行 軍 一


白い小学校の運動場で
おれたちはひるやすみした
枝のないポプラの列の影がながい
ポプラの枝のきれたところに 肋木の奇妙なオブジェに
赤い帽子に黒い服の ガラスのような子供たちが
流れくずれて かちどきをあげて
おれたちの眼をいたくさせる


日の丸が上がっている
校舎からオルガンがシャボン玉みたいにはじけてくる
おれのよごれた手は ヂストマみたいに
飯盒の底をはいまわり 飯粒をあさっている


さあ この手でもって「ほまれ」をはさんで
うまそうにけぶりでもはいてやろうか


雲で星がみえなくなった
まっくらになった
みんなだまっていて タバコの火だけが呼吸している
まだまだ兵営はとおくにある


村をこえて
橋をこえて 線路をよこぎって
ひるま女学生が自転車にのっていた畑もよこぎって
ずんずんあるかねばならぬ
汗がさめてきた うごきたくない


星もない道ばたで おれは発熱しながら 昆虫のように脱皮してゆくようだ


「日本が見えない」藤原書店発行 小林察編より