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   ひとりぼっちのよるのとり

                                    だいだい オレンジ


 ぼくは、この よるのせかいに すんでいる とりです。なまえが ないのは、きっと だれも よんでくれる ひとが いないからでしょう。そうです。だれも いないのです。だれも。
 ぼくが ねどこから でてくると、ほしたちが とおくのほうで しずかに ひかっています。ああ、なんて ざんこくなのでしょう。もし、このせかいが ほんものの まっくらやみでしたなら、ぼくは、まわりに だれも いないなんて しらずに すんだはずでしたのに。
 いつのころから、ぼくは ひとりなのでしょう。ぼくには、それも わかりません。うまれたころから ひとりぼっちだったのでしょうか。それとも、いつか ひとりでないときが あったのでしょうか。そして、それを ぼくが おぼえていないだけなのでしょうか。でも、いま、ぼくは ひとりです。しょうしんしょうめい、ひとりぼっちなのです。
 やまのほうへ とんでいっても、みえるのは くろぐろと うきあがる きのはっぱばっかり。うみのほうへ いってみても、きこえてくるのは ザーザザーと なみの うちよせるおとばっかり。ああ、ぼくは きが くるいそうです。
 むかしは、きのかわを たべていました。あじなんか わかりません。おなかも いっぱいには なりません。たべなければ しんでしまうから、たべていただけです。ひとりぼっちで しんでしまうのでは、あまりに ぼくが かわいそうではないですか。だから、ぼくは たべつづけなくては いけなかったのです。
 ほしの ひかりが、つめたく ぼくを てらしていました。ぼくは、はらがたって しかたがありません。せかいじゅうに ぼくひとりしか いないという ひげきを、こんなに はっきりと うつしださなくても いいではありませんか。
 そして、ぼくは にくたらしい ほしたちを たべてしまうように なったのです。
 さいしょに、いちばん おおきくて、いちばん あかるい、きんいろの ほしを たべました。あじなんか わかりません。おなかも いっぱいには なりません。ただ、とおくで ピカピカしている ほしたちが、ぼくは だいきらいでした。
 うすくらい そらを とびまわっては、あかるいほしから じゅんばんに、まいにち ひとつ ふたつと たべていきました。ぼくが ちかづいていきますと、ほしは ふるえるように チカチカと またたきます。ぼくは めを つぶって ゴクリと のみこみます。おなかが ボワッと あつくなりました。にくいほしめ、きえてしまえ。まっくらやみに なってしまえ。ぼくは ながい ながいあいだ、ずっと たべつづけました。
 あかるいほしは だいぶ たべてしまったはずですのに、ぼくが めを さますたび、のこったほしが いちだんと あかるく なってしまったように おもえます。いくら たべても、いつまで たべても、キリが ありません。ほしたちは キラリンキラリ、ひとりっきりの ぼくを うつしだします。
 ああ、だれでも いいのです。あばれんぼうの けものでも いてくれたら、どんなにか いいでしょう。ぼくでない だれかの すがたを ひとめでも みることが できたなら、ぼくは たべられて しんでしまっても かまわないのです。
 でも、だれかが いたら、なんて きぼうは、とっくのむかしに きえてしまいました。ぼくは このせかいの すみから すみまで、とんでまわったのですから。ええ、だれも いなかったのです。そうですとも。ぼくは どうしようもなく ひとりぼっちなのです。
 あのほしの ひかりが なかったなら、ぼくは ひとりぼっちだ、なんて しることも なかったでしょうに。
 やまの むこうの ピンクいろの ほし。あれが いちばん あかるいようです。あのほしを はやく たべてしまいましょう。やまの むこうまで とんでいくのは たいへんですけれど、このひろいせかいに ひとりぼっちの ぼくには、やるべきことも やりたいことも、どうせ ないのです。ピンクいろの ほしだけを みつめて、ぼくは とびつづけました。おおきな やまを ひとつ こえ、ふたつ こえ……。よっつめの やまを こえたとき、ピンクの ほしは チカチカと またたきました。いままでに たべた、すべての ほしが そうだったように、です。
 そんなことは かまうものですか。ほしなんて みんな なくなってしまえば いいのです。ほしさえ なければ、ひかりさえ なければ、ぼくは さみしい なんて おもうこともなく いきていけるのです。
 いつつめの やまの ちょうじょうまで ついたときです。ぼくは すこし とびつかれたので、きのえだに とまって ひとやすみすることにしました。はねを くちばしで なで、それから ひさしぶりに きのかわを たべました。
 みあげると、ピンクの ほしまで あとすこしでした。ほしは、まるで ウインクでも するように いちど おおきく またたき、それから しずかに ちかづいてきました。
 ほしが こっちに むかってくるなんて、みたことも きいたことも ありません。ぼくは、おどろいてしまい、まばたきを ふたつ しました。ブルブルンと あたまを ふってみます。おちついて もういちど みてみよう。……やっぱり ほしが うごいています。さっかくでは ありません。
「ねぇ、きみ」
 ぼくは ほしを みつめました。ちかよってくるうえに、はなしかけてくる ほしなんて、はじめてです。ぼくは、りょうほうの はねを ぐぅんと ひろげ、おおきく いきを すいこみ、そして はきだしました。あたまが こんらんしてしまったような ときには、しんこきゅうが いちばんなのです。
「きみは いったい、まいにち なにを みているんだい。みあげれば いつだって、ぼくらが こうして そらに のぼり、きみのことを みているじゃないか」
 ピンクの ほしが いうと、まわりの ほしたちも いっせいに またたきはじめました。ぼくは だまっていました。
「それじゃあ、ダメかい?」
 こえは、いっそう ちかく やさしく なりました。
 ダメ、というわけでは ありませんでした。ただ、いままで、そんなことを いちどだって かんがえたことが なかったのです。
「きみたちが いつも、みていてくれるのかい? これからも ずっと?」
 ぼくは たずねました。ピンクの ほしは もういちど ウインクを しました。ぼくは グルンと くびを まわして、そらを ながめました。いつもより たくさんの ほしが かがやいているようでした。
 おだやかなひでした。あたたかい かぜが はねのうえを そうっと なぞりました。
 ピンクの ほしは はねを のばせば とどきそうでした。けれど、ぼくは それを たべるのを やめてしまいました。もう たべなくても いいのです。

                                         (おわり)








オリジナル小説
2003.5.18