【手紙】 
  1941・5・25  姉宛 板橋

 カヤよりも、ヨーカンよりも、タオルよりも、ズボンよりも、タバコが一番ありがたかった。タバコは、今はもう又町に沢山出て、なにも不自由はないのに、一番ありがたかった。
 涙が出そうであったが、出さなかったが、一番ありがたかった。
 サクラやヒカリでは、これほどありがたくない。こうしたわけは、かなり複雑でボクにもよくわからない。そして、又わかろうとすべきことではない。わかってしまえば、たわいもないことにちがいない。
 省三さんを、今送ってきたところです。


「日本が見えない」藤原書店発行 小林察編より