鎌田賛太郎の映画コーナー

第7回「永遠のガンマン大連合! これを聴かずに死ねるか!!」 2002/04/30開催


 19世紀、アメリカ西部のカウボーイたちは牛を追い、長い道のりを移動しながら生活した。夜になると牛を落ち着かせるかのように、あるいはキャンプファイアを囲み、長い夜の退屈しのぎに歌ったものだ。従って開拓時代の西部は実に歌に溢れた世界であり、西部劇というジャンルは歌とかけ離れては成り立ち得ないものだといえるだろう。今日は西部劇の美しい音楽を聴いていただきたい。
 さて、西部劇といえばジョン・フォードに尽きるだろう。今日は何本か紹介したいが、まず騎兵隊3部作といわれる中の一本「リオ・グランデの砦」から聴いてみたい。もちろん主演はジョン・ウエイン、別居中の妻をモーリン・オハラが演じている。横暴なアパッチ族との戦いの中で、ウエインの息子が部隊に入隊してくる。ウエインの見せる、父親と上官、両面の表情が何とも素晴らしい。歌のシーンが多く、しみじみとした気分が横溢するこの作品には、サンズ・オブ・パイオニアーズという男性ボーカルグループが連隊歌手として登場している(メンバーの一人がフォードの娘婿だ)。上官に歌を捧げるシーンを聴いてみよう。
1「リオ・グランデの砦」(50年)歌サンズ・オブ・パイオニアーズ 音楽ヴィクター・ヤング

 ジョン・フォードの作品にはよくダンスシーンが登場する。「幌馬車」は西部開拓の時代にモルモン教徒の幌馬車隊がユタに新天地を求めて移動する話で、ベン・ジョンソン、ハリー・ケリーjr、ワード・ボンドらフォード映画常連の俳優たちが主演している。幌馬車隊は旅の途中、大きな川を発見し(当然のことながら、西部においては水をいかに確保するかが、旅を成功させる重要な鍵となる)、それを祝って「チャッカワラ」という曲で歌とダンスに高じるシーンがある。フォード自身、「モルモン教徒はみな巧みな踊り手だ」と語っているが、この場面を紹介したい。
2「幌馬車」(50年)音楽リチャード・へイゲマン

 騎兵隊といえば、インディアンと戦って全滅したカスター将軍という有名な将軍がいる。フォードの「アパッチ砦」のモデルにもなっているが、カスターの半生を描いた「壮烈第7騎兵隊」という作品があった。監督はラオール・ウォルシュ、エロール・フリンがカスターを演じている。映画の後半で、カスターは寄せ集めの第7騎兵隊に失望し、それを見事に統制のとれた部隊に仕上げていくシーンがあるが、その経過を示すために、「ギャリーオーウェン」という歌が極めて効果的に使われている。この見事に映画的なシーンから観てみよう。
3「壮烈第七騎兵隊」(42年)音楽マックス・スタイナー

 西部劇の名手といえば、代表作に「ウィンチェスター銃73」「裸の拍車」「シマロン」「西部の人」などがあるアンソニー・マンを忘れてはならない。「ララミーから来た男」は殺された弟の敵を討つためにララミーからニューメキシコにやってきた男の話で、ジェームズ・スチュアートが主演している。映画ではコーラスで主題歌を歌っていたが、歌手アル・マルティーノが歌ったバージョンもなかなかいい。ご存じだろうか。マルティーノは「ゴッドファーザー」でシナトラがモデルの歌手を演じていた人だ。
4「ララミーから来た男」(55年)音楽ジョージ・ダニング 歌アル・マルティーノ

 エルビス・プレスリーも「燃える平原児」という西部劇に出演している。監督は名手ドン・シーゲル。プレスリー演じるペイサーは牧場主とインディアンの間に生まれた混血児で、白人とインディアンの戦いに巻き込まれ、どちらにつくべきか激しく揺れ動いていくことになる。原題の「FLAMING STAR」は、燃える星の意。インディアンの言い伝えで、人は死ぬときに激しく燃える星を見るらしい。「燃える星よ、どうか俺に輝かないでくれ」と歌うプレスリーの主題歌、それに続く歌のシーンをみよう。それにしても、プレスリーはシャツの襟を立て、カウボーイ姿も実に様になっていた。
5「燃える平原児」(60年)歌エルビス・プレスリー

 日本のガンマンも一人紹介しよう。小林旭だ。60年代の日活の渡り鳥シリーズは、ギターをしょった旭演じる滝伸次が日本の各地を訪れ、土地や店を奪おうとする悪漢を倒し、純情な娘の慕情を断ち切って去って行く、というもので、宍戸錠との荒唐無稽な掛け合いも呼び物のひとつだった。渡り鳥シリーズは全部で9作が作られ、5作目の「大草原の渡り鳥」で、ついに西部劇に到達する。舞台は北海道の釧路、摩周湖。旭が、母を捜す子供を連れ、馬に乗って登場する冒頭からわくわくしよう。
 ところで、最近大滝詠一監修で旭のCDが4枚発売された。その名も「アキラ1」「アキラ2」「アキラ3」「アキラ4」。どれも傑作だゾ。
6「大草原の渡り鳥」(60年)歌 小林旭

