19 過払いに付随するもの(弁護士ドットコムの連載記事 19)

 今回は,過払い金の返還請求に付随するものについて,ご説明しましょう。過払い金返還請求には,例えば,弁護士費用や慰謝料といったものも請求できる場合があるのです。
 この点について,最高裁判所平成17年7月19日判決と,札幌高等裁判所平成19年4月26日判決は,極めて重要な意味を持つので,それも合わせてご説明しましょう。

1 過払金返還請求における弁護士費用
  過払金返還請求を弁護士に依頼する場合には,弁護士費用がかかります。しかし,債務者の方が弁護士に依頼しなければ,サラ金業者は,あーだこーだ言って,過払い金を自発的に返還しようとしないのが実情です。
  そこで,前述の札幌高裁判決は,過払金返還請求に付随する損害として,弁護士費用も民法704条後段の損害にあたるとしたのです。判決では,弁護士費用として,30万円の損害が発生したと,認定されました。

2 架空請求による慰謝料
  過払いが発生する場合には,本当であれば,元本がすでに存在しないにもかかわらず,あたかも存在するかのように装い,サラ金業者が請求を続けて支払わせているという状況になっています。この場合のサラ金業者の行為は,本来請求できないものを請求しているわけで,架空請求に他なりません。
  従って,前述の札幌高裁判決は,架空請求として不法行為が成立し,債務者の方々には慰謝料が発生しているとしました。判決では,慰謝料として,15万円の損害が発生したと,認定されました。

3 架空請求の慰謝料請求にかかる弁護士費用
  前項の架空請求による慰謝料請求をする場合にも弁護士費用が発生します。この弁護士費用も架空請求という不法行為と相当因果関係の範囲内にある損害です。
  ですから,前述の札幌高裁は,架空請求の慰謝料請求にかかる弁護士費用も損害として認めました。判決では,5万円の損害が発生したと,認定されました。

4 履歴不開示による慰謝料
  過払い金の返還請求をしようと考えても,サラ金業者が取引履歴を素直に出してこないことがあります。その場合には,債務者は債務整理を進められず非常に迷惑を被ります。
  従って,前述の最高裁判所平成17年7月19日判決は,貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,特段の事情のない限り,信義則上これを開示すべき義務を負うとして,履歴を開示しない場合には,原則として慰謝料が発生するとしました。

5 履歴不開示の慰謝料請求にかかる弁護士費用
  前項の履歴不開示による慰謝料請求をする場合にも弁護士費用が発生します。この弁護士費用も履歴不開示という不法行為と相当因果関係の範囲内にある損害です。従って,この弁護士費用も,損害として認められることになります。

6 まとめ
  このように,過払い金返還請求には様々なものが付随して認められるのです。もちろん,過払い金及び利息の返還が認められることは言うまでもありません。
  整理すると下記のとおりです。

 A 過払い金元本
 B Aに対する利息
 C 過払金返還請求弁護士費用  
 D 架空請求慰謝料       
 E Dについての弁護士費用   
 F 取引履歴不開示慰謝料    
 G Fについての弁護士費用   

  このような裁判所の傾向は,債務者を救わなければならない,暴利をむさぼってきたサラ金業者はけしからんという価値判断(スタンス)の現れなのです。 
  ですから,過払い金の可能性がある方は,お早めに弁護士にご相談下さい。

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