東北の山 14
南蔵王 2
不亡岳(1,705m)山頂より屏風岳(1,817m)を望む。(1987.09.23.水彩)
南屏風岳より不亡岳を。(1987.09.23.水彩)
樅の木は残った

 南蔵王を歩いていると、山本周五郎の「樅の木は残った」の主人公で、この山の麓の船岡館の主 原田甲斐を思い出す。
歌舞伎でご存知「伽羅先代萩」(伊達家お家騒動)の極悪人「原田甲斐」を、逆賊ではなく忠臣としたこの小説は、仙台、江戸とともにこの山麓も舞台だ。 「樅の木は残った」は私が少年の頃、日本経済新聞に連載され、緊迫したドラマと挿絵の見事さに惹かれた。鋭利な刃物で切るような鮮やかな筆捌きは、日本画家のものだったと思うが、お名前は思い出せない。安田靫彦 の描く人物に似ていたから門下の人だったろうか。少年の日の印象を壊すまいとするかのように、映画も、テレビドラマもほとんど見ていなし単行本も読んでいない。
 原田甲斐が蔵王山麓の山を大鹿を追って歩きまわるシーンが走馬灯のように紅葉の谷間に映る。