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   柔らかなぬくもり

                                                                       橙 オレンジ


 ほんの少し震えながら、そっと触れる唇のぬくもり。重なり合う二人の唇。背中に回した手に、自然と力が入った。しっとりとして、甘いにおい。みずみずしい感触。温かい吐息。何もかもが僕の求めるまさにそのものだった。
 ああ、これが君なんだね。僕がずっと想いを寄せ続けた君なんだね。
 瞑った目のうらには君の笑顔が色あせることなく浮かんでいる。君だけを僕は離したくない。他に何もいらない。
 君は僕が愛するのと同じくらい、僕を想ってくれているのかい?
 ああ、そうだね、疑り深い僕の性分さ。許しておくれ。
 背中に回した手から伝わってくるぬくもりこそが、君の僕への思いなんだ、と僕は思い直す。
 ああ、いっそう時よこのまま止まっておくれ。僕と君が永遠に結ばれるように。
 僕らはいつも互いを想い続けた。僕は毎朝一番に君の家に通ったし、君は門の脇の大きなケヤキの木の下で僕を待っていてくれた。学生時代には二人で図書館に通いつめ、哲学なんかを熱く語り合ったね。生きること、死ぬこと、その意味。僕は死ぬために生きる、と言ったんだ。生きることに目的なんかない、死ぬことこそがそのゴールだと。でも君は優しく諭すように言ったね。それでは寂しすぎる、生きることの意味を探し続けることが、生きる目的なんだと。君は僕の価値観を大きく変えた、ただ一人の人だよ。
 そんなことを語り合いながら、僕らは二人の関係を深めていった。君には言ったことがなかったけれど、いつしか、こう思うようになったんだ。僕は君を想うからこそ生きることができるんだって。そして僕も君にとって何より大切な人になりたいって。
 そして僕らは、きっと世界中で一番愛し合う二人になれたと思う。
でも結ばれずにここまできてしまったんだ。君のお父さんは僕が嫌いなようだし、僕の両親は結婚するならすべての援助を打ち切ると……つまりは勘当状態だ。友達の借金を背負い、自分の生活すらままならない僕だと言うのに。
 まだ幼いころには、お互いが好きならそれで結ばれると思っていたものさ。こんなにも世の中にはさまざまなことがあるなんて知りもしなかった。何もかもが自分の思い通りになると信じた幼い僕。愛だけがすべてと思った学生時代。
 たくさんの人と出会っては別れ、そして、ようやく君にめぐり会ったこと、本当に幸せに思うよ。でもきっとこれは必然。君と僕は出逢うべくして出逢ったんだ。それは、君と僕が互いに想い焦がれるもの同士だったということさ。
 会ったその瞬間から僕は直感したんだ。この出逢いこそが僕の人生の中でもっとも大切な出逢いなんだって。僕には君しかいないんだって。
 だからこの手を、僕は決してほどいたりしないよ。いつまでも君のぬくもりを感じていたいから。誰よりも君だけを想っているから。そして、僕はこの瞬間こそが何よりも幸せって知っているから。
 ――ポツリ、ポツリと空から降ったしずくがやがて二人の唇だけでなく、全身をしっとりと潤した。僕らの前途を暗く覆うように、雲は重く垂れ下がっている。
 でも、次第に激しくなる雨は、まるで二人だけで歩いていこうとする僕らの決心のように、潔く、心地よかった。僕は次第に冷たくなっていく君をその姿勢のままに大事に抱きしめたんだ。
 遠くなっていく意識の中で君だけを想い続けたんだ。
 いつか世界が変わって、僕らが結ばれる日を願いながら。
 雨はしっとりと降り続く。次第に体の熱が奪われていく。けれど、僕らのこの想いだけは、何があろうとも決して冷めることはないんだ。
 明日の朝になれば太陽が温かく僕らを照らすことだろう。二人の愛に温かく微笑むことだろう。
                                                                             (完)






テーマオリジナル小説
2003.11.13