【手紙】

  日付不明
    宛先不明  伊勢

 むしょうに淋しうございます。
 
 窓の外はたえずいなびかりでございます。
 
 二階でひとりで、トリオなどを聞いているのでございます。
 
 きょう、ケガをしました。公声堂のドブ板が今日はとくべつにはづしてあるのをしらず。ぼくのサンダルは、ドブ板まで落下して、ぼくのむこうづね(原文傍点)は血まみれになりました。

 いたむ脚をひきずって二見へ絵をかきにゆきました。

 むしょうに淋しゅうございます。淋しいなどとは弱虫の云うことかもしれませんが、これはどうしようもないのでございます。