21 過払いの訴訟について1(弁護士ドットコムの連載記事 21)

 今回と次回は,過払い金の返還請求訴訟について,ご説明します。裁判所を舞台に,弁護士がサラ金業者から過払い金をどのように回収するのかというイメージを持って頂ければと思います。

1 過払い金の返還請求訴訟
 弁護士に依頼してサラ金業者に対して過払い金返還請求の訴訟を提起する場合には,地方裁判所に提訴することが極めて重要です。
 なぜなら,以前にもお話ししましたが,簡易裁判所には,本人,弁護士,司法書士,サラ金の代表者,支配人,社員等が出頭できます。しかし,地方裁判所には,本人,弁護士,サラ金の代表者,支配人しか出頭できません。すなわち,司法書士とサラ金の社員は,簡易裁判所には出頭できても,地方裁判所には出頭できないのです。
 また,サラ金業者の支配人も,地方裁判所においては,その実質を厳格に審査されます。つまり,この支配人は本物の支払人でないといけないのです。ところが,実際には偽物の支配人が出頭する場合もありますので,その場合には弁護士の方で,相手方の「支配人性」というものを徹底的に争うのです。
 従って,地方裁判所に訴えを提起された場合,被告(サラ金業者)は社長が自ら出頭するか(そんなことはほとんど出来ませんが),費用をかけて弁護士に依頼するしかないのです。ですから,地方裁判所に訴訟が係属すると,サラ金業者は急に弱気になり,弁護士の提案する和解案を呑んでくることが多いのです。
 以前にもお話ししましたが,地方裁判所は弁護士の土俵なのです。相撲(裁判)は,自分の土俵でやらなければなりません。
 従って,弁護士に依頼して過払い金の返還請求訴訟を提起する場合には,必ず地方裁判所に提訴するというのがセオリーになります。

2 地方裁判所への提訴
 地方裁判所に提訴するか,簡易裁判所に提訴するかという問題は,訴えの金額(「訴額」といいます。)が,140万円を超えるか否かで判断されます。地方裁判所に提訴するためには,訴えの金額が140万円を超えている必要があります。
 ですから,金額が小さいものである場合には,複数の請求を合算したり,弁護士費用や慰謝料等を付加して140万円を超える形にして,地方裁場所に提訴したりするのです。
 では,複数の訴訟をまとめるためにはどのようにしたらいいでしょうか。ここで,共同訴訟というものについて,お話しましょう。

3 共同訴訟
 裁判所で訴訟を提起する場合,例えば,Aさんから,X社とY社を同時に提訴するということが認められます。
このとき,AさんのX社に対する請求が80万円,AさんのY社に対する請求が70万円の場合,合計すれば,150万円になりますので,めでたく地方裁判所に提訴することができます。
 また,AさんとBさんが一緒に,X社に提訴するということも認められます。このとき合も,AさんのX社に対する請求が80万円,BさんのX社に対する請求が70万円の場合,合計すれば,150万円になりますので,地方裁判所に提訴することができます。
 さらに,AさんからX社とY社に,BさんからX社にという3つの訴訟を一緒に提訴するということも認められます。この場合のAさんからX社に対する請求を,経験のある弁護士は,「扇の要」などと呼んだりします。
 もっというと,AさんのX社に対する請求とBさんのY社に対する請求とを一緒に提訴することも,認められる場合があります。この辺りは,裁判所の担当部によって対応は異なりますが。
 ここでご説明しましたように,複数の請求をまとめて請求することを,共同訴訟と言います。

4 共同訴訟のメリット
 このように,いくつかの請求を一緒に提訴すること(共同訴訟)によって,
 ・ 小さな訴訟の金額の合計が,140万円を超えるようにする(地方裁判所に提訴するため)。
 ・ 弁護士が裁判所に行く回数を減らす。
 ・ 訴訟にかかる費用(印紙代・郵券代・会社謄本代)を節約する。
といったメリットがあります。

5 東京地方裁判所への提訴
 多くの法律事務所は,東京周辺にありますので,東京地方裁判所への提訴が簡明です。事務所から近いということもありますが,1日に複数の訴訟が入ることもあり,移動のことを考えると(東京地裁と東京高裁は同じ建物で,東京簡裁と東京家裁も同じ建物で,2つの建物は近接しています),東京地方裁判所への提訴が極めて便宜なのです。
 そして,各サラ金業者の本社は概ね東京にありますので,債務者がどこに住んでいても,また,どこで借り入れをしたとしても,被告の住所地である東京地方裁判所に提訴することが原則となります。
 これによって,いくつかの訴訟をまとめて,東京地方裁判所に提訴し,費用や手間を省くということが可能になります。その反面,サラ金業者は,地方裁判所に提訴されて,代表者を出頭させるか,弁護士に依頼せざるを得ないという負担を負うことになります。

6 まとめ
 このように(東京)地方裁判所に提訴するという方法も,弁護士に依頼した場合のお話であって,司法書士に依頼した場合にはこのようにはいきません。ですから,過払いがあるかなと思われる方は,とにかく,まずは,弁護士に相談して欲しいものです。

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