香里は、無意識のうちに、自分の胸をまさぐっていた。
『ちゅ…、ちゅぽっ…、ちゅっ、ちゅぷっ…』
規則的に零れる、淫らな響き。
わざと音を立て、気分を盛り上げているのだ。
大好きな人を、気持ち良くしてあげたい。
大好きな人に尽くしている、可愛い自分を見せたやりたい。
そんな想いが、香里にもひしひしと伝わってきた。
『何て可愛いの…、栞…』
香里は、自分の胸を揉みしだきながら、愛しい妹へと、想いを馳せる。
『……』
『ん……、ぁ………、はい…』
『………』
何か話しているようだったが、良く聞こえなかった。男性の低い声は、響きにくい。
「……フェラはもういいの…」
誰に問うでもなく香里は、ぼんやりとしながら、軽い自慰に耽っていた。
「はぁ…私…やらし…」
手を動かしながら、香里は自嘲気味に呟く。
「こんなトコ…、見られたら……」
姉の威厳など、跡形も無く吹き飛んでしまう。
その時。
『あぁあんっ!!』
悲鳴にも近い声が、香里の耳をつんざいた。
「……!」
突然の事に、身体が敏感に反応する。
がく、がく…
震える香里。
軽く達しそうだった。
『祐一さ――…あぁ――』
消え入るような声で、名前を呼んだのが最後、それからはただの悲鳴だった。
『あぁんっ、あぁ――…!あぁん――っ!』
赤ん坊のような、言葉にならない声。
理性のかけらさえ見えない、動物的な鳴き声。
『あっ…!あっ…!あっ…!あんっ!』
良く通る少女の声。もはや隣の部屋どころか、外にまで聞こえそうな勢いだった。
ぶちっ!
ボタンを外す余裕など無い。シャツを引き千切り、胸をはだける香里。ブラジャーで寄せ上げられた、豊かな乳房が零れ落ちる。
「はぁ、はぁ」
一瞬でスカートのホックを外すと、ショーツを下げ、空いたもう片方の手でブラジャーを外す。香里の豊満な乳房が、一度揺れた。あっと今に半裸になる香里。この間、三秒と掛かっていない。
『あぁんっ!あぁあんっ!あぁあ――っ!』
息を荒げ、壁に耳を押し付ける香里。
ごん!と少し頭をぶつけた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
壁にもたれかかり、右手で胸を、左手で股をまさぐる香里。
未だかつて無い程、香里は興奮していた。
自分がしている事の背徳感も、罪悪感も、全て快楽に転化されていた。
こんなチャンスは滅多に無い。
栞の、乱れ狂う姿。
すぐ傍で、男と女がセックスをしている。
それを感じながら、自慰行為が出来る。
『相沢君…、栞…』
しかもその相手は、二人とも、自分の良く知った人物なのだ。興奮しない訳が無い。
『あぁ…!はぁ!はぁ…ぅっ!…っあ!』
「は――、は――」
香里は、息も絶え絶えに、聞こえて来る甘い声を頼りに、自慰に没頭する。
むにゅ、むにゅ…
乳房を揉みしだき、濡れた股の割れ目を、指で何度も擦る。
『栞…、栞――…』
壁の向こうに、想いを馳せる香里。
どうしてるの―――
どんな風にしているの―――
香里は、二人がどんな体位でセックスをしているかを考えた。
『はっ…!あっ…!あっ…!はっ…!』
ぎっし、ぎっし、ぎっし…
『これは、騎乗位だ…』
ベッドの軋む音と、栞の声のタイミング。
香里はそれで騎乗位だと判断した。
『相沢君、騎乗位好きだったわね…』
かつて香里もそれを体験していたため、すぐに分かった。
『っあん!っあん!っあぁん!っあ!』
ぎしっ、ぎしっ、
ぱん!ぱん!ぱん!
