大学時代には「様々な肌色のイメージ調査」というものを行いました。大学のゼミが色彩心理学のゼミだったので。。
今回載せた卒業論文は「タオルギャザーが姿勢制御に及ぼす影響について」です。
タオルギャザーとは、タオルを足趾で自分の方向へ引き寄せるトレーニングで、大学時代サッカーを行っていた際も
練習後に行っていました。他にも様々な筋力トレーニングを行っていましたが、地味ですが、このタオルギャザーは効果あります!!
自分では、ダッシュ、ターンなどクイックネスが向上したように思えます。。
タオルの先に重りを乗っけると負荷を上げて行うことができます。自分は、大学時代最大10kgまで載せて行っていました。

タオルギャザー

姿勢制御

母趾メカノレセプター

タオルギャザーが姿勢制御に及ぼす影響について

 

タオルギャザー   姿勢制御   母趾メカノレセプター

 

T はじめに

人間の日常生活において、常に地面と接している状態になっている部分は足部であり、足底は重要な部分である1)。大学時代、プレーヤーとしてサッカーを行っていた際、タオルギャザーを現場で取り入れていた。当時は、部の学生トレーナーの指示により、セット数は3回引き寄せれば終了というものであった。プレーヤーとしては、タオルギャザーを行うことによって、スタート、ストップ、ターンなどの切り替えしがスムーズになったという実体験がある。そうした経験から、タオルギャザーは、入学前から興味を持っていたものであり、調べていく中で、図1のように、足底には多くのメカノレセプターが存在していることを知り、その中でも母趾にメカノレセプターが集中していることが分かった。これらのことから、ただタオルギャザー

図1 足底メカノレセプター5)

※ 黒点はメカノレセプターが多く存在している部位

を行わせるよりも、母趾を意識させた方が、効果があるのではないかと考えた。

現在、スポーツ現場でなくとも、臨床現場でもDYJOC(動的関節制動訓練)として、足趾訓練が行われている。スポーツ現場という対象がスポーツ選手では、訓練に対するモチベーションは高い。しかし、臨床現場では様々な患者さんがいる中で、訓練に対してモチベーションが低い患者さんもいる。実習では、タオルギャザーを踵骨骨折の方に処方したが、モチベーションを高めるのに苦労した。それは、自分の中でタオルギャザーというものに自信を持てていないからであるとも言える。結果として、自分の選手時代の実体験での効果を話さざるを得なかった。そこで、今回の卒業研究という機会を生かして、タオルギャザーが姿勢制御に与える影響について自分なりに深めることができ、このような効果が期待できるので取り組んで下さい、と自信を持って患者さんに処方できるようになればと思い、今回の研究を計画した。

U 研究目的

健常成人において、タオルギャザーが姿勢制御に及ぼす効果に関して検証する。

V 仮説

@ 動的姿勢制御能力(以下;動的バランスと略)の向上

健常成人において、タオルギャザーを行うことにより、

重心がより前方へ移動できるようになる。

A 静的姿勢制御能力(以下;静的バランスと略)の向上

健常成人において、タオルギャザーを行うことにより、静止立位での重心動揺距離が短くなり、さらに重心動揺面積が小さくなる。

B 母趾メカノレセプター刺激の効果

健常成人において、母趾を意識させてタオルギャザーを行った方が、仮説@・Aでの能力がより向上する。

W 実験方法

A:対象

 現在、平衡機能・及び下肢機能に問題がなく、下肢の骨折、手術既往のない、当学院学生11名。(男性6名、女性5名、平均年齢21.6±4.7歳、平均身長165.3±8.3cm、平均体重56.9±7.4kg)実験期間中は他の下肢訓練を実施しないことを説明し、参加同意を得た。

