機械仕掛けの紅玉<研究室> of 魚月空想工房

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- - - 機械仕掛けの紅玉(ルビィ) - - -

《研究室》

 無機質な研究室のデスクに珈琲の香りが一瞬鼻先に漂い、睦月は後ろを振り返った。
「よぉ。」
「なんだ、お前か。」
マグカップと共に時雨の顔が飛び出した。
学生時代からの友人である時雨は、暇さえあれば睦月の研究所に入り浸り、本を読んだり昼寝をしたりしている。甥である柊は時雨と少し似たところがあり、同族嫌悪で嫌い合ってるらしい。
「学園長のさ、知り合いって子が来るんだけど。柊から何か聞いてる?」
「いいや。寄宿舎に来るの?柊に会ったのは先週末かな。何か問題でもあるのか。」
「前にお前に見せてもらったろ。紅い睛の少年、」
「ああ。夢に出てきたあれね。イメージホログラムだけど、まだ時々見るよ。」
珈琲に口を付け椅子に座ったまま上目遣いで時雨を見ると、彼にしては珍しく神経質そうな表情で溜め息を付いた。近くにあったデスクチェアの背を抱えるように後ろ向きに座ると、足で床を蹴りながら近づいて来る。
「あの少年、来ちゃうんだよ。柊と小夏の部屋に。」
開いた窓から穏やかな風が吹きカーテンが揺れる。網膜に焼き付いた少年の姿を思い浮かべ、睦月は首を傾げた。
現実に夢が近づいたのか、夢が現実に近づいたのか。
「今日の夕方に来ちゃうのよ。どう思う?」
「どうって、まぁ、会ってみたいけど。やっぱり睛は紅いの?」
「それが、黒い。」
「じゃあ、別人だよ。顔が似てるってこと?」
「…顔は似てる。でも見たんだよ、俺。」
「何を?」
時雨はわざとらしく唾を飲み、立ち上がった。
「昨日、Y区の近くで。その後すぐに同じ顔で黒い睛の少年の写真を、転入書類として見せられた。」
「それが、紅い睛の少年?」
睦月はデスクパソコンをいじり、例のホログラムを発動させた。
あの夢は何かの暗示なのか、ただの偶然か。
兄に関係があるのか…。
「俺、何だか嫌な予感がしてさ、」
時雨は寒がるように両腕を抱え、震えてみせた。
「しかし、何でよりによって二人の部屋に入れるの?柊が黙ってないだろ、」
「学園長の直々の申し付けだからさ、無理やり頼んだよ。あいつ、逆に俺のこと脅そうとするし。お前の育て方間違ってない?」
「…俺、あいつの親じゃないから。まぁ、何かの縁だし、俺も立ち会うよ。」
窓を閉め、珈琲を飲み干す。仕事も区切りが付いたし、妙な出来事に首を突っ込むのは好きな方だ。
時雨の勘は意外と当たることも学生時代から知っている。
「そうしてくれるとありがたい。」
時雨は安堵し少し笑顔を見せた。

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