ぼくが 帰るとまもなく
まだ八月に入ったばかりなのに
海はその表情を変えはじめた
白い歯をむき出して
大波小波を ぼくにぶっつける


ぼくは 帰るとすぐに
誰もなぐさめてくれないので
海になぐさめてもらいにやってきた
海はじつにやさしくぼくを抱いてくれた
海へは毎日来ようと思った


秋は 海へまっ先にやってくる
もう秋風なのだ
乾いた砂をふきあげる風だ
ぼくは眼をほそめて海を見ておった
表情を変えた海をばうらめしがっておった

「愚の旗」 成星出版 より