B:方法

1:実験内容

全被験者を対象に、訓練前と訓練後(4週間)、動的バランスの評価としてFunctional Reach Test(以下FRTとする)、静的バランスの評価として、静止時立位重心動揺(開眼・閉眼)を測定した。被験者は、訓練群6名、対照群5名、さらに訓練群を母趾意識群3名、通常群3名に振り分けた。詳細は、以下の通りである。

aFRTの測定方法

FRTDuncanらの方法に準じて行った。被験者を白板に垂直な面に向かわせ、歩幅を肩幅程度に開かせて立たせる。右上肢を手関節中間・前腕回内・肘関節伸展・肩関節90°屈曲位に保持させて、第3指尖と一致する位置を白板にマークする。測定開始を合図し、号令と同時に被検者は、できる限り前方へリーチする。検者は、その時の第3指尖の位置を白板にマークする。測定開始位から最大リーチを保持する間、被検者には転倒しないように指示し、測定開始位に戻らせて測定終了とした。FRT距離は、測定開始肢位の第3指尖から測定終了肢位の第3指尖までの距離をメジャーを用いてmm単位で測定した。なお、測定開始から最大リーチ位を保持する間が約10秒間となるようにさせた。2)

b:静止時立位重心動揺の測定方法

重心動揺計を使用し、裸足で直立、上肢を体側につけて下垂、歩幅を約10cm開いた状態で測定時間を60秒間として3)1回測定した。視線は2m前方の壁の直径2cmの赤点(眼と同じ高さ)を注視する。4)開眼測定後、継続して閉眼を測定した。

データは、総軌跡長と重心動揺面積を記録し、使用。

2:訓練内容

椅子坐位にて、床に用意されたタオルでタオルギャザーを行ってもらう。両股関節内外転中間位、膝関節90°屈曲位から5kgの重錘を乗せたタオルを5回自分の方向へ引き寄せてもらう。5)これを1日の訓練とした。訓練頻度は、週に2回(月・木)に実施した。

3:使用器具

a:重心動揺計(アニマ(叶サ、GS-1000:以下重心動揺計とする)

b:タオル(素材共通)(母趾意識群は、エラスコットテーピングを母趾側に貼付したタオル使用、通常群は、貼付しないタオル使用)

c:メジャー、白板FRT測定時に使用)

4:測定場所

評価には、本学院実習室を使用。訓練も同様。

C:分析

統計処理は、総軌跡長(開眼)・(閉眼)、重心動揺面積(開眼)・(閉眼)、FRTの郡内比較は、対応のあるt検定、訓練群と対照群との群間比較は、対応のないt検定を用いた。危険率を5%に設定した。(統計処理としてFree JSAT 8.2 for Windowsを使用)

 

X 実験結果

1.   動的バランス(FRT)について、訓練前後とも、訓練群・対照群さらに、母趾意識群・通常群において有意な群間差、群内差は認められなかった。

(表5・表6・表7・表8)

2.   静的バランスについて

a:総軌跡長(開眼)について、訓練群は、訓練前後で、対照群に対し、有意差は認められなかった。母趾意識群・通常群の群間でも有意差は認められなかった。

b:総軌跡長(閉眼)について、訓練群は、訓練前後で、対照群に対し、有意差は認められなかった。母趾意識群・通常群の群間でも有意差は認められなかった。

c:重心動揺面積(開眼)について、訓練群は、訓練前後で、対照群に対し、有意差は認められなかった。母趾意識群・通常群の群間でも有意差は認められなかった。

d:重心動揺面積(閉眼)について、訓練前後で、対照群に対し、有意な差は認められなかった。母趾意識群・通常群の群間でも有意差は認められなかった。

(表1・表4・表7・表8)

表1 訓練群の訓練前・訓練後の変化

 

訓練群

訓練前

訓練後

危険率

総軌跡長

(開眼)

56.48±20.67

63.47±20.16

P=0.15

総軌跡長

(閉眼)

66.11±27.59

74.32±21.33

P=0.27

重心動揺面積

(開眼)

1.45±0.66

1.81±0.82

P=0.18

重心動揺面積

(閉眼)

1.90±1.20

2.16±0.95

P0.68

FRT

34.75±7.22

36.50±7.82

P0.16

表2 訓練群(母趾意識)の訓練前・訓練後の変化

 

