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オリジナル小説ワールドおれんじ物語小説すて犬ライと はるの風

   すて犬ライと はるの風

                                                          だいだい オレンジ


ごしゅ人さまのイエは いつも ぽかぽかしていた。
 ライ、おいで。オサンポだよ。
 ぼくは オサンポということばが とてもしあわせに おもえた。
 けれど、ソトにでて ごしゅ人さまの なげたボールを おいかけて。
 きがついたら ひとりぼっちだった。ごしゅ人さまが 見つからない。ぼくは とっても こわくなって あちこち さがしまわった。
 いつのまにか ふり出した シャワーを あびて 体は おもかった。
 ぶるぶる、ふるえると しずくが とびちった。
 ――どうして このシャワーは 止まらないんだろう。
 4本の足が ちぎれそうだった。いたいよぉ、ごしゅ人さまぁ、おなかすいたよぉ、えさのじかんは? まだ? 
 とくいのお手を するように ぼくは まえ足を うごかした。うけとめてくれる あたたかい手は ない。
 ゴーゴーと かぜが うなっていた。そばには 水が ながれている。ぶるぶる、をふるわせた。
 生まれてすぐに、ぼくは びょういんに つれていかれた。ミルクをのもうとしなかったから。
 この子、はなが わるいんですねぇ。
 ぼくには おいしいミルクの においが わからない。
 えさだよ、っていう ごしゅ人さまの こえだけが ぼくに ごはんを おしえてくれる。くぅーん、あまえた声を 出してみた。
 ごしゅ人さまぁ。
 けれど、だれも きてくれない。
 水にそって ぼくは あるきつづけた。体じゅう、どろだらけ。足もとが ぬるぬるして、きもちわるい。
 ヤネが あった! ぼくは もう一回 体を ぶるぶるっとして、かけ出した。
 体じゅうの 力がぬけて、ぼくは なにがなんだか わからなくなった。体が ぐるんとまわって、ハリセンボンを のみこんだように うちがわから 体ぜんぶが しびれて いたくなった。
 ぼくは 水の中に いた。あたまが まえになり、うしろになり、体が しずんで、たくさん 水を のんだ。
 もうダメだ。ごしゅ人さま、たすけて。
 けれど、まっくらやみに ほうりこまれる ちょくぜんに、ぼくは 大きな手に つつまれていた。ごしゅ人さま? ぼくは ほんのちょっと あんしんして、水をすって おもくなった目を そっととじた。
 目をひらいたとき、ぼくは きたないコヤのなかに いた。だれかの手に つつまれて。
 さむくて 体は ぶるぶる ふるえた。小さいコヤの中は つめたいすきま風が ふいている。足は がくがくして、あたまは じんじんした。
 そのまま、ぼくは 大きな手に もち上げられた。口のまわりに もじゃもじゃがついて、まっくろなかお。そのかおは もじゃもじゃごと ニッ とわらった。
 ――たいへん、ぼく、たべられちゃうよ。
 でも、もじゃもじゃは ぼくを あぐらをかいた足の上に のせた。ぼくの頭を そっとなでる あたたかい手。くぅーん。しぜんに あまえた声が 出た。
「あ、ああ、うう」
 もじゃもじゃは ぼくを かかえたまま、コヤを 出た。
 ごみおきば、だった。もじゃもじゃは ネコみたいに ごみの中を さぐった。あきかんから 手のひらに オレンジ色の水を おとし、ぼくに さし出した。
 くびをかしげると、もじゃもじゃに あたまを おさえられた。かおを 水につけられたので、ぼくはしかたなく、それをなめた。ごしゅ人さまが いつも出してくれるミルクとは ぜんぜんちがうみたい。口のまわりが べとべとした。もじゃもじゃは もうかたほうの手で ぼくの口を ふいた。
 つぎに 出てきたのは、パンのかけら だった。パンなら ごしゅ人さまに もらったことがある! ぼくは あんしんして ゆっくり 一日ぶりの ごはんをたべはじめた。
 そのときだった。とつぜん、ぼくは シッポを もち上げられた。
「ああ、うう、うう……」
 もじゃもじゃの声を ぼくは さかさになって きいた。
 もち上げたのは、もじゃもじゃじゃなかった。もじゃもじゃは こんならんぼうなもちかたを しなかった。
 つぎのしゅんかん、ぼくは じめんに たたきつけられた。
 キャンッ!
 するどい なきごえを あげて ふりむくと ごしゅ人さまにそっくりな せいふくすがたの 男の子たちだった。1、2、3人。
 ごしゅ人さまぁ! ぼくは さけんだ。いろいろが まじって ごちゃごちゃになったきもちで。
 けれど、ごしゅ人さまじゃないのは、わかっていた。ごしゅ人さまは こんないじわる、しない。
 男の子たちに かかえあげられ、何かを 体に まきつけられた。そして、体じゅうが あつく はじけた。バチバチバチッと はげしく 音がなって、体の あちこちが やけこげた。
 もじゃもじゃが ぼくの上に たおれてきた。もじゃもじゃの下で ぼくは おもいなぁ、とおもっていた。
 ぼくは まっくらな中に いた。ドス、ドスッと にぶい音がして そのたびに もじゃもじゃが 「ああ」とか「うう」とか いった。
 けれど、しばらくすると、その声は きこえなくなった。おもかったもじゃもじゃが ますます おもくなって ぼくの上に のしかかった。もじゃもじゃ? くぅーん、とぼくは もじゃもじゃの下から 声を出したけれど、もじゃもじゃは 「ああ」とも「うう」とも いわなかった。
 ぼくは がくがくいう足を 何とか うごかし、もじゃもじゃの下から はい出した。
 もじゃもじゃのかおを ぺろりとなめると、しょっぱい味がした。
 もじゃもじゃは 目を ほそめた。ぼくのあたまを そっとひきよせ、そのまま うごかなくなった。
 ぼくは もういちど、まっくらな中に いた。
 もじゃもじゃぁ、もじゃもじゃぁ。
「ライ、ライ、どこにいるの?」
 ごしゅ人さまの 声だ。
 ぼくは それでも もじゃもじゃの うでの中に、まっくらの中に いた。うごかなくなった もじゃもじゃを くぅん、くぅーんと なめながら。
 ごしゅ人さまの声が とおくなっていく。
 さっきまでとちがう あたたかい風が ぼくと もじゃもじゃの 上を なでていった。ぼくには わかった。はるのにおい。
 ぼくは あたたかい ゆめの中に そぉっと 入っていった。 
                                                          
(おわり)







2004.4.1