振り向けばYOKOHAMA

プルルルルル〜 プッシュ〜

その日、僕は新幹線に乗っていた。

目指すは、過去を振り返っても一度も踏み入れた事のない横浜

僕とヨメの共通の友人が念願の新築を建て、
出来れば引っ越しを手伝ってほしいとの事であった。

きっと多くの方が下記のような疑問を描くのであろう。

1
引越し手伝いでわざわざ大阪から横浜?お前は正気か?

2
そんなに人生がヒマか?

3
本職は便利屋?

4
ヨメから逃げる口実か?

勿論、上記の4番は該当するが、
ちゃんとした理由があって、
友人によると今回の引っ越しは
ワンコに慣れている人間が適任だという事であった。

ワンコの数では我が家も多い方だが、
その友人宅もかなりの頭数であった。

さて、久しぶりの新幹線
うるさいヨメからの解放

そうなると、
ほんのりイイ香りの巨乳なOLさんが『ここ空いてますか?』と
僕の隣に座り
『ど、どちらまですか?』

あっ、東京です。出張で・・・。

『あ、偶然ですね。僕は横浜・・・じゃなくて僕も東京なんです。』と
ベタな一時の恋愛を頭の中で楽しんでいた。

しばらくその恋愛モードで新幹線が走ると、岐阜羽島に到着した。

僕の両親の田舎である。
じいちゃん、ばあちゃん、お元気ですか?
そんな気持ちを胸に、ただ素通りした。

さすがに、岐阜辺りになると景色は、のどかな田んぼばかりである。
僕は、その大阪にはない光景に見とれていると
突然田んぼばかりの真ん中に・・・

男のエステ ダンディハウス!!
と書かれた看板が・・・。

一体どこにあるねんっ!!

のどかな光景にのどかなツッコミを入れ
新幹線は名古屋駅に到着した。

さすがにこの駅は乗客が多かった。
扉が閉まる音と同時に、
僕が座る自由席の人口密度は高くなっていったが、
僕の期待度も高くなっていた。

イイ香りの巨乳なOL・・・いや贅沢は言わない。
せめて巨乳だけでも・・・。

頭の中では大観衆の巨乳コールが巻き起こっていた。


巨乳ッ!巨乳ッ!巨乳ッ!

だが、新幹線が走りはじめた頃
僕の隣に座っていたのは・・・ほんのり加齢臭漂う
ちょい太めの50代サラリーマンであった。

しかも、このサラリーマン
新幹線が走り出すと共に、駅弁を食べはじめ、

おそらく幕の内弁当であろうそれは
加齢臭と混ざり、

僕の周りで幕の内デラックスとなってプンプンと臭いはじめた。

このヤロウ!随分じゃねーか!

な、何か反撃するものはないのか?

僕はズボンのポケットに入っていた
ハイチュウ・ストロベリーで対抗したが

サラリーマンの更に追加されたビールに、モノの見事に惨敗した。

さようなら、イイ香りの巨乳なOLさん。
どうか帰りの新幹線で会えますように・・・・。

楽しみがなくなった僕は、少々ふてくされた顔で
外の景色ばかりを眺めていた。

そこに車内販売のお姉さんの声が・・・・。

ビールにおつまみ、おやつ、
ジュースはいかがですか?

こ、これだ!!

せめて、このお姉さんに笑顔でももらえれば・・・・。

段々と近付くお姉さんの声。
ここはダンディにサンドウィッチでも頼むか!!

『すみません、ビール下さい!』

先に声を掛けたのは、隣のオヤジであった。

テメー、まだイクのか?

ありがとうございます。

オヤジにビール手渡すお姉さん。
どうか、おもいっきり振ってから
渡してください・・・.

しかし良く見れば、美人であった。

よし、このお姉さんからサンドウィッチを買い
ついでに笑顔で癒してもらおう。

あ、あのーサンドウィッチください。

はい、ありがとうございます。

僕は手をのばしサンドウィッチを受け取ろうとしたが、
手渡してくれたのは

隣のオヤジであった。

どうやら窓側に座っていた僕までが遠かったらしく
隣のオヤジがサポートしてくれたのだ。

あ、どうも・・・。

テメー中身の具にしてやろうか?

不満だらけの中、
せめて外の景色を見ながら食べようと、
窓に目をやると、外はすっかり暗く
窓に映っていたのは車内で
大してウマクもないサンドウィッチを頬張る自分。

ピクニックじゃん!!

そうして、新幹線は僕を横浜まで連れて行ってくれた。

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