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11 債務の一本化
13 保証人の過払金

12 死者・夫の過払金(弁護士ドットコムの連載記事 12)
 今回は,過払い金回収の応用として,債権者と債務者以外の人物が登場する場合について,ご説明しましょう。具体的には,死者の過払い金と,夫の過払い金という話になります。

1 被相続人(死者)の過払い金

 まず,被相続人(死者)が多くの債務を残して死亡して,相続人がその債務を知ってビックリするということが,時々あります。このような場合,相続人は,被相続人の債務を承継することを避けるために,相続放棄をすることが多いです。
 しかし,債務の内容を良く確認せずに相続放棄することは危険です。なぜなら,その債務について,過払い金が生じていることがあるからです。
 被相続人が,例えば,10年以上もサラ金に対して高い利息を支払っていたような場合には,現時点で50万円や100万円といった(見かけ上の)債務が残っている場合でも,利息制限法に引き直してみると債務は存在せず,過払い金が生じているということがあるのです。
 ですから,被相続人がサラ金から多額の借り入れをしていたという場合でも,すぐに相続放棄をせずに,弁護士に相談する必要があります。ここで,相続放棄をするか否かは,相続開始から原則として3ヶ月以内に決めなければいけませんので,その判断は急ぐ必要があります。そうでないと,過払い金がなかった場合に,被相続人の債務を相続人が承継してしまう可能性があります。
 なお,債務があるのかないのか(過払い金が生じているのか否か)不明であるという場合には,3ヶ月という期間(熟慮期間といいます)の伸長を裁判所に申請することも可能です。
 ところで,相続人が過払い金の請求をする場合には,誰が過払い金を承継したのかを確定する必要があります。これは,相続人間で遺産分割協議をすることによって確定させることができます。例えば,父親が過払い金を残して死亡した場合に,過払い金については母親に相続させるという遺産分割協議をすることによって,母親からサラ金に対して,過払い金返還請求が可能になるのです。

2 配偶者(夫)の過払い金

 次に,配偶者(多くの場合,夫)が多額の債務を負っていて,相手方が愛想を尽かして離婚したくなるという場合があります。この場合,多額の債務を負っていることも離婚原因の一つになりうると思われます。
 しかし,配偶者が長年,サラ金に対して高い利息を支払っていたような場合には,利息制限法に引き直してみると,過払い金が生じているという場合がありますので要注意です。このような場合,例えば,妻が,夫の取引履歴を開示することをサラ金に請求しても認められないことが多いです。かといって,夫は,取引履歴を取り寄せることに(というか,妻のあらゆる要求に)反対するということがあります。
 そんなときには,妻から,夫のサラ金に対する過払い金返還請求権を,代位行使して,提訴するという方法があります。ただし,夫に過払い金が間違いなく生じている(例えば,完済している等)という場合でないといけませんし,妻から夫に対する債権(財産分与請求権ないし慰謝料請求権等)が存在するという場合でないといけません。
 ただ,上記のように,夫の過払い金を回収する方法がないわけではありませんので,離婚と共に,夫に過払い金が生じているのではないかと考えている方は,弁護士にご相談下さい。

3 まとめ

 以上のように,被相続人に過払い金が発生しているという場合には,相続人が請求することが可能です。また,配偶者に過払い金が発生しているという場合に,相手方が請求することも可能な場合があります。ですから,自分以外の人間に過払い金が生じている可能性があると思われる場合でも,是非とも,弁護士にご相談下さい。