22 過払いの訴訟について 2 (弁護士ドットコムの連載記事22)

 今回は,前回に引き続いて,過払い金の返還請求訴訟について,ご説明します。過払い金回収の現場というものを具体的にイメージして頂けたらと思います。

1 第1回期日
 過払い金返還請求の訴訟が提起されると,裁判所と原告(債務者)代理人の都合で第1回期日が指定され(被告つまりサラ金業者の都合は関係ありません。),各被告に訴訟が送達されます。
 第1回期日は,被告の準備の都合もあるので,提訴から約1ヶ月後くらいに指定されることが多いです。
 被告(サラ金業者)は訴状を受け取ると,また訴えられたのかと気付きますが,第1回期日に出頭できるとは限りません(被告の都合は事前に聞きませんから。)。そこで,第1回期日には,被告が出頭しないということが認められています。
 多くの場合,第1回期日には,原告代理人のみが出頭し,あらかじめ提出していた訴状が陳述され,被告が提出していた答弁書も陳述されます。この第1回期日までに,原告(債務者)と被告(サラ金業者)との間で和解が成立する場合もあります。
 ただ,和解が成立したからといって,原告代理人の弁護士はすぐに訴えを取り下げるわけではありません。和解によって約束された過払い金の入金を確認してから,訴えを取り下げます。被告(サラ金業者)が必ず約束を守るとは限りません。サラ金業者が約束通り支払ってこない場合に,再度,提訴するというのではあまりにも効率が悪いからです。

2 第2回期日
 第1回期日では,次回期日(第2回期日)が指定されます。通常は,第1回期日の約1ヶ月後くらいになることが多いです。
 この第2回期日には,サラ金業者の代表者かサラ金の委任を受けた弁護士が出頭しなければなりません。社長がいちいち裁判所に出頭してはいられませんし,かといって,弁護士に依頼すれば費用がかかります。
 そこで,被告(サラ金業者)も折れてきて,めでたく和解が成立するということも多いです。
 この場合も,和解したらすぐに訴えを取り下げるのではなく,入金を確認してから取り下げるのです。
 ところで,サラ金業者の依頼を受ける弁護士は,汚い仕事をしているという意識があるのでしょうか,妙に高圧的だったり,異常に時間や書面にルーズだったりします。彼等は,非常に大きなストレスを抱えているように見受けられます。サラ金の依頼を受ける弁護士にだけはなりたくないものだと強く思います。

3 名目的支配人について
 サラ金業者の中には,社長が出頭するわけでもなく,弁護士に委任するわけでもなく,また,きちんと支払いに応じるわけでもないところがあり,そういう業者は,名目的支配人(つまり偽物の支配人)を裁判期日に出頭させて,争う姿勢を見せます。しかし,実際には,何ら争点があるわけでもなく,サラ金業者が時間稼ぎをしているに過ぎないことが多いのです。
 このような行為は,弁護士法にも違反する許し難い行為ですので,偽支配人(名目的支配人)の支配人性については徹底的に争わなければなりません。

4 和解交渉について
 サラ金業者が弁護士に委任した場合や社長自ら出頭してきた場合には,和解交渉が長引くこともあります。そして,和解がまとまらなければ,判決をもらうこともあります。
 その場合には,サラ金業者の銀行口座等を差し押さえる,サラ金業者の店舗に行って動産を差し押さえるなどして,強制執行をすることになります。

5 過払い金の回収
 このような手続きを経て,債務者の方は,ようやく過払い金を満額回収できるのです。訴訟提起から第1回期日まで約1ヶ月程度はかかりますし,第1回期日から第2回期日までも約1ヶ月程度はかかりますし,和解してから入金があるまでも約1ヶ月以上はかかります。サラ金業者も会社なので,すぐに入金という訳にはいかないのです。
 受任通知の発送から取引履歴が開示されるまでも2週間以上かかることが多いですから,過払い金の回収にはどうしても時間がかかってしまいます。弁護士として,時間を短縮できる部分は,履歴開示から提訴までではないかと考えています。ですから,サラ金から履歴が開示されてから,提訴までどれだけスムーズにやるかが,弁護士の腕の見せ所だと思います。極論すると,取引履歴が開示された日に提訴ということも不可能ではないですし,実際にそのようにしている事務所もあるのです。

6 訴訟について
 なお,訴訟にしなくても過払い金を回収することは可能です。しかし,その場合には,金額が減額されていることが多いです。
 訴訟を提起することは,手間がかかったり,煩わしかったりします。しかし,訴訟を提起しない場合より,訴訟を提起する場合の方が,回収する金額は確実に大きくなります。やはり,何事も汗をかかなければ得られるものは少ないのです。
 ですから,過払い金の回収は原則,訴訟と思って頂いた方がいいです。また,訴訟提起する弁護士の方が,訴訟提起しない弁護士より信頼できるということは間違いないでしょう(すぐに訴訟提起する弁護士は,サラ金には嫌われていますが,サラ金に嫌われている弁護士の方が信頼できるのです)。

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