訓練群(母趾意識)

訓練前

訓練後

危険率

総軌跡長

(開眼)

43.78±9.31

51.58±14.05

P=0.44

総軌跡長

(閉眼)

53.40±20.47

59.70±18.24

P=0.50

重心動揺面積

(開眼)

1.45±0.83

1.71±1.26

P=0.56

重心動揺面積

(閉眼)

2.11±1.74

1.59±0.86

P=0.46

FRT

31.00±7.81

33.33±9.25

P=0.15

表3 訓練群(通常群)の訓練前・訓練後の変化

 

訓練群(通常群)

訓練前

訓練後

危険率

総軌跡長

(開眼)

69.18±22.32

75.35±19.88

P=0.24

総軌跡長

(閉眼)

78.81±31.62

88.94±12.79

P=0.50

重心動揺面積(開眼)

1.44±0.64

1.84±0.12

P=0.31

重心動揺面積(閉眼)

1.71±0.67

3.06±0.75

P=0.34

FRT

38.50±5.22

39.67±6.11

P=0.63

 表4 対照群の訓練前・訓練後の変化

 

対照群

訓練前

訓練後

危険率

総軌跡長

(開眼)

54.39±19.06

58.89±22.13

P=0.62

総軌跡長

(閉眼)

66.70±16.60

68.70±29.42

P=0.86

重心動揺面積(開眼)

1.56±0.45

2.33±1.22

P=0.30

重心動揺面積(閉眼)

2.11±1.02

2.62±2.79

P=0.75

FRT

37.20±1.52

37.20±1.52

P1.00

   5 訓練群・対照群の訓練前の比較

 

訓練群・対照群 訓練前

訓練群

対照群

危険率

総軌跡長

(開眼)

56.48±20.67

54.39±19.06

P=0.87

総軌跡長

(閉眼)

66.11±27.59

66.70±16.60

P=0.97

重心動揺面積(開眼)

1.45±0.66

1.56±0.45

P=0.75

重心動揺面積(閉眼)

1.90±1.20

2.11±1.02

P=0.77

FRT

34.75±7.22

37.20±1.52

P=0.45

 表6 訓練群・対照群の訓練後の比較

 

訓練群・対照群 訓練後

訓練群

対照群

危険率

総軌跡長

(開眼)

63.47±20.16

58.89±22.13

P=0.73

総軌跡長

(閉眼)

74.32±21.33

68.70±29.42

P=0.72

重心動揺面積(開眼)

1.81±0.82

2.33±1.22

P=0.41

重心動揺面積(閉眼)

2.16±0.95

2.62±2.79

P=0.73

FRT

36.50±7.82

37.20±1.52

P=0.84

表7 訓練群(母趾意識)・訓練群(通常)の比較

訓練群(母趾意識)・訓練群(通常)の訓練前

 

母趾意識

通常

危険率

総軌跡長

(開眼)

43.78±9.31

69.18±22.32

P=0.14

総軌跡長

(閉眼)

53.40±20.47

78.81±31.62

P=0.30

重心動揺面積(開眼)

1.45±0.83

1.44±0.64

P=0.98

重心動揺面積(閉眼)

2.11±1.74

1.71±0.67

P=0.73

FRT

31.00±7.81

38.50±5.22

P=0.24

  表8 訓練群(母趾意識)・訓練群(通常群)の比較

訓練群(母趾意識)・訓練群(通常)の訓練後

 

母趾意識

通常

危険率

総軌跡長

(開眼)

51.58±14.05

75.35±19.88

P=0.17

総軌跡長

(閉眼)

59.70±18.24

88.94±12.79

P=0.09

重心動揺面積(開眼)

1.71±1.28

1.90±0.12

P=0.82

重心動揺面積(閉眼)