スプリングの弾む音と合わせて、栞の肌を打つ音が聞こえる。
「栞に、そんな激しい運動させて……っ」
華奢な栞が、男の上にまたがり、汗に濡れた白い肌を惜しげも無く晒し、身を躍らせる姿が目に浮かぶ。
『ああ…、栞…、栞――』
次第に高まっていく快感。イキそうだ。
香里は、乳房を絞るように揉みしだき、性器に指を入れる。
掌でクリトリスを優しく包み、指先で膣中のある部分を引っ掻く。
『可愛いよ…、栞…』
祐一の声が聞こえる。
『っは…!っは!祐一さ…!祐一さ…ぁんっ!』
「そう…可愛いのよ…栞…可愛い…」
無意識に口走りながら、香里は絶頂への階段を着実に上る。
掌でクリトリスを転がす香里。
「も…だめ……」
快感を押さえられず、香里は達した。
「あぁ…………い、いく……っ」
少しずつ、身体を震わせていく香里。
「イ………ク…ッ………」
『あんっ…!あんっ…!あんっ…!あんっ…!』
栞の、愛らしい喘ぎ声を聞きながら。
香里は、最高に幸せだった。
ずるずるとへたり込み、身体を震わせる香里。
うずくまり、その身体を抱く。
そうしないと、身体が弾け飛びそうだった。
びくんっ…びくんっ…びくびく…
「あ……あ…ぁ―――……」
搾り出すように呻き声を漏らす香里。
思いきり涎が垂れていたが、気にしなかった。
既に、股から溢れ出した愛液が腿をつたい、絨毯に広く染みを作っている。
びくびく…、びく…ん…
「は…っ、は――…、は――……」
息も絶え絶えに、絶頂の快楽に酔いしれる香里。
今までにやった自慰の中で、間違い無く最高の快感だった。
震える身体を床に横たえ、ゆっくりとエクスタシーの余韻に浸る。
しばらくは、身動きを取る事さえ出来なかった。
『………』
どれだけの時が経ったのか。
気がつくと、隣からの音楽はもう止んでいる。
CDが終わったのだろう。
しかし、妹の愛らしい声は、まだ響いていた。
もう丸聞こえである。
CDを取り替えるのが面倒くさいのか、もはや音が漏れようと気にしていないのか。
「元気ね…」
冷静さを取り戻した香里は、今度はじっくりと耳を傾ける。
「………」
先程と同じように、壁に耳を押し当てる香里
壁に耳を寄せなくともはっきりと聞こえたが、もっと良く聞きたかった。
ぎし、ぎし、ぎし…
規則的な音。さっきよりもリズムが速い。
『はぁ、は、はぁ…、は…ぁ…』
栞の声が、心なしか弱くなっている。声が枯れてきたのだろう。
あれだけ激しく攻め立てられれば当然だ。
ぱんっぱん、ぱんっぱんっ!
いい音を響かせる、栞の柔肌。
人間の身体は、こうも鮮やかな音を出すものなのか。
香里は、自分の時も、わざと音を立てるように身体を動かしていた事を思い出した。
その方が、激しい行為をしているように感じたからだ。
『あ…、あ…!あっ!あん!』
ぱんぱんぱんっ!
打ち鳴らされる音の間隔が短い。
これは相当早く動いている。
これだけ速く動けるという事は、今はさっきとは違う体位のはずだ。
『あ…!あ…ぁぁ!あぁうっ!んぅ――』
栞の声が時々くぐもったものになる。シーツに顔を押し付けているような。
ぱしんっ!ぱしっ!ぱすっ!ぱんっ!
栞の尻を打つ音に、先程と違って重さが無い。
騎乗位の時は、栞の全体重が掛かっていたはずだ。
となると、栞の腰は空中にある。
『後ろからされてるのね、これは…』
香里もその体位でしたことがあるが、凄まじく恥ずかしかった。
何せ、色々な所が男の目の前で、丸見えになるのだ。
ありとあらゆる行為の中で、一番恥ずかしいのではないかと思う。
しかし、恥ずかしいがゆえに、その行為に溺れた時の快感は、計り知れないものがあった。
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