【手紙】
 1942・4・24  姉宛  板橋
 あねさんよ。
 手紙みた。あめりかの飛行機がせめてきて。バクダンをおとして行った。国民学校の子供を打ち殺した。ハラがたった。飛んでいるのも見えた。石ぶつけてやろうかと思った。子供を殺したのはけしからん。ぼくの知っている中学生が、自分の友だちのカタに焼夷弾が当って即死したのを見たそうだ。
 五月十二日は、ぼくの誕生日です。なにか下さい。れこおどがよろしい。「チャイコフスキイの円舞曲」を一枚買って下さい。公声堂でたのめば、とっといてくれる。そのかわり、信代の水着を買うたるわさ。「間諜いまだ死せず」は、しなりおの方がはるかに面白かった。


「日本が見えない」藤原書店発行 小林察編より