1.59±0.86

2.72±0.75

P=0.16

FRT

33.33±9.25

39.67±6.11

P=0.38

Y 考察

A:本実験におけるタオルギャザーの効果

タオルギャザーの効果を判定するものとして、FRTを選んだ。その理由としては、前方への重心移動に効果があるのかを探ることによって、高齢者の転倒予防にも効果が期待できるのではないか、考えたからである。(高齢者の転倒骨折は、後側方転倒→大転子部強打→大腿骨頚部骨折というものが多い)その原因としては、加齢に伴って50歳までは、重心が前方へ移動するが、60歳以降は、重心が後方に移動していくということが挙げられる。図2は、立位における前後方向の重心位置の年齢における変化を表したものである。


図2 立位における前後方向の重心位置の年齢変化6)

B:動的バランス(FRT)との関連性

母趾意識群と通常群との比較において、母趾意識群の方が、FRTの距離が延長するという仮説を立てたが、関連性は認められなかった。その理由としては、第一にエラスコットテーピングの素材が、母趾に与える刺激量として少なすぎたのではないかと、ということが考えられる。

図3 微小球を間隔を変えて敷き詰めた床面に立った場合の重心動揺を測定した結果、小球間隔が小さいほど、足底からの情報吸収が効果的になることが判明5)

刺激のことについて考えると、次のようなことが言える。図3は、微小球を間隔を変えて、敷き詰めることによって、重心動揺を測定したものであるが、3種類の足底刺激板で重心動揺を測定した結果、間隔が狭い足底刺激板を用いるほど、開眼・閉眼での重心動揺の差が無くなったという研究報告がある。このことからも、より母趾に強い刺激を与えられるもの、例えば、健康サンダルについている足底を刺激するものなどを用いてタオルギャザーを行ったら、異なった結果が出たかもしれないと考えられる。

第二に、タオルギャザーは、坐位で行うものであり、FRTは立位で行うものである。それ故、足趾の動きがメインであるタオルギャザーと足関節と股関節の動きが測定の際に関与するFRTでの関節の動き、筋活動の相違が影響したのではないか、と考えられる。さらに、肢位で考えると、タオルギャザーは、足部・殿部で支持基底面が形成されており、安定した姿位であるのに対して、FRTは立位で、しかも重心を前方へ移動するという、より不安定な肢位を求められるものである。そう考えると、立位でタオルギャザーを行うことにより、FRTの肢位に、身体的・視覚的に慣れさせることによってもよりタオルギャザーがFRTの結果に反映されたかもしれない。

C:静的バランス(総軌跡長・重心動揺面積)との関連性

これも、母趾意識群と通常群では、母趾意識群の方が総軌跡長は短縮し、重心動揺面積は縮小するという仮説を立てたが、関連性は認められなかった。理由としては、1と同様の理由が考えられる。さらに、静的バランスでは、直立での実施のために、足趾にかかる負担が少ないことが影響したのではないかと考えられる。また、Tanakaらは高齢者では柔らかい床上の上に立った時には、母趾にかかる圧力が若年者よりも高いことを報告し、高齢者では不安定な姿勢においての足趾の働きが重要であることを述べている1)。今回の実験では対象者を健常・若年者にしたために、有意差が表出するほどの結果が出なかったと考えられる。また、視覚情報が遮断された場合は、足底部のメカノレセプターからの情報が身体動揺の調整に重要である5)、とされており、開眼・閉眼と区別をつけて測定を行ったが、これらの比較でも有意差は表出しなかった。その理由としても、Tanakaらの見解が原因として考えられる。

[ 今後の課題

今回の被験者数よりも、さらに多くの被験者に実施してもらえば、違う結果が表出したかもしれない。卒業論文作成にあたり、計画から結果の統計処理、考察、文書作成の一連の流れを経験できたことは、今後にとって、本当に良い経験となった。

Z まとめ

母趾意識のタオルギャザーは、通常のタオルギャザーと比較しても、動的バランスの能力向上(FRT)・静的バランスの能力向上(総軌跡長・重心動揺面積)に変化はない。

\ 謝辞

本論文を執筆するにあたり、協力していただいた皆様に深く感謝申し上げます。




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