竹内浩三

 竹内浩三の詩、「骨のうたう」は今なお多くの人々の心を打つ。
三重県、伊勢市で生まれた彼は、生まれながらの詩人、「天性の詩人」と称されるのがふさわしいと小林察氏が書いている。「骨のうたう」だけでなく、そのときどきの心の動きを技巧を凝らすことなく素直にうたった詩をいくつか残し、それらも、私たちの共感を誘う。また、実の姉松島こうや同人誌の仲間中井利亮や野村一雄への書簡、「筑波日記」の文面も散文の中に詩人の魂が息づいていて、そのまま詩に変わっていくようである。

 また、反戦詩、反戦詩人というとらえ方は狭いとらえ方に陥る。彼のいろいろな作品を知れば、彼もまた戦時下で心ならずも一兵士として従軍することに疑問や疑惑は表明していないことがわかる。人間としての自由を奪われる苦しさ、死への恐怖、集団の規律に縛られることへの反発などは濃く文面に現れているし、戦争に対する悲しみや命を奪われることの嘆きはひしひしと歌われてはいるが、戦争に対する怒りというものではないように思う。その中で、自分を見失うまいとして、流れに流されまいとして、自分の魂をつなぎとめようとしたものが「筑波日記」ではないか。

 多くの人に竹内浩三のすべてを知ってもらい、彼の人間そのものを味わい、心の糧にしてもらいたいと思う。彼の中学生時代の作品集からは、今の中学生が持つ感覚と共通するものがうかがえる。今より格段に厳しい教育界の中で批判精神を貫いたということは特筆に値する。しかも、暴力に訴えたり非行に走るのではなく、言論で仲間たちの心をいやした手法は今の子どもに伝えたいとも思う。

 「ひとを信じよう ひとを愛しよう」と歌った彼の魂はおのずから、自然と人間と平和を大切にし、戦争に憤りを覚える感性を育ててくれるように思う。
                             「五月会」代表 森 節子