良かったと思わされるものでした。

・冒頭で演じられたのは予定演目になかった「寛政力士伝」のうち「谷風の人情相撲」。親孝行で知られた色男力士・佐野山は十両力士。決して強くなかったところに親の病気が重なって何かと物いりになり、貧乏で困っている。その話を聞きつけた天下の横綱・谷風とその一門は佐野山の家に見舞いへ出向き、カンパを集めたりと世話を焼くが病気は重く費用は嵩む。そんななか、谷風は興行元へ無理をいい初日に佐野山との取り組みを無理矢理に実現させる。谷風が佐野山を指名したという話は野次馬たちにすぐに伝わり、色男の佐野山が谷風の恋人を寝取ったという話になぜかすり替わってしまった。その結果、佐野山は谷風に土俵上で殺されるのではとの風評が。佐野山の数少ない谷町たちは彼に大いに懸賞金を掛けて奮起を促そうとするが……。

・はっきりいってしまうと片八百長の相撲なのだが、現代のスポーツとしての相撲とは異なり、この当時はこういうのも有りだったのでしょう。講談ならではのツボというか佐野山が土俵に上がることになってからの周囲の大袈裟な反応が楽しく、また実際の土俵上の臨場感にしても講談ならではの面白さ。完成された古典講談ならではの良さと南湖さんのとぼけたネタとの織り込みが絶妙の一幕でした。

・続いては、こちらは予定通りの「古典講談・上杉謙信の塩送り」。どうやら大河ドラマに触発された……というわけではないでしょうが武田信玄vs上杉謙信の有名な話。スポットが当てられるのは、こういった重要な役割を果たす使者で謙信の使者・鬼小島弥太郎が良い味を出している一作。「ちゃんぷくりんのふくりんりん」。この言葉に悩まされる武田信玄……というあたり、講談師、見てきたような嘘を言い、がそのまま体現されたかのようなちょっととぼけた味わいがある作品でした。


07/04/02
あまりにもすっぱり騙された気持ちの良いエイプリルフールネタ。表紙画像だけじゃなく、なんというか”生みの苦しみ”を感じさせる文章といい、東京創元社(特にミステリ・フロンティア)であれば、こういう”発掘”も実際にありそうだという当方の思い込みといい、レッドへリングとミスリード満載、ネタとして力作かと思われます。嘘から出たマコトで来年の今頃くらいにホントに本が出たりして。しかし今日は何事もなかったかのように普通に更新しているところが一人囃子さんらしいなあ。

・4月から新学年(?)ということでお知らせ。小森健太朗さんが、大阪コミュニティカレッジというところで「現代エンタテインメントとミステリ」という題で一年にわたり主として社会人向けの教養講座を開催されるそうです。(場所は大阪の日本橋近辺)それなりに費用も発生するようですが、ミステリを俯瞰的に捉えたいという方には役立つものになると思われます。あと関西在住の作家や評論家もゲストに招くということですから興味があってお金と時間に(これが小生にはキツイ)余裕があるという方は、参加を御検討されてはいかがでしょうか。

MYSCON8、引き続き参加者募集中。念のため改めて書きますが、昼の部は当日受付が可能です。ある意味MYSCON初めての試みともいえるのですが、当日に急に思い立って「そうだ、MYSCON、行こう!」と、ふらりと立ち寄って頂いても参加できます。(但し事前予約することでいいこともあります)。逆に夜の部は従来通り、申し込みが必要です。これは会場の関係ですので申し訳ありませんが当日ふらりと、という訳には参りません。なので、特に夜の部に参加しようという方は申し込みを宜しくお願いします。