 マカロニウエスタンからも一曲紹介しよう。今回のタイトルにもひっかけさせてもらっているが、「続・荒野の用心棒」の監督セルジオ・コルブッチに「ガンマン大連合」という作品がある。主演はフランコ・ネロ。武器商人のネロが革命軍リーダーのフェルナンド・レイを政府軍から連れ出す。その監視役にトーマス・ミリアン(チェ・ゲバラがモデルといわれる)。政府軍に雇われた殺し屋をジャック・パランスが義手に鷹をとまらせながら怪演していた。音楽はマカロニの巨匠、エンニオ・モリコーネ。60年代にマカロニウエスタンで行ってきた音楽的実験はここに至って爆裂的サウンドと化し、コーラス、ギター、鐘の音などモリコーネ節が最高潮に上り詰める。
7「ガンマン大連合」(70年)音楽エンニオ・モリコーネ

 60年代に入り、西部劇を継承した映画作家、サム・ペキンパー。60年代はハリウッド自体が極端に力を失った時代であり、西部劇の製作本数も激減する。「遅れてきた」西部劇作家ペキンパーの作品も、もはや製作されなくなった西部劇の挽歌を奏でるかのようだった。69年の「ワイルドバンチ」はヘイズコード以後に製作され、その凄絶な暴力描写で話題となったが、1913年を舞台としたこの作品には車も登場し、近代が押し寄せてくる中で時代遅れとなった荒くれ男たちは、フロンティアスピリットなどという精神からは最も遠く、孤独に死に場所を探すほかなく、それは殺す側も殺される側も同じであって、まるで西部劇そのものの終焉を歌うかのような作品だったと思う。
 音楽をつけるのはジェリー・フィールディング。1922年生まれのこの人は赤狩りで公職を追放され、しばらくほされるが、60年代に復帰する。「ワイルドバンチ」で作曲された音楽は、絶え間ないドラミングに弦や金管楽器が絡み、殺伐とした血の匂いを見事に表現していた。今からお聴かせするタイトルバックの音楽は、あと数分で残劇の場と化す平和な町の風景に、極めて不穏な空気を張りつめる。
 なお、この後のぺキンパーの「ゲッタウエイ」でもフィールディングは音楽を担当したが、プロデュースも兼ねたマックイーンがボツにし、クインシー・ジョーンズに軟弱なメロディーを書かせてしまった。マックィーンは決して嫌いではないが、こうしたフィールディングの玄人の仕事はわからないのだろう。
8「ワイルドバンチ」(69年)音楽ジェリー・フィールディング

 ペキンパーも亡くなった。しかし、アメリカにはクリント・イーストウッドがいるのである。マカロニ・ウエスタンから出発し、現代最強の映画作家となったイーストウッドは「荒野のストレンジャー」「ペイルライダー」「許されざる者」などウエスタンの傑作を現代の我々に観せてくれる。つい最近は「スペースカウボーイ」という大傑作もあったではないか。76年に製作された「アウトロー」は南北戦争末期、たった一人で北軍に抵抗し、お尋ね者になったアウトローの話だ。音楽はこれもジェリー・フィールディングである。妙な作家性など出さずにジャンルに奉仕する姿勢が素晴らしい。残念ながらこの作品の4年後の80年に心臓発作で急死してしまった。
9「アウトロー」(76年)音楽ジェリー・フィールディング

 さて、最後は映画史が持ち得た最大のスター、ジョン・ウエインで締めくくりたい。サントラではないが、ジョン・ウエインの主題曲ばかりを集めたイタリア盤があり、西部劇の曲はすべて混成コーラスで歌われ、フォードやホークスの作品の一場面を思い出すような、いつかどこかで聴いたメロディーで溢れている。ここから、「ザ・ガール・アイ・レフト・ビハインド・ミー」、「アイル・テイク・ユー・ホーム・アゲイン、キャサリーン」(冒頭の「リオ・グランデの砦」でも連隊歌手が歌っている)、「イエロー・ローズ・オブ・テキサス」のメドレー3曲を紹介する。それぞれの曲のイメージ映像として、ハワード・ホークスの「赤い河」、ジョン・フォードの「黄色いリボン」「騎兵隊」を上映する。1万頭の牛をミズーリへ運ぶキャトルドライブの雄大さ(「赤い河」)、詩情あふれ、切なく、しみじみと泣けるようなフォードの映画の神髄(「黄色いリボン」)、そしてフォードのユーモア(「騎兵隊」)を感じていただけたらと思う。 
10「赤い河」「黄色いリボン」「騎兵隊」音楽ジョン・ウエイン企画アルバムよりメドレー

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