手紙
                    1940年6月20日  東京・高円寺より姉あて

   映画について
 むつかしいもの。この上もなくむつかしいもの。映画。こんなにむつかしいとは知らなんだ。知らなんだ。

   金について
 あればあるほどいい。又、なければそれでもいい。

   女について
 女のために死ぬ人もいる。そして、僕などその人によくやったと言いたいらしい。

   酒について
 四次元の空間を創造することができるのみもの。

   戦争について
 僕だって、戦争へ行けば忠義をつくすだろう。僕の心臓は強くないし、神経も細い方だから。

   生活について
 正直のところ、こいつが一ばんこわい。でも、正体を見れば、それほどでもないような気もするが。

   星について
 ピカピカしてれや、それでいいのだから。うらやましい。


                                  金たのむ。

「戦死やあわれ」岩波書店 小林